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もしかして悪役令嬢 ~たぶん悪役令嬢なので、それっぽいフラグを折っておきます~  作者: もののめ明
■第二部 マクニール魔法学院四年生

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治療は共同作業

 獣が絶命したので、私は魔法を解いてウルリッヒに駆け寄る。

 左腕がぐっさりと切れていた。出血が酷い。

 急いでハンカチを取り出して、傷口に当てる。

「アル、傷口を押さえて、腕を高く上げて」

「わかった」

 うーん、紐は持ってない……あ、もう一枚、ハンカチがあった!これを使おう。

 ハンカチを細長く折りたたみ、ウルリッヒのケガをした腕の付け根を強く縛る。

「……済まぬ」

「他は?他にケガをしたところはありますか?」

「腕……だけだ。防ぎ切れなかった……」

 悔しそうに唸り、ウルリッヒはそのままガクリと項垂れた。

 意識を失ったようだ。

 ど、どうしよう。もしかして、かなりヤバい状態?

 アルが険しい顔でウルリッヒを見つめたあと、私に視線を移した。

「アリー。僕は一応、王族だからほんの少しだけ光魔法が使える。でも、かすり傷を治す程度なんだ。アリーは……全属性が使えるよね?光魔法も使える?」

「あ……えと、どうなんだろ……試したことない……」

 そっか。全属性って、光と闇も入るんだ?

 そこまで考えたことなかった~。

「完全に治さなくていい、ただ出血だけは止めたい。手伝って欲しい」

「う、うん」

「僕の手に、君の手を合わせて。僕が呪文を唱えるから、それを真似して。あんまり力を出しすぎないようにね」

「わかった……」

 出来るかなぁ……。

 不安だけど、このままウルリッヒが死んじゃったら困る。

 大丈夫、出来る、出来る!

 大きく息を吐いて、傷口を押さえているアルの手に、自分の手を重ねる。

 アルがゆっくりと呪文を唱えてくれたので、それを同じように真似しながら、(ウルリッヒの傷が塞がりますように……)と真剣に祈った。

 ―――手のひらがほんわりと温かくなる。

 でも初めてだからか、上手く発動しないのも、わかった。

 ああ、やっぱりダメだ……。

 だけど。

 アルの手がふわっと光った。

「塞がった」

 低い声でアルが呟く。

「すごいな。僕だけでは、絶対に無理だった。アリーのおかげだね」

「え、ホント?!私、魔法が発動しなかった気がするんだけど??」

「アリーの力が僕の方に流れ込んでくる感覚があったよ」

 言いながら、アルがゆっくりと手をウルリッヒの腕から離す。

 ハンカチは血まみれだけど……それを取ってみれば、傷口は塞がっていた。

 ああ、良かったぁ。

「完全に治すと説明が大変だろうけど、これくらいなら……僕が必死で魔法を掛けたってことで誤魔化せるかな?」

「ふふ。うん、それでお願いします」

 でも、これでアルが光魔法を使える!と知られて、今後は頼られるようになったら困る可能性があるかも……。


 驚いたことにアルはウルリッヒを軽々と抱えあげ、出口に向かって歩き出した。

 すっごーい。アルってそんなに力持ちなの?!

 ウルリッヒはアルより少し背が低いけど、そんなにアルと体格は変わらないのに……。

 さほど行かない辺りで、リックに行き合った。

「?!……何があった、お嬢!」

「魔獣がいたの。でも、もう倒したから大丈夫」

「あー、やっぱりな!ったく、なんのために俺がお嬢に付いていると思ってんだよ……!」

「ごめん、リック」

 慌てて両手を合わせて謝る。

 わかってるのよ、リックの仕事のこと。

 でも魔獣だったら、魔力が多くて、使える魔法の多い私の方が良いと思ったの。人間相手だったら、リックに任せるけどさー……。

 溜め息をつきながら、リックはアルに向き合う。

「殿下。俺が運びます」

「重いけど、大丈夫?」

「殿下が鍛えてるのは知っていますけどね。俺もそれなりに鍛えているので楽勝ですよ。何かあったときに、お嬢を抱えて逃げるだけの体力腕力が必要ですから」

 リックが力こぶを作る。

 私は鼻の頭に皺を寄せた。

「ちょっと。私、ウルリッヒほど重くないんだけど!」

 リックがニヤッと笑った。

「お嬢がいつ太っても大丈夫なように、日頃から重め設定しているんだよ」

「ふとっ……」

 太らないもん!乙女に失礼ねっ!


 出口にたどり着く前に先生たちが来た。

 ウルリッヒを抱えたリック、血だらけの私とアル。先生たちの顔が真っ青になる。

「殿下!お怪我を?!」

「ウルリッヒさまは……?!」

「大丈夫です」

 落ち着いた口調でアルが答える。

「奥に魔獣がいました。ウルリッヒさまは、腕に怪我を負いましたが、ひとまず出血だけ止めていますので……きちんとした治療をお願いします」

「奥に魔獣?!」

 先生たちは顔を見合わせ、一人は奥へと走っていった。

 もう一人の先生は、私たちを促して外へ。

 穴を抜けた先には、不安そうなベルティルデたちが待っていた―――。


 ということで、私たちとグレタの班は、そのまま交流会途中リタイアとなった。

 ウルリッヒはほどなく目を覚まし、「かすり傷だ、大袈裟にするな」と言って続行しようとしたけどね。

 ちなみにアルの予想通り、あの通路の先にはこの森を動かすための魔法陣を描いた部屋があるとのこと。その部屋へ至る通路は全部で三つあり、そのうちの一つがきちんと閉じられていなかったみたい。

 先生たちが出入りに使った通路ではないらしいので、森を動かしたときに隙間が出来てしまったのだろう。

 確認が甘かったと、先生がものすごく反省していた。

 で、これもまたアルの言った通り……交流会前に先生たちが魔獣を山の方へ追いやったときに、一匹だけ、あのイノシシ魔獣が穴の中へ逃げ込んでしまったようだ。

 ほんと……運の悪いことって、不思議と重なるものよねぇ。

 というか穴を見つけても、ベルティルデとグレタが争わなかったら問題なかったのに。

 いや、ウルリッヒが奥へ行くと言わなければ、大丈夫だったのかな?

 なお、ウルリッヒは獣と遭遇したとき、すぐに魔法で防御の壁を作ったけれど、向こうの力の方が強くてケガをしたのだそうだ。アルはなんなく防御していたのをウルリッヒは見ていたので、すごく悔しがっていた。

 ……その前に、迂闊な行動を反省しなさいってね。

 まあでも、これで帝国からの留学生二人は、ちょっとおとなしくなるかも?

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― 新着の感想 ―
いつも楽しく読んでます! 流石に全てが誰かの陰謀で引かれたレールの上で歩いてたとかは無いよね!? 隙間作ったり、わざと一匹見逃したり、わからないような暗示がかけられてて争う(競う、張り合う)ように…
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