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世界を生き抜く悪党の美学  作者: 横切カラス
4章 悪党は自分の都合しか考えない
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第14話

レイン達を乗せた馬車はのどかな街道をゆっくりと進んでいた。


「いい所ですね」


レインは馬車から外を見ながら呟いた。


「そうですね」


ガイアがその呟きに相槌をうつ。


「私達もアークム領は初めて来ましたが、自然豊かで落ち着いた所ですね」


同席しているエリアも窓の外を見ながら言う。


「エリアさん達も初めてだったのですか?」

「はい。

私達は依頼があれば王国中何処へでも飛び回っていますが、逆に依頼が無いと行く事が無いので。

ここは国境領土だからもっとピリピリしてるかと思ってました」


「そうですね。

私の領とは違います。

目指すのはこういう領土なのかもしれません」


レインの心には不安があった。


生きる道を選んだ事で増えていく不安。

でも生きて闘う事を放棄してたのだと実感させていた。


突然セイカが馬車を止める。


「どうしたの?」


「人が倒れている」


エリアの問いにケーシーが応える。

ガイアは窓から様子を伺った。


ケーシーの言う通り街道の真ん中に女性がうつ伏せに倒れている。


「見て来ます」


エリアは槍を持って馬車を降りた。


「大丈夫ですか?」


エリアは女性に近づいて声をかける。

生きているようだが反応はない。


警戒しながらも女性を抱き起こすと女性は猿轡をハメらせていた。


そこに突然男が襲いかかる。


エリアはその剣を槍で受け止めて弾き返した。


しかし、いつの間にか馬車は多くのならず者で囲まれている。


「ケーシー、セイカ、迎え討つよ!」


セイカも槍を取り打って出る。

ケーシーも馬車の屋根の登り弓を放った。


だが数が圧倒的に多い。

女性を庇いながら後退するエリアは特に苦戦を強いられていた。


「ガイア、あの人を中に!」


「分かりました」


ガイアが剣を持ち馬車を飛び出し、一瞬でエリアの元に辿り着く。


「エリア殿。

彼女は私が」


「お願いします」


ガイアは女性に肩を貸して猿轡を外す。


「あの馬車まで逃げます。

歩けますか?」


「その必要は無い」


女性が隠し持っていたナイフをガイアの腹に突き刺した。


「!?」


ガイアは反射的に剣を抜く。

しかしその剣はエリアの槍によって弾かれた。


「何故!?」


「残念でした。

そう言う事よ」


驚き蹲るガイアにエリアが不適な笑いを浴びせる。


「ガイア!

これは一体どういう――」


「鈍いお嬢様だね」


「キャ!」


馬車の入り口から乗り出したレインをセイカが無理矢理引っ張り出す。

レインは街道横の草原の上に転がった。


「みんなあんたを殺しに来たお仲間って事」


屋根の上からケーシーがレインを見下しながら高笑いをする。


「そんな……」


「レインお嬢様お逃げください!」


「おっと」


痛みを堪えて走り出そうとしたガイアの足をケーシーが射抜く。

辛うじて倒れ無いように踏ん張るが、体が強張って動かなくなった。


「即効性の麻痺毒だよ。

倒れなかったのはお前が初めて。

でも動けないでしょ?」


ケーシーがケラケラと馬鹿にしたように笑う。


「ガイア!」


「お供の心配してる場合じゃないわよ」


エリアが不適な笑みを浮かべながらレインに近づいていく。


「いつから?」


「初めから」


レインの問いに間髪入れずにエリアが答える。


「だって私は暗殺ギルド『カメレオン』のギルドマスターだもの」


「そんな……ユニコーンハート所属だって」


「嘘じゃないわよ。

ユニコーンハートにも所属してるから。

ユニコーンハートとカメレオンは裏で繋がってるの。

それで護衛と暗殺の報酬の多い方の依頼を達成してるのよ。

ね?楽なお仕事でしょ?

まあ、今回のあなたの護衛任務は嘘だけどね。

丁度アークム領への依頼があって助かったわ」


エリアは堪えきれずに笑いだす。


「それにしても、あなたも不用心よね。

いくら腕が立つからって護衛が一人だなんて」


哀れそうに出血と麻痺毒の両方に苦しむガイアを見る。


レインは初めて自分の過ちに気づく。

暗殺されるからと護衛をガイア一人にした事によって、ガイアをも危険に晒す事になっていた事を。


「それなのにうちの子達ときたら何やってるのか?

まさか、こんなど田舎にそんな優秀な奴がいるとは思わなかったわ」


エリアはレインの胸ぐらを両手で掴んで顔を引き寄せる。


「カメレオンの隠れ家は何者かによって全滅させられるし。

そのせいでユニコーンハートのメンバーをこうやって駆り出さないといけないし。

本当に踏んだり蹴ったりね。

全部あなたのせいよ」


エリアはレインの上等な衣服を引きちぎる。


「キャッ!」


レインは慌てて両手で体を隠すが、エリアに腕をひっぱがえされる。


「この男達の報酬はあなたに払って貰うわ」


そのまま男達の方へ押し出す。


「エリアさん、いいんですか?

こんな上玉」


「いいわよ。

そのかわりこの娘で遊んだ奴は報酬半分よ」


「じゃあしっかり楽しまないといけねぇな」


男達が下衆な笑みを浮かべながらレインに群がる。

レインは急いで立ち上がって逃げだす。


「はい残念。

逃げられませーん」


お嬢様が冒険者から逃げられるわけなく、すぐに捕まってしまう。


「放しなさい!」


「どうせ死ぬんだ。

最後に俺達の相手してくれてもいいじゃねぇか」


「いや!放して!」


レインの叫びは笑い声にかき消される。


「温室育ちのお嬢様に地べたは失礼よ。

馬車の中に無駄に上等なソファーがあるから、そこで遊んであげな」


「イヤ!お願い!やめて!放してください!お願いだから!放してー!!」


「お嬢様お一人様ごあんなーい」


セイカが開けた馬車の中にレインは男達に担がれて消えた。

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