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世界を生き抜く悪党の美学  作者: 横切カラス
5章 悪党は仇なす者に容赦はしない
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第1話

王国東都にある東部ギルド協会支部は、毎日夕方になると帰って来た者で宴会状態になる。


気候が比較的に陽気な為、陽気な気質な人が多いから必然的にそうなる。


そんな雰囲気も三人組の男達が入って来たと同時にしーんと静まり返る。


彼らは冒険者ギルド『ケルベロス』

たった3人の新参のギルド。


三人共それぞれ犬、龍、蛇を模様したの鉄仮面で顔を隠している。


彼らは異例のスピードでAクラスまで昇格した実力者。


三人の結束は強いが、他の者と一切親交を持たない。


それどころか、酔った勢いで絡んできた他ギルドメンバーを全員半殺しにした事がある。


それからと言うもの、彼らが来ると今のようにみんな息を潜めるようになった。


「今回の依頼も完了だ。

報酬を早くよこせ」


「はい。

今確認しますね」


受付嬢はプロとして笑顔で対応する。

それでも機嫌を損ねないように急いで報酬を用意して渡す。


それを確認した彼らは何も言わずに立ち去った。


彼らが立ち去った後、すぐに陽気な宴会が再開された。


そんな中一人の男が三人を追いかけて行った。


「そこのお三方」


上品な格好をした男が三人を呼び止める。


「なんだ?」


不機嫌そうな声で三人は振り返る。

その圧力は並大抵の者なら腰を抜かしてしまうほどだ。


だが男は気圧される事無く続ける。


「あなた達に耳寄りの情報が……」


男は手紙を差し出す。

それをひったくるように犬の鉄仮面を被ったケンが奪った。


その手紙を見た三人は男を睨みつける。


「貴様!どういうつもりだ!」


「どういうつもりもなにも、あなた達がそれを見てどうするかは好きにしたらいいです

よ」


その言葉を鵜呑みにするほど三人は気楽な生活では無い。


「何も目的が無いとは言わせないぞ」


「目的ならあります。

けれどもそれはお館様の目的。

私はあなた達に届けただけにすぎません」


「お前、ジャライカ公爵の所の使用人だろ?」


「はい、そうです」


蛇の鉄仮面をしたスネークの問いに男はあっさりと答えた。


「私の名はタイニー。

あなたの言う通りジャライカ公爵の使用人をしています」


「つまりこれもジャライカ公爵の差金か?」


「それはなんとも」


竜の鉄仮面をしたドラゴの問いには茶を濁して答えた。


ケンはもう一度手紙の内容を確認する。

そこには三人が忌むべき相手の名前が書いてある。


「どうせ権力争いの駒として使おうって魂胆だろ?

いいぜ、今回は乗せられておいてやる」


ケンは手紙を握り潰して吐き捨てるように言い放った。


「そう言って下さると助かります」


「当然西部に行くまでの足は用意してあるんだろうな?」


ケンは男にふっかける。

金は充分にあったが、乗せらるだけでは面白く無い。


しかし、男は簡単に答える。


「もちろんご用意しております。

それどころお三方にはプレゼントを用意しております」


「プレゼント?」


「はい。

明日馬車で迎えに参ります。

途中王都で一度一泊して頂き、そこでプレゼントをお渡しいたします」


「そのプレゼントとはなんだ?」


「それはお楽しみです。

では、また明日」


タイニーはそう言い残すと東都の街に消えて行った。



翌朝三人を迎えに来た馬車は、平民では到底乗れないであろう最高級の馬車だった。


それを見たケルベロスの三人は物怖じする事無く普通に乗り込む。


「その鉄仮面はずっと外さないのですね」


中で待っていたタイニーの軽口に三人は反応しない。


そんな事は気にせずにタイニーは馬車を発車された。


「少し長い旅になります。

外したらどうですか?」


やはり反応は無い。

それでもタイニーは続ける。


「どうせあなた達の素性はわかっています。

わざわざこの馬車を用意したのもその為です」


「黙っていろ。

殺すぞ」


ケンが低い声で脅しをかける。

鉄仮面の奥から鋭い眼光がタイニーを指している。


「私が死んだら案内に困りますよ」


タイニーはまだ懲りずに話を続ける。


「なら犯すぞ」


「ほう。

そっちの趣味をお持ちでしたか?」


「男装しているだけでお前女だろ?

その上等な装いを破り捨てて確かめてやろうか?」


タイニーはやっと黙った。

っと思ったのは束の間。

また喋り始める。


「お気付きでしたか。

騙すつもりは無かったのですが。

申し訳ありません。

なにぶん男性と思わせた方が都合の良い事が多いので。

ただ、特にサラシとか巻いてるわけでは無いので、見た目通り貧相な体ですがよろしいのですか?」


「犯るだけ犯ったら帰るだけだ」


「それは困りますね。

では黙っていましょう」


無言のまま馬車は走り続ける。


半日ほど時間が経過してから馬車は王都へとついた。


タイニーは先に馬車を降りて三人を外へと促す。


「お疲れ様でした。

プレゼントは少し休憩してからにしますか?」


「早く案内しろ」


「ではこちらへ」


タイニーは三人の先頭をきって歩いていく。

少しずつ人気の少ない方へと進んでいく。

そして全く人気の無い所にある倉庫の中へと入った。


そこには一つの箱が地面に置かれていた。


「これがプレゼントです」


ケルベロスの三人は警戒しながら箱を見下ろす。

外からでは何が入っているか全くわからない。


「おい、お前が開けろ」


「そんなに警戒しなくても……」


「いいから開けろ」


「わかりました」


タイニーが箱を開ける。

そこには短剣が入っていた。


そこら辺にありそうな短剣。

特に高価そうな装いがされているわけでもない。


「こんな物がプレゼントか?」


「見た目で侮ってはいけません。

これは魔道具です」


その言葉に流石のケルベロスも心惹かれた。

魔道具なんてそんな簡単に手に入る代物ではない。

それが目の前にあるのだ。


「本当だろうな」


「ええ、もちろん。

これは決して相手を殺す事の出来ない短剣なのです」


「どういう事だ?」


「この短剣でいくら相手を切っても死ぬ事はありません。

この短剣で切られた者は――」


三人は珍しくタイニーの説明に真剣に耳を傾ける。


短剣の説明を一通り聞いてから、信じられないとタイニーを見た。


「にわかに信じられないな」


「お試しになりますか?」


「そうだな。

お前で試してみるか」


「ご冗談を」


「本気だ。

どうせ死なないならいいだろ?」


ケンは短剣を手に取ってタイニーに近いていく。

タイニーは特に動じずに3枚のコインを取り出した。


「それは勘弁して頂きたい。

きちんとお試し出来る段取りも出来ています。

幸いここは金さえあれば何でも手に入る王都。

一晩のお相手も手に入ります。

せっかくですのでお好みのおもちゃを手に入れてはいかがですか?

このコインを見せれば、この町でのお支払いは後日お館様がいたします」


そう言って三人にそれぞれコインを渡す。

そのコインに刻まれている家紋を見て三人は固まった。


そしてケンがタイニーを見る。


「そういう事か。

なるほどな。

やっとわかった」


ケルベロスの三人はそのコインを見て、今回の黒幕の正体と目的がわかった。


三人はそれぞれコインをしまう。


「お前の主人の太っ腹さに感謝するんだな。

このコインが無ければ今晩のおもちゃはお前だった」


「はい。

いつもお館様には感謝しています」


「お前の主人に伝えておけ。

俺たち三人の遊びは派手だとな」


「伝えておきます」


「それでもお前の主人にしたらはした金だろうがな」


ケルベロスの三人は倉庫を出て王都の街に消えていった。


三人が完全に見えなくなってからタイニーも倉庫を後にする。


そのまま王都の街を歩いていく。


日が長くなっているから分かり難いが、昼の街から夜の街に移り変わろうとしている。


その街を目的地へと真っ直ぐに進んむ。


やがて目的の喫茶店へと入っていった。


「いらっしゃいませ」


「夜にいい夢が見れるコーヒーがあると聞いて」

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