第五章 scene5 緊迫
月の光が欠けた街路。
人の気配のない裏通り。
風がひとつ、石壁を撫でる。
騎士
「内部に“黒”がいる可能性が高い。
“喧嘩事故”で処理されたのも……
証拠を消したかったから、だ」
熊男
「関係ねぇ。俺は、もう騎士じゃない」
低い声で言って、歩き出す。
……が、足が止まる。
背を向けたまま。
騎士
「……“妹の旦那”だって、
“利用されただけ”だったとしたら?」
熊男の肩が――わずかに動く。
騎士
「裏切り者として切り捨てられ、
“ convenientな悪役 ”にされた。
黒幕は――もっと“上”にいる」
沈黙。
ただ、拳が、ぎゅっと握られる音だけが響いた。
⸻
騎士がサーヤたちの元に戻ってきた。
サーヤの家。
外の音が遠い。
騎士
「……確信した。事故なんかじゃねぇ。
“人為的に処理された事件”だ」
レオン
「どのくらい、やべぇ?」
騎士
「“本気で蓋をしてる”レベルだ。
つまり――」
「“知ったやつから順番に消される”って意味だ」
空気が――凍る。
サーヤでも妹でもなく、
レオンだけ が、一瞬だけ表情を消す。
ほんの一瞬。
“旅の軽口を叩く男”ではない顔。
低い息だけが落ちる。
レオンと騎士が立つ。
椅子が音を立てる。
妹
「え、あの……?」
レオン、振り返る。
いつもの軽い笑顔――
……の“仮面”を被った顔。
レオン
「大丈夫。
俺と、この兄ちゃん(騎士)で動くよ」
妹
「わたしは――?」
レオン
「サーヤと食堂で待っててくれ。
……頼む」
妹は唇を噛む。
でも、その声に“戦う覚悟”が滲んでることに気づく。
サーヤは――静かに見つめて、
「……わかった」
それだけ言った。
でも、胸の奥でつぶやく。
(――もしかしてレオンは…)




