2章XX 『初見』
「今使えるようになった…か。面白ぇじゃねぇか。純粋に楽しくなってきたわ。俺っちとやり合おうぜ。お前ら手出すなよ?」
「はぁ。フレアが自分一人の世界に入ってしまいましたか。まぁいいでしょう。私とルビルは紅い月を持続させるために、他の魔法が使えないですし」
どうやら『太陽』の子が1人で対峙してくれるらしい。4対1とかではなくて助かった。
急に魔法が使えるようになったわけだけど…、何故使えるようになったのか…。いや、そんなことより、何が出来るのかあまり分かっていない。さっきは太陽を破壊出来ればなんでもいいと思って適当に打ったんだけど。
音…に関連するのか…?私の魔法は。
「さぁ行くぜ!噴火!」
『太陽』が地面に手をつける。ボルケーノ…噴火か!私の足元が揺れて、その大きさは徐々に増していく!やがて、地面が割れ、そこからマグマが吹き出てきた。
「音ってどうやって攻撃するんだよぉ〜。避けるしかない〜」
音ってなんなんだ…?何か攻撃に転じれる要素ってあるのか…?
「おいおい、逃げてばっかいるんじゃねぇって。水蒸気爆発!」
「!!」
目の前の空気が歪む。周りにある空気が熱を帯びていき、やがて湯気となって音を立てている。このままだと何か爆発しそう!!
「一か八か………衝撃波!!」
私は決死の覚悟で周りに衝撃波を与えようとする。そして、成功した。私が回転すると同時に四方八方に飛んで行った音はソニックブームとなり、周囲にあった空気を吹き飛ばす。そのまま…
「チッ!」
『太陽』の子にソニックブームが直撃する。普通の人間だったらひとたまりも無いはずなのに、『太陽』の子は腹部に大きめの傷を負っただけのようだ。
「ん、フレアにダメージを与えるとは。中々だな」
「すごーい。フレア負けちゃうんじゃないの?ぷーくすくす」
「姉貴共、傍から見てりゃ茶々入れてきやがって…。いいぜ。こっからは俺っちも容赦しねぇ。お前にも見せてやるよ。『太陽』とは何なのかをな!生命の陽光!」
「なに!?」
『太陽』の子が右手を上に掲げると、その手から暖かな光が辺り一面へと差し込む。そして、その光に照らされた植物──具体的には、砂浜に落ちている藻が次第に巨大化していく。
「ちょーいちょいちょいちょい本気で言ってんの?」
そのまま、かつて藻だったものは私の背丈を優に越して、4mくらいの大きさにまで成長した。まるで意志を持っているかのように動いている…!
「『太陽』とは全生命の源!特に植物なんてのは、日光を浴びれば浴びてこそ活性化するのさ!さぁ!やっちまいな!」
「うわぁぁぁ!」
巨大な植物が声もなく私目掛けて葉を下ろしてくる。発声器官がないから声が出ないのは当たり前なんだけど、風を切る音が聞こえてくる。直撃したらひとたまりもないぞ!
幸い、藻の動きはかなり遅いから、私でも容易に避けることが出来る。けれど、
「水蒸気爆発!」
「あっぶな!」
後ろから茶々を入れてくる『太陽』がわりかし問題だ。待ってほしい。さっきの衝撃波をもう一度打ちたいんだけど、さっきはどうやって打ったんだっけ。もう!思い出せないよ!
「ギャハハ!あれ?おめーもしかしてもうジリ貧なんじゃねぇのか?逃げてばっかじゃ何も起きねぇぜ?」
「ぐぅぅ!衝撃波!うっ!」
ダメだ、こんだけ動き回っていると植物に対して狙いが定まらない!こうなったら…!
「お、おいてめぇ!何だ急にこっちに来やがって!う、うわぁ!」
「藻の攻撃をお前に当ててやる!『太陽』の防御なら植物なんて簡単に燃やせるはず!」
「チッ!小賢しいやつだな。だが、いいのか?こんな至近距離まで来ちゃ俺っちの攻撃が簡単に当てられるぜ?」
「それも分かってる。けど、こんな近くで巨大な『太陽』を生み出したら、それこそあなただって一溜りもないはず!小さい『太陽』なら私でも対処が出来る!」
藻の攻撃を受けながしながら、必死に『太陽』へ当てようと、狙いを定める。こういうボス戦のあるゲーム、よくあるよね。
「弱いくせにちっとは考えるようだが…。それは、俺っちの技を全て見てから考えるべきだったな 」
「どういうこと!」
「それはこういうことだ」
「…?」
『太陽』が急に動きを止める。微動だにしなくなったのだ。本当にどういうことだ…?まずい、藻の攻撃が来る!私は避けようと体を動かし始めるが、『太陽』は避ける素振りすら見せない。なんなら目をつぶっている。これは一体…
そして藻の葉っぱが『太陽』のほぼ真上に来た瞬間だった。
「天動説」
「え」
私の景色が一転する。だって、さっきまで私がいた場所が視界の向こう側に見えるんだもん。待って、ここは?葉っぱの真下だ!入れ替えられた!ヤバい!身動きが取れない!
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ぎゃはは!どうよ!まさか入れ替わりの技があるなんて思っていなかっただろ?計算外ってわけだ!これで一溜りもねぇはず」
「乱音」
藻の体は散り散りとなる。内部から植物内の体がありえない方向へと振動して、自らの意思で破壊を始めたのだ。
「はぁ…はぁ…」
「お、マジで?まだ生きてるんだ。良いぜ。割と根性あるじゃねぇか」
「うっ…ゴボッ」
私の口からは血が吐き出される。
頭上から直撃を食らった。もしこれが植物ではなく金属だったら即死だったと思う。藻で良かった。上から物体に押されるという圧力で体の骨は折れ、血管は切れるも、圧死するほどの頑丈さは藻にはなかった。私の体からの反作用で葉が変形するほどには柔らかかった。
「…っ!」
私は『太陽』に向かって早足でかけていき、距離を詰める。
「おぉなんだ?今度は真正面からか?攻撃が単調すぎるぜ。それにそんな頭やら口からも血を垂らしやがって。汚ぇぞ」
「うるさい!」
私は距離を詰める過程で、砂浜に埋まっていたガラスを足で蹴飛ばし、手に装備する。これだけあれば十分だ。
「はん。そんな小さなガラス片程度で俺っちに傷をつけられると思ってるのか?頭がお花畑すぎるぜ」
「フレア!後ろ!」
「ルナの姉貴!?」
『月』の声が聞こえた『太陽』は思わず後ろを振り返る。だが、そこには海が広がっている他に何もない。
そのまま手に持ったガラス片を『太陽』の腹部へと突き刺す!
「いっ…!異能でルナの姉貴の声を生み出したってわけか。だが、ダメージはその程度か?注射の方がもっといてぇぞ…」
「超音波破壊!!!!」
「ぐばっ…!がっ…!な、ぶふっ!」
ガラスによって生み出した『太陽』の傷口から、超高周波数の超音波を伝える。そして、体の内部から『太陽』の体を破壊する!
内臓が破壊された『太陽』の体は、そのままの姿を保つことが難しく、所々の器官が破裂する。『太陽』は口から血を吐き出し、その血が私の頭へと無造作に降りかかる。が、それがこの攻撃が聞いているなによりの証拠だ。このまま超音波を与え続ければ…!
「フレア!!!ちょっとあなた!やめなさい!」
「うっ!」
『月』が乱入してきた。くっ…そりゃ1人やられそうになってたら、意地でも4対1にしようとしてくるか…。他の姉妹の存在を完全に忘れていた。
私の目の前に怪しげな光が照らされる。ダメだ、直視してしまった。うっ…意識が!また催眠の類か…。眠らされて…
バタン
こうして私の意識は虚空へと沈んだ。




