学生交流会の日
さあ、とうとう学生交流会の日~!
動き回ると暑いし邪魔になるので、メアリーに長い髪をポニーテールに結ってもらう。お団子に結い上げる子もいるけれど、それだとちょっと成人女性っぽいので、ポニーテール。
ちなみに去年は、三つ編みのお下げにしてみた。なんかね……私はあんまり似合わなかったねー。
そうそう、女子はこの日ばかりはパンツスタイルだ。
乗馬のときもパンツスタイルになるけれど、それ以外では着ることがないので、すごく嬉しい。やっぱ、こっちの方が動きやすいもんねぇ。
もうちょっと、普段でも着れるようになるといいんだけど。
寮の玄関でリックと合流する。
学院内では、基本的に護衛のリックと一緒に行動だ。
休みの日に学院の外へ出るときだけ、テッドを呼び出している。ずっとリックを拘束するのは申し訳ないので。
でも、この世界の護衛の子たちは、年に数日の休みしかない生活でも、普通と思っているみたい。ブラックだわぁ……。
「お。今日は髪を上げたのか」
「うん。カワイイ?」
リックが片眉を上げ、「……普通?」と真顔で言う。私は彼のお腹に肘を打ち込んだ。
「いてーな。正直な感想じゃん」
「そこは、ウソでもカワイイというのが正解なの!そんなだから、リックはモテないんだよ」
テッドなら、カワイイって言ってくれるのに。しかも、ちゃんと心から。
リックが鼻で笑う。
「俺の魅力は、そういうチャラいところじゃないから」
「ほほう」
言うねー。
まあでも、リックは常に成績は上位10位以内に入っていて優秀だ。真面目で努力家で、実際のところ、学院の女子からは熱い眼差しで見られることが多い。
私の護衛ということで、安易に声を掛けてくる子はいないけれど、ちょこちょこプレゼントはもらっているみたい。
そういえばリックって……どういう子が好みなんだろう。気になるなぁ。
交流会は、現地集合だ。
学院から離れているので、みんな、馬車で行く。平民や下位貴族用には、学院で大きな乗合馬車を何台も用意している。
しかし、私やアルのような高位貴族は別ルートだ。
別ルート……つまり、転移。
馬車だとかなり朝早くから出発しなくちゃいけないけれど、転移は一瞬で済む。おかげで他の人たちと違って朝の支度ものんびりだ。
今日はすっかり人気のない学院を、転移陣のある建物へ向かっていたら……アルと会った。
「おはよう、アリー」
「おはよう、アル!」
「可愛いね、その髪型」
「えっっっ、あ、ありがとう」
うっ、不意打ち!
急にその蕩けるような優しい笑顔を向けるのはヤメて~。
赤くなった頬を見られないよう、あわてて顔を横に向けたら……アルの護衛のウィル―――ウィリアムと目が合った。
「おはようございます、アリッサさま」
うわーん、ウィルがニヤけた顔をしている。そんなに私、赤くなってるかなぁ?!
「と、ところでアル!」
私は誤魔化すように大きな声を出した。
「今、忙しいの?ウルリッヒさまたちと、交流会の相談とか、全然できなかったけど」
「ああ……うん、ごめん。何度か、城へ行っていたから」
あれ?ウルリッヒたちと顔を合わせたくないからじゃなく、本当に忙しかったの?
「兄上が西のアシュベリー領へ行くと言い出して、兄上ではなく僕が行けるよう手配していた」
「アシュベリー領へ行くの?!」
何のために……という私の言葉にしない問いを理解して、アルは難しい顔になった。
「このところ、アシュベリー領で災害がよく起きているだろう?今年は春華祭が終わったのに雪解けしていない地域があるらしい。ということで、何が起きているのか、調べに行くんだ」
「雪解けをしていない……?」
それは、確かに変かも。
春華祭で祈りを捧げれば、冬が終わって春が来る。比喩的な意味ではなく、魔法の力で完全に切り替わるのだ。
それが起きていないというのは、何か問題が起きているからだ。
そっか……。
これは調べに行かないとね。そのままにはしておけない。
でも。
「それって、マーカス殿下やアルじゃないとダメなの?」
「兄上が張り切っているから、兄上を行かせないために僕が行くって感じかな」
「なるほど」
マーカス殿下は学院を卒業し、今年から陛下の執務補佐をしている。
まだ始めたばかりなのに、バリバリ仕事をしているとか。
「大変だね……」
「まあね。でも、兄上がやる気に満ちているから。これくらいは協力しないと」
「そっかぁ」
なんだかんだ言いながら、アルもマーカス殿下の手伝いはイヤじゃないのかな。うれしそうな顔をしている。
……アシュベリー領かぁ。
私も行ってみたいなぁ。観光のために行くんじゃないのは、わかってるけどね。




