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世界を生き抜く悪党の美学  作者: 横切カラス
3章 悪党は美術館がお好き
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第24話

ヒナタは混乱に乗じて王都の外の草原まで辿り着いて止まった。


「ヒナタ!」


後から追いかけて来たシンシアがヒナタの肩を叩く。


ヒナタはハッとしたように振り向いた。


「どうしたのシンシア?」


「どうしたの?じゃないわよ全く」


また元の様子に戻ったヒナタを見て、シンシアは呆れてため息を吐く。


「あっ!アイビーも来てくれたの?」


「成り行き上仕方なくね。

それで、ここに何があるの?」


「わかんない」


「わかんないって……」


アイビーも呆れてため息を吐いた。


「でもそろそろだと思うよ。

ほら」


ヒナタは剣を抜いて夜空を指す。

その先からガーゴイルが飛んで来て、草原に降り立った。


シンシアとアイビーも慌てて剣を抜く。


ヒナタは一目散に突撃した。

魔力の籠った一撃がガーゴイルを襲う。


だが、魔力は効かず剣は硬い物に当たった音だけして止まった。


「あれ?全然効いてない?」


「ヒナタ危ない!」


ガーゴイルの前で首を傾げているヒナタをシンシアが体当たりしてガーゴイルから距離を離す。


ヒナタがいた所をガーゴイルの腕が空を切った。


「何ぼーっとしてるのよ!」


「ごめんごめん。

なんか全然効かないからビックリしちゃって」


「あれは魔坑石よ。

お父様に聞いた事があるわ。

魔力を掻き消してしまうのよ」


「って事はもしかしてマズイ状況?」


「もしかしなくてもマズイわよ。

逃げるわよ」


「う〜ん……」


アイビーの言葉にもヒナタは首を縦に振らずに悩んでいる。

少し悩んでから立ち上がってパジャマについた土を軽く払ってから剣を構えた。


「アイビーとシンシアは逃げてもいいよ」


「何言ってるの!

ヒナタも逃げるのよ!」


「でもあいつやっつけないといけないし……」


「魔力も剣も効かないのよ!

どうやってやっつけるつもり!?」


「くるよ!」


シンシアの声で三人ともガーゴイルの攻撃を避ける。

ガーゴイルの一撃が地面を抉る。


「見たでしょ?

あんな化け物私達だけで相手するべきじゃないわ」


「そうなんだけど……」


「ヒナタ、何か手はあるの?」


「あるよ」


シンシアの問いにヒナタは即答する。


「私は何をすればいい?」


「ちょっと時間が欲しいかな?」


「わかった」


シンシアはヒナタとガーゴイルの間に立ち臨戦体制に入る。


「ちょっとシンシアまで何を言ってるの!?」


「だってどうせ何言っても無駄よ。

ヒナタは逃げない。

となると自分だけ逃げるか、一緒に戦うかの二択。

アイビーはどっちでもいいよ」


「ここまで来て一人で逃げられるわけ無いでしょ!

いいわよ、私も覚悟決めた!」


アイビーもシンシアの横に立って臨戦体制に入った。


「えへへ。

二人共大好き!」


「そんな事より、本当に大丈夫なんでしょうね?」


「うん。

多分、おそらく、もしかしたら?」


「だんだん自信無くなってるじゃない!」


「てへっ。

もしダメだったら三人で逃げようね」


「そう言う事は覚悟決める前に言いなさいよ!」


「いくよ」


「もうどうにでもなれ!」


シンシアとアイビーはガーゴイルに突撃する。


ヒナタは剣を構えて目を瞑り、深呼吸して集中する。


「大丈夫。

あれから毎日練習して来た。

お兄ちゃんみたいにすればいいだけ」


幼い頃。

まだ剣術を学び始めた頃。


ヒナタはその才能の頭角を表していた。

逆にヒカゲは全くと言っていいほどセンスが無かった。


だけどヒナタはヒカゲが自分より劣っているとはどうしても思えなかった。


そんな日々の中でヒナタは時々ヒカゲが山の方に一人で行く事に気がついた。


何処に行くのか知りたくてこっそり後をつけるも、毎回見失ってしまい諦めて帰る日々が続いた。


ただ一回だけヒカゲをつける事に成功した事があった。


ヒナタが遠目で観察していると、ヒカゲは剣で木を一刀両断した。


その断面は遠くで見ていたヒナタでも一目でわかる程ツルツルの断面だった。


その時の記憶の中のヒカゲを思い出す。


「確か魔力を剣の刃に沿って集中させる感じだったはず。

だけど闇雲に集めれば良いわけでもない。

魔力を鋭く研いで、刃を何重にもコーティングするように重ねていく」


言葉で紡いだ通りヒナタの剣の刃に魔力の層が出来上がっていく。


「まだダメ、まだ足りない」


ガーゴイルを引き付けている二人の荒い息遣いが聞こえる。


その息遣いが段々と荒さを増していくのに焦りを感じながらも、丁寧にそして確実に魔力を研ぎ澄ましていく。


剣の刃の部分に一筋の光が宿る。


「いける!」


ヒナタが目を開き、真っ直ぐにガーゴイルを見据えた。


「アイビー、離れるよ」


それに気がついたシンシアが素早く離脱する。


「え?ちょっと!?

待ってって!」


後に続いてアイビーも一気に離れた。


ヒナタが置いてけぼりにされたガーゴイルとの距離を一気に詰める。

ガーゴイルが反応する間もなくヒナタは剣を振り下ろした。


少しの静寂が訪れたあと、ガーゴイルが薪割りみたいに真っ二つとなって地面に転がった。


「あはは。

もう一歩も動けなーい」


ヒナタは魔力を使い切ってその場に座り込んで夜空を見上げだ。


「お疲れ様ヒナタ」


「シンシア〜

おんぶして〜」


「私も疲れたから嫌」


「酷〜い」


二人をよそにアイビーが真っ二つになったガーゴイルの断面を見る。


多少荒い断面だが、綺麗に切れている。


「魔坑石を切るなんて……」


アイビーは魔坑石が魔力に耐性があるだけで無く、鉱石としても強固だと父親から聞いていた。


それを真っ二つにしたヒナタに憧れとライバル心が芽生えた。


「アイビー、おんぶして〜」


「はあ〜、仕方ないわね」


「アイビーしなくていいよ」


おんぶしようとヒナタに近いたアイビーをシンシアが止める。


「なんで止めるの〜

おんぶしてよ〜」


駄々をこね始めるヒナタをシンシアは冷たい目で見下ろす。

そんな冷たい視線にも負けずにヒナタは駄々をこね続けた。


でもシンシアは知っている。

ヒナタは突然危ない所に首を突っ込んでいく。

それを彼女は自らの手で切り開いていく。


そして最後は必ず――


「あれ?ヒナタ?

こんな所で何してるの?」


彼が迎えに来る事を。

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