新学期始まってすぐのイベント
新学年が始まってすぐに、全学生参加の野外イベントがある。
前世のオリエンテーリングみたいな……宝探しゲームのような、そんなイベントだ。学生交流会という名のそのイベントは、王都の北にある森で、丸一日かけて行われる。
教師によって学年に関係なくランダムに5、6人のチームに分けられ、地図を頼りにチェックポイントを回ったり、魔物を倒したりしてポイントを稼ぐ。そして、一番ポイントの高かったチームが表彰されるというものだ。結構、みんな楽しみにしている。
このイベントは学生の交流が目的なので、基本的にチームは各学年から一人ずつで構成されることが多い。
けれど。
今年の私のチームは、明らかに先生たちの"忖度"の色が見えた。
私、アル、ウルリッヒ、ベルティルデ、そしてリックというメンバーだったのだ。帝国の皇族を、一般生徒と組ませるのは怖かったらしい……。
「うーわー、なんだこの編成。俺、交流会は休みたい……」
「休めるなら私だって休みたいよ。……リック、当日は熱を出しても連れて行くからね!」
「横暴~!」
入口ホールに貼り出されたチーム表を見ながら、私とリックがそんな会話をしていたら、後ろから声が掛かった。
「公爵家の力を使って、こんなチームを組むなんて卑怯だわ」
「グレタさま……」
出たな、パーセル侯爵令嬢グレタ。
入学当初から、私を目の敵にしているクラスメートだ。今日も取り巻き3人を後ろに連れて、ふんぞり返っている。
彼女のお父さまは行政大臣で、とても感じの良い方なんだけど……グレタさまはほんと、トゲトゲしてるのよねー。
「どうせ信じないと思いますけど。私は何もしていませんから」
「そうね。ちょっと呟くだけで、あなたの忠実なお供が勝手に手配してくれるのでしょうから」
リックがわざと大きな溜め息をついて、私の背を軽く押した。
「お嬢さま。午後の授業が始まります。行きましょう」
「ええ、そうね」
彼女と話をしても時間のムダということは、この数年で痛いほど実感している。
リックの勧めに、私は素直に従った―――。
「ずるいですわ、アリッサ。アルフレッド殿下と一緒の組なんて!わたくしはもう最後だから、今年こそはアリッサに勝とうと思っていましたのに~」
放課後、ディからお茶に誘われたので、部屋へ行ったら開口一番に文句を言われた。私は口を尖らせて、反論する。
「そんなの!私の方が不本意だよ。私はアルに勝ちたかったんだからね。アルと一緒の組じゃ、どうしようもないじゃん」
「……まあ…………そうですわね、アルフレッド殿下は負けさせたいですわね。一度、ぎゃふんと言わせてみたいですわ」
いやいや、アルは負けてもぎゃふんなんて言わないでしょ。言わせてみたいけど。
―――交流会では、アルが入ったチームが毎年優勝していた。
だから、"打倒アル"を目標にしている学生は多いし、反対にアルと組みたいと思っている学生も多い。
ちなみに私は、打倒アル派だ。
だって、魔法の腕は私が学院一。チェックポイントをちゃんと回って、魔物をバンバン倒せば、優勝なんて簡単なはずなのに……なかなか思うようにはいかないのよね……。
チェックポイントは、先生たちが工夫した謎を解かないとスタンプが押せなかったり、魔物は学生でも簡単に倒せる小物とはいえ、小物だからこそ逃げ足が速くて追いかけ回さないとダメだったり。
簡単にはポイントが稼げない。だから、みんな毎年、チームが決まるとあれこれ作戦会議をしたりして、交流会を楽しみに待つのだ。
さて……今年はどうなるかなぁ……。ウルリッヒたちと作戦会議……するかなぁ?
「そうそう!」
ディが手を合わせた。
「エリオットが、とても張り切っていますわ。あなたたちに勝てば、学院一が証明されたようなものですし」
「そう?エルマーさまも油断できないよ?」
エルマーさまは、アルと同学年の男子。打倒アルに燃えている。
「確かに。あの方、休暇のときは魔物狩りへ行っているそうよ。……はー、こうなると、帝国のお二人が、あなたたちの足を引っ張ることを祈るばかりですわねぇ」
「いやー、ヤメて。普通に、一緒に行動するだけで揉めそうなんだから!」
なんてこと言うの、ディ!
ウルリッヒとアルは……何かっていうと、張り合うんだもんー。本当に足の引っ張り合いになりそう~。
でも、いつも平然としているアルが、ウルリッヒにだけは対抗心を燃やしていて、それが年相応の少年っぽくて……実は私、イヤではないんだけどね。
ナイショだけど!




