第5話
盗賊に襲われるというハプニングがありつつも、つつがなく僕達は帰省することが出来た。
「お父さん、お母さん、帰ったよー!」
ヒナタが馬車から飛び降りて、出迎えに出て来ていた両親に手を振る。
両親もニコニコで手を振り返していた。
僕達が馬車を降りると続いてエリアが降りて来て両親に挨拶をした。
「お初にお目にかかります。
ギルド『ユニコーンハート』所属、S級冒険者のエリアです。
馬車の運転席にいるのが同じくS級冒険者のケーシーとセイカです。
ギルド協会からの命で来客の護衛と帰りの学園までの護衛も受け持つよう言われています。
ですので領内での滞在を許可願いたい」
「ああ、聞いてるよ。
何も無い田舎領地だけどゆっくりしていくといいよ」
エリアの申し出に父は快諾した。
それを聞いたヒナタが目を輝かせる。
「じゃあエリアさん達うちに泊まって貰おうよ。
私もっと話聞きたい」
「私も賛成。
剣術の稽古にも付き合ってもらいたい」
シンシアもヒナタの意見に賛同して、二人して両親の顔を見る。
僕は反対だけど、こうなったら両親の答えは決まっている。
「もちろんいいぞ。
部屋はいくらでも余っているからな。
お三方が良ければいくらでも泊まっていくといい!」
「私達は宿代が浮くので助かりますが、本当によろしくのでしょうか?」
「お父さんがいいって言ったから大丈夫。
早速案内するね」
ヒナタはエリア達を屋敷へと引っ張っていく。
シンシアもそれに続いて屋敷へと入って行った。
ちょっとめんどうな事になったけど、まあいっか。
あとはこっちで何とかしよう。
「元気にやってるか?」
父がヒナタ達を見送ってから僕に話かける。
「見た通りだよ。
二人共相変わらずだけど毎日元気だよ」
「違うわよヒカゲ。
あなたの事よ」
母が僕の方を見て言った。
「え?僕?」
「そうよ。
ヒナタやシンシアからあなたの事も聞いてはいるけど、あなたから一切連絡寄越さないから心配してたのよ」
「いや、全然大丈夫。
元気にやってるよ」
「そうか、ならいい。
でも偶には連絡寄越してもいいんだぞ」
「まあ、気が向いたらね」
「ああ、それでいい」
父は僕の適当な返事でも満足したかのように大きく頷いた。
「そういや、ここ最近新しい使用人って雇った?」
「いや?雇って無いぞ」
「ふーん」
父は不思議そうな顔をしたけど、別に追求はして来ない。
「なあ、ヒカゲ。
隣の国に行った事あるか?」
「無いよ」
「だよな」
今度は逆に父が質問してきた。
それにしても変な事聞くな〜
子供だけで国境越えるなんて出来る訳無いのに。
……そういや何回か勝手に行ったわ。
どうせ言えないからいっか。
◇
2日後の朝。
今日は例の親善大使が当家に到着する予定。
名前はえーと……なんだっけ?
まあいいや。
とにかく暗殺の依頼にはアークム領主の責任が問われる形での暗殺が条件に入っているらしい。
つまり、領主である父に会うまでは安全が保証されてると言っても過言では無い。
とか思ってはいけない。
何故ならどこにでもフライングするやつがいるものだ。
とくに手当たり次第に集めると、そう言うタチの悪い輩も増える。
タチの悪い代表の僕が言うのだから間違いない。
そんな訳で僕は朝から関所付近のお掃除を楽しんでいる。
個人の奴から団体の奴らまで色とりどり。
楽しい暗殺者狩りは結構楽しめた。
15人はいたかな?
跡形も無く消しさったから良く覚えてない。
暗殺者って面白いよね。
普通の剣士と違って色んな暗器を使う。
小型のナイフやダガーってのはメジャー中のメジャー。
ハサミとか万年筆ってのもマイナーだけど一定数はいるよね。
でも、爪切りってのは初めて見たよ。
確かにポケットに入ってても怪しまれないけどね。
これでどうやって暗殺するんだろう?
殺す前に聞いとけば良かったな。
とにかく、これで国境付近は綺麗になった。
流石に関所の向こう側にはいなかったね。
僕はナイトメアスタイルを解いて関所付近の街道に降り立つ。
そのまま関所の方へと歩いていく。
「これはヒカゲ様。
どうされましたか?」
関所の甲冑姿の兵士の一人が僕に話かける。
「散歩だよ」
「ヒカゲ様。
領主様からこの山に入ってはいけないと言われているではありませんか?」
もう一人の兵士が僕をやんわり注意する。
「まあいいじゃない。
それより、親善大使はまだ来ないのかな?」
「そろそろではないでしょうか?」
「そうか。
で、君はどこの所属なんだ?」
僕は一人の兵士に向かって質問する。
騎士は良くわかっていないような顔をしている。
「ヒカゲ様、それはどういう――」
「どこのギルドかって聞いてるの。
それともフリーの暗殺者?
そんな事無いでしょ。
だってお仲間がウヨウヨいたんだから」
「仰っている意味が――」
僕の後ろにいたもう一人の兵士が静かに剣を振りかぶる。
その剣が振り下ろされる前に僕は振り向き様に甲冑事真っ二つに切り捨てた。
「ヒカゲ様!一体なにを!」
「え?だってこいつ暗殺者だよ」
「なるほど。
そいつに尻尾を出させる為に私に疑いをかけたんですね」
「それで、君は何処の所属なんだ?」
僕は全く同じ質問をする。
もう一人の兵士はまだ惚けた顔をしている。
「君の勤務時間は朝から夕方までだよね?」
「はい」
「だから朝交代で出て来た兵士を殺して入れ変わったんだ。
甲冑で顔もわからないからね。
入れ替わるにはもってこいだ」
「ヒカゲ様。
悪ふざけは勘弁して下さい」
「まだ惚けるんだ。
でも無駄だよ。
だっているはずないんだよ。
昨晩遅くに父の名前でここの担当の交代時間を変更したんだ。
君達の勤務時間は終わってるんたよ。
それで次の担当はまだ夢の中。
僕が今関所に勤務してる全部の兵士を眠らせてるからね」
兵士の顔色がみるみる悪くなっていく。
「みんな寝てるなんて事があるなんて……」
「出来るんだよ。
僕にならね」
「そんなバカな」
「で、何処の所属か教えてくれる気になった?」
兵士は剣に手をかけた。
その剣が抜かれる前に僕の刀が兵士を切り捨てる。
「まあ、何処の所属なんてどうでもいいんだけどね。
さあ、そろそろかな?」
関所から二人の兵士が慌てて出て来た。
この時間担当の兵士だ。
「あ!ヒカゲ様!
どうしてここに!?」
「遅刻はダメだよ」
「申し訳ありません」
「あとこれ」
僕は暗殺者の死体を指差す。
兵士はそれを見て驚きの声を上げた。
「これは!」
「暗殺者。
兵士になりすましていたんだ」
「すぐに報告いたします!」
「そうだね。
あと、親善大使が来る前にここを綺麗にしてね。
それから先方に悟られ無いように」
「はい!直ちに!」
「それからもう一つ」
「なんでしょう?」
「僕がここに来た事内緒にしててね。
これは君達の手柄にしていいから」
「それは……」
「いいからいいから。
その代わり君達の遅刻を内緒にしてあげるから。
お願いだよ。
ここに来た事バレたら僕が両親に怒られるから」
「わ、分かりました」
「じゃあよろしくね」
後は兵士に任せて僕は山を下る。
とりあえず第一ステージはクリアって所だな。
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