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断罪後から始まる泣き虫悪役令嬢の泥だらけ領地再生記 ―追放先の辺境村で干ばつを止めたら、商人ギルドに目をつけられました―  作者: 夜凪ユリエ


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第85話 『均衡の代価』

 ――一つの決着を迎えた。


 そう言葉にすれば簡単だった。


 だが王都の空気は、まだ完全には静まっていない。


 配給は回り、


 市場は安定し、


 暴動は消えた。


 それでも。


 視線は残る。


 通りを歩くエリシアに向けられる視線。


「……あの人か」


「王都を止めた」


「でも……」


 称賛と、警戒。


 両方が混ざっている。


 ナディアが横で笑う。


「英雄扱いじゃねぇな」


 レオンが言う。


「当然だ」


 ミレイアも静かに頷く。


「全員を救ったわけではありません」


 フィオナが言う。


「優先順位をつけましたから」


 エリシアは何も言わない。


 ただ歩く。


 そのとき。


 前から一人の女性が出てきた。


 やつれた顔。


 だが、目はまっすぐだった。


「……あなたが」


「エリシア様ですか」


 ナディアが一歩出るが、


 エリシアが手で制する。


「はい」


 女性は言う。


「……ありがとう」


 その一言。


 空気が、わずかに変わる。


「私たちの区画、後回しでした」


 レオンがわずかに動く。


 だが女性は続けた。


「でも、分かってます」


「子供のいるところが先だった」


「怪我人のいるところが先だった」


 一歩、近づく。


「だから」


 小さく頭を下げる。


「生きてます」


 沈黙。


 ナディアが小さく笑う。


「……いいねぇ」


 ミレイアは何も言わない。


 フィオナは記録を止めていた。


 エリシアは言う。


「当然です」


 それだけ。


 飾らない言葉。


 女性は微かに笑い、去っていく。


 その背中を、


 しばらく見ていた。


 レオンが言う。


「これが結果だ」


 ナディアが言う。


「綺麗じゃねぇな」


 エリシアは答える。


「はい」


 ――だからこそ、意味がある。


 その言葉は、口には出さなかった。


 議会塔。


 再び足を踏み入れる。


 前回とは違う空気。


 ざわめきではない。


 静かな緊張。


 グレゴールが中央に立っている。


「報告は受けている」


 低い声。


「王都は安定した」


「はい」


 エリシアは前に出る。


 グレゴールは続ける。


「だが」


 一拍。


「方法は問題だ」


 ナディアが吐き捨てる。


「またそれか」


 レオンが笑う。


「来るぞ」


 ミレイアが静かに構える。


 フィオナは記録を開始する。


「違法行為」


「市場介入」


「強制措置」


 一つずつ、


 言葉が落ちる。


「国家として認めるか」


 沈黙。


 視線が集まる。


 そのとき。


 一人の議員が立ち上がった。


「認めるべきだ」


 ざわめき。


「結果は出た」


「王都は守られた」


 別の議員も続く。


「例外として認める」


「制度として整備すべきだ」


 空気が変わる。


 流れが、動く。


 エリシアは言った。


「制度にします」


 議場が静まる。


「今回の対応を」


「臨時ではなく」


「常設に」


 ミレイアが息を吸う。


「……正式化」


 フィオナが頷く。


 ナディアが笑う。


「やるじゃねぇか」


 レオンが言う。


「次の段階だな」


 グレゴールが問う。


「責任は取るのだな」


「はい」


 迷いはない。


 沈黙。


 そして。


 グレゴールは、わずかに頷いた。


「……よかろう」


 その一言で、


 すべてが決まる。


 制度は、


 認められた。


 そのとき。


 扉の近く。


 セシルが立っていた。


 何も言わず。


 ただ見ている。


 そして、わずかに笑う。


「令嬢」


 静かな声。


 エリシアを見る。


「今回は」


 一拍。


「見事でした」


 ナディアが笑う。


「素直じゃねぇな」


 セシルは気にしない。


 ただ続ける。


「ですが」


 その目が細くなる。


「市場は、終わりません」


 エリシアは答える。


「はい」


 それは、理解している。


 セシルは満足そうに頷いた。


「それでこそ」


 黒い外套が翻る。


 そのまま去っていく。


 誰も止めない。


 止める必要もない。


 議場は静かだ。


 だが確かに、


 一つの均衡が生まれている。


 エリシアは前を見る。


 王都は終わった。


 完全な勝利ではない。


 だが、


 崩壊は防いだ。


 それで十分だ。


 ――制度は、通用する。


 その確信だけが、


 静かに残っていた。

王都編、ここで完結です。


完全な勝利ではなく、「均衡」という形。

この物語らしい決着になったと思います。


エリシアが守ったのは“全員”ではなく、“全体”。

その代価と意味が、少しでも伝わっていれば嬉しいです。


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。


少しでも面白いと思っていただけたら、

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