人間と覚醒
「~~~!」
スライムは目が覚めたと言わんばかりにそれを調べまくる。
初めて湧き上がる感情の抑制など出来るはずがない。
物体把握で見る限り、それはかなり硬いだろう。プルプルの身体など一刀両断だ。
更に興味深いのはそれに魔力が宿っていることだ。
知りたい。
始まったその欲は止まることがなく、際限なく膨れ上がる。
≫ユニークスキル《繋がる者》の限界発動を確認。リミッター解除。
学習者の効果を有効に使い、それを解析。
すると、一つの指紋が確認できた。
スキル・繋がる者の権能から情報を抽出。完了。対象生命体はヒューマン若しくはドワーフと断定。
仮称生命体Aがこれを開発した、ということになるか。
スライムの理解・追及は続く――――はずだった。
謎の悲鳴で解析は中断された。
「⁉」
洞穴の外から聞こえたそれは、同族の断末魔。
イレギュラーは急いで集落に帰還する。しかし、もう既に手遅れだった。
(……!)
そこに広がるのはスライムの死体。魔石を砕かれ、力なき流体へと墜ちた姿だ。
意味不明。因果不明。理由不明。正体不明。理解不能。……。
「おんやぁ~、まだ生き残りがいるじゃないか!」
イレギュラーの前に現れたのは、人間。否、正確にはヒューマン。
冒険者だ。
「へへへっ、丁度よくスライム討伐の依頼があって助かったぜ。金が無くなりそうなとこだったんでなぁ……楽でいいぜまったくよぉ!」
「おいおい、ハイになり過ぎだぞ」
「まぁ、楽なのは同感」
「落ち着いて下さい。主が御覧になっていますよ」
……かね?
かねとは何だ。
そんなに大事な物なのか。同族が、家族が殺される理由になるのか?
充分、殺戮の理由になるというのか?
知りたい。知りたくない。知りたい。知りたくない。知りたい。知りたくない。知りたい。知りたくない。知りたい。知りたくない。知りたい。知りたくない。
知りたい。知りたい。知りたい。知りたい。知りたい。知りたい。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――知りたくない。
シリタイ。
コロシタイ。
憤怒。殺意。知識。殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意殺意。
生まれてから丁度100日。
この日、スライムの意識が覚醒する。
『ぁああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!』
「な、なんだこれ⁉」
「声……何処から――頭の中……?」
「ま、まさか……スライムから⁉」
「嘘……」
『カネ……トウバツ……ハイ……ラク……シュ……』
スライムの念話が拡大し、冒険者たちに伝わる。
純粋だからこそ恐ろしい、〝殺意〟。
「なんて殺気……主よ、この魔をお浄め下さい。――光払閃撃砲!」
「よし、光属性魔法の火力だ! 雑魚魔物なんて一撃で――」
しかし、予想は覆された。
光が、神の威光が、二つに分かたれた。否、両断された。
『ま、ほ……』
《あれ》を、スライムが握っていたのだ。
それは、ドワーフが鍛えし古代の宝具。
「ス、スライムが剣を……⁉」
「有り得ません、剣を携えるスライムなど!」
そうか、これは、つるぎと、けんと、言うのだな。
『つるぎ……けん……ァァア』




