表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
断罪後から始まる泣き虫悪役令嬢の泥だらけ領地再生記 ―追放先の辺境村で干ばつを止めたら、商人ギルドに目をつけられました―  作者: 夜凪ユリエ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/85

第42話 『公開審問』

 王都議会大広間。


 半円状の席に議員たちが並び、中央には演壇。


 傍聴席は埋まり、商人、記者、市民がひしめき合っている。


 ざわめきは、熱を帯びていた。


「静粛に」


 木槌の音。


 議会長アルノルト・ヴェルディンが立つ。


 白髪混じりの老練な男。


「本日は、南部連盟による市場干渉疑惑について公開審問を行う」


 視線がエリシアに集まる。


「連盟代表、エリシア・ヴァルドール」


「はい」


 まっすぐに立つ。


「対するは、商人ギルド理事、バルド・グレイン」


 低い拍手。


 バルドはゆっくりと演壇に歩み出る。


 自信に満ちた足取り。


「南部連盟は出荷調整により価格を操作し、市場を混乱させた」


 セリオが資料を広げる。


 価格曲線。


 連盟成立日と暴騰の一致。


「事実ですか」


 アルノルトが問う。


「出荷調整は行いました」


 エリシアは即答する。


 ざわ、と傍聴席が揺れる。


「認めるのか」


「はい」


 バルドが口元を緩める。


「では市場干渉だ」


「違います」


 エリシアは続ける。


「価格は投機資金の流入で暴騰しました」


「証拠は」


 エリシアは資料を差し出す。


「王都市場への資金流入履歴」


 セリオの目が一瞬だけ動く。


「特定商会経由で集中投入」


「推測だ」


「数字です」


 板にグラフを映す。


 価格急騰前日、巨額資金流入。


 暴落直前、同額引き上げ。


「投機が炎を煽りました」


 ざわめきが大きくなる。


 バルドは声を強める。


「南部の出荷停止がなければ、投機は成立しない!」


「干ばつがなければ、投機は成立しない」


 静かな返答。


「南部は干ばつに直面しました」


「全員を救えなかった」


 ざわ、と空気が変わる。


「餓死者も出しました」


 リリアナが息を呑む。


 あえて出す。


「隠しません」


「罰則も適用しました」


「一村を切りました」


 静寂。


「それが制度です」


 冷たい言葉。


「冷酷だ!」


 傍聴席から声。


「はい」


 エリシアは否定しない。


「冷酷です」


 場が凍る。


「ですが」


 声を少しだけ強める。


「無秩序より、死者は少ない」


 数字を示す。


 連盟内死亡者数。

 非加盟地域の暴動件数。


 比較。


 ざわめきが変わる。


 アルノルトが問う。


「あなたの連盟は、国家より優れていると言うのか」


「違います」


「では何だ」


「試行です」


 静かな答え。


「干ばつは続きます」


「市場は感情で揺れます」


「国家に備蓄制度が必要です」


 場が静まり返る。


「提案します」


 新しい資料を掲げる。


「南部モデルの国家化」


 ざわめきが爆発する。


「国家備蓄基準」

「投機監視制度」

「出荷透明化」


 バルドが眉をひそめる。


「国家が市場に介入するのか」


「干ばつ時のみ」


「前例がない」


「だから今です」


 ルナが傍聴席で立ち上がる。


「お腹すいたの!」


 場が揺れる。


「市場は、ルナを見ません」


 エリシアは言う。


「制度は、見ます」


 沈黙。


 アルノルトが目を閉じる。


「……南部連盟の違法認定は保留とする」


 ざわ、と広間が揺れる。


「国家備蓄制度案については、特別委員会を設置」


 バルドが拳を握る。


 決着ではない。


 だが負けでもない。


 審問は終わる。


 人々の視線が変わっている。


 悪役令嬢ではない。


 南部の象徴。


 カイルが遠くから小さく頷く。


 エリシアは深く息を吐く。


 勝利ではない。


 だが、逃げなかった。


 責任を、言葉にした。


 王都の空は高い。


 干ばつは続く。


 だが制度は、国家へ踏み出した。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ