本と家
戦利品整理を始めて、最初に殺した人間の懐からそれを見つけた。
何枚もの薄い何かが重ねられた物。周りを動物の皮で包んであるのか?
(なんだこれ)
解析・演算開始。内容は人間が描いた物語だと推測。対象を英雄譚と確定。
翻訳完了。タイトル判明、勇者伝説。
『…………』
少し時間が経てば、文字も言葉も完全に理解できた。アルゴリズムの逆算も完了。
解読も完璧だ。
(何々…伝説の聖剣に選ばれし少年、シリウスが魔王の一柱を討ち、世界に平和をもたらした…)
勇者、それは魔王を討つという使命を背負う人間の英雄。聖剣に選ばれ、世界を救う者。
不思議な因果で結ばれた種。
◇◇◇
《俺》、これからどうしよう。
あの人間が使っていた一人称を使うことにし、少し愛着が出てきた今日この頃。
意識が覚醒し知識も蓄えた今、この森で何をしようか。何ができるだろうか。
(取り敢えず、家とやらを作ってみるか)
人間の暮らす住居らしい。他の魔物が洞穴を住処にするのと同じだろうか?
――――――――――――――――――そもそも、家ってどう作るんだ?
本にあるのは僅かな挿絵と文章の説明のみ。
森の図鑑とやらに色々、木や植物の知識はあった。だが、それをどう組み合わせたものか。
(せめてそういう本があったらよかったなぁ…)
なら、思いついたことを全部試せばいい。時間は無限にあるんだ、やってやる。
ここから始めよう。ゼロから、森で始める一人生活を!
◇◇◇
『…………』
(いきつまった…)
家を作り始めてから三日ほど経過した。そこで一つの難題に直面。
『…………これ、どうすっか…』
建設予定地にした場所に、大型の魔物が生息していたのだ。確かに、川もあって日当たりもよく、近くに餌がある。だからといって…。
(下級竜は聞いてないって…!)
勇者の伝説にも登場した強敵、下級竜。下級と聞いて侮るなかれ。その強さは町一つを滅ぼしてもなお暴れ続けるという強者の一角。(因みに上級は国を滅ぼすとか?)
勿論、そんなのに喧嘩を売る気はない。
かといって、他に候補地はない。詰んだ。
『うーん………あ!』
――――――――…地面じゃなけりゃいいんじゃね?
そうだ、木の上に建物を作ればいいんだ!
これならドラゴンに襲われずにこの場所で暮らせるぞ!
そうと決まれば早速作るぜ! 善は急げ…だったっけ⁉
『…………むずい!』
五時間ほど格闘して、ようやく骨組みが完成した。
(後は、壁と屋根…あとドア…窓…梯子…)
『やることがいっぱいだぁ!』
こっちを動かせばこっちが崩れて…クッソ! また崩壊する⁉
『誰か助けてぇ!』
まったく…こうなるんだったら、人間に手伝ってもらえば良かった。そうだよ、あの時『手伝え』とか言ってれば―――――――あ、時系列可笑しいか!
殺さなきゃアイデアもなかっただろうし!
アハハハッ!
…………けど、一人は寂しいなぁ。あの人間たちが家族を殺しちゃったからなぁ。
そう考えると殺したの正解?
復讐っていうらしいけど、まあいいよね!
人間もよくやるんじゃないかな、家族が殺されたからやり返すっていうの! だって、そうじゃなきゃおかしいよな。仇を取らないと…………家族が報われないだろ。
さーて、建設建設~!
◇◇◇
『でっきたぁーっ!』
ツリーハウス第一号、完成!
五日かかりました、頑張ったぜこん畜生! 何度も木材の下敷きになったよ!
まあスライムだから無傷なんだけど!
『さーて中身…………なんもねぇ!』
内装作んなきゃ☆




