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魔法少女学園  作者: 弟子
2章
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2章XII(sideA) 『音感』

「これで準備完了にゃん!」


 食堂でたまちゃんと一緒に夜ご飯の準備が出来た!全員分のを並べるの大変やったなぁ…。


「あとはみんなが来るのを待つだけやけど〜、あ、来たきたきた!」


 座って待ちぼうけていると、食堂の扉が音を立てて開き、みんながゾロゾロと入ってきた。ようやく目を覚ましたのかな。


「あすみ、また迷惑かけたね、ごめん」


「いいってば!もうほんとに一時はどうなることかと思ったけどね」


「僕もだ。いくら操られていたとはいえ…え…?」


 姫野先生が今記憶喪失で先生が来れない!これは沙那には秘密!姫野先生が記憶喪失で〜


「にゃにゃにゃにゃにゃにゃ…」


「ちょ!ちょっと待って2人とも1度に話しかけてこないでください。声がぐちゃぐちゃで…。あ、ぁ。なるほどそういうことですか分かりました」


 よし!とりあえず心を読まれちゃう葵ちゃんには真っ先に先生のことを伝えるべきと思ったけど、ちゃんと伝わったみたい。


「3人してなに?私を仲間外れにしているの?」


「にゃ、?そ、そんなことないにゃんよ〜」


 たまちゃんが口笛を吹きながら答える。いや嘘つくの下手すぎるでしょ!


「まぁいいけどね。あすみ、ご飯食べよ」


「あ、うん。でもその前に会長が」


「沙那ちゃん〜忘れてないよね〜?このプリンは貰っちゃうよー」


「え!?あ、今日のデザートプリン!?」


 沙那、プリン好きだったよねぇ…。変な勝負なんて持ち込むから…。


「ふふーん。ごめんねぇ。約束は守ってもらうわないと〜」


「は、はい…」


 ニマニマしながら会長が沙那のことを煽っている。沙那も悲しそうな顔をしてるけど、ここで逆ギレする程子供では無い。


「ほら、半分あげるよ。沙那も一緒に食べよ」


「え!いいの!?」


 沙那の顔面に光が舞い戻ってきた。かわいい。


「いいよいいよ。プリンなんて別にいつでも食べれるんだし」


「やったぁ!ん〜〜うまぁ!!」


「さなぽん、なんで食前にプリン食べてるんだにゃ…?」


 沙那が恍惚な表情を浮かべながらプリンを食べている。そして、たまちゃん。私もそう思う。まさか今食べ出すとは。


「えーと、それじゃあみんな揃ったみたいなので〜」


 食堂に全員が揃ったことを確認したのを見て、壇上でマイクを持った白石会長が挨拶をするみたいだ。


「今日は一日お疲れ様でした!なんかヤバい出来事がたくさんあったけど、みんな無事でよかったです!じゃあ乾杯!」


「軽っ!」


 入学式の時も思ったけど、この人長々とした挨拶とか嫌いなタイプでしょ。めっちゃ有難いけどね。


「かんぱいにゃ〜」


 あちこちで食事を始める声が聞こえてくる。私達も食べようか……………。さて、


「戦争の始まりだ!」


 まず狙うは肉!乾杯など時間を浪費するだけ!食べ物に触れる許可が出てからコンマ1秒で箸を肉の山に刺し、自分の取り分とする。そのまま鍋へダイブイン!さぁ、後はこのまま肉を鍋の中で死守することが目的になるわけだけど…。


「じぃ………………」


 沙那、たまちゃん、葵ちゃん、全てが自分の領域へ肉を投下した。そしてその赤みが消えるのを待ちながらじっくりとその時を待つ。

 そう、これはすき焼きだ。そして、このバトル、自分で肉を入れたとて、元の肉が机に座る4人共有グループのもの。要するに、鍋から救い出すことが出来なければ自分のものとして勝ち取ることは出来ない!

  鍋のアタックは大事だ。なぜなら、鍋で最初にメインディッシュをゲットできなかった場合、また自分で食材を投入しなければならない。そしてまた具材を取られて…を繰り返してしまえばそれは永久の鍋奉行として奴隷労働の道が決まってしまう。それだけは避けねば!


 タイミングを見計らう……そして…!


「ここだ!!」


「七瀬あすみ!遅い!」


「なっ!」


 肉の赤みが消え完全に食べ頃となり箸を向けたその瞬間である。箸があと数ミリで肉に届くといった所で横から別の箸が私の進路を遮った。葵ちゃんである。

 葵ちゃんが私の照準を合わせていた肉を葵ちゃんが投入した分の肉と一緒に掠め取り、それをそのまま自分の口へと運ぶ。…やられた!!


「七瀬あすみのタイミングなんて心を読まずともわかる。さぁ、七瀬あすみ、次の肉を入れるんだな」


「うぅぅぅぅ」


「大丈夫?あすみ、白菜食べる?w」


「なぁぁぁ!沙那まで!」


 沙那とたまちゃんは狙いが誰とも被らなかったこともあり、自分の肉を自分で食べることに成功している。その為沙那が余裕綽々の表情で私を煽ったきた。白菜!?誰が野菜で満足するとでも!?とりあえず鍋に追加の肉を入れて…


「プリン!プリン返せ貴様〜〜!!」


「食べちゃったものは返せませんよ〜だ!」


 沙那め!私がプリンを半分恵んでやった恩を忘れたというのか!この恩知らずめ!


「やっやめ!暴力反対!!」


「食べ物の恨みは何よりもでかいんだぞ!この怖さ思い知るがいい!」


「さぁ、七瀬あすみ。もう君が入れた肉はなくなったぞ。次だ次」


「なぁぁぁ!?????」


 またやられた!!今度はたまちゃんと葵ちゃんに半分ずつ鍋の中身を一掃された!!くっ、鍋は加熱によって徐々に温度を増しているわけだから、肉が煮えるまでの時間も刻一刻と短くなるわけだ!ここの配慮を忘れていた!何たる不覚!!


「あすみっち〜!はーやくするにゃん!」


「うぅぅぅぅ!!」


 この後も私は上手いように扱われ、結局みんなの1/10くらいしかお肉を食べられなかった…。


 ✦︎


「酷い!みんな酷いよ!よってたかってさぁ!」


「実力不足にゃんね〜鍋ものは戦争にゃんよ」


 部屋に戻ってから私は部屋の隅っこでぐずぐず泣いている。たまちゃんはそんなことはつゆ知らずと言った表情で、ベットの上でぴょんぴょん飛び跳ねている。


「まぁまぁお菓子あげるから許してよ七瀬あすみ。はいポッキー」


「うぅ、ありがとう…」


 葵ちゃんの優しい行動に惚れてしまう。私を今こんな気持ちにさせているのは葵ちゃんが原因でもあるのに…私将来DV彼氏とかにハマりそうでやだな…。


「あすみ、いつまでメソメソしてんの、早くお風呂行くよ〜」


「他人事だと思ってさぁ、まぁ行くけど」


 お風呂かぁ、島にある建物のお風呂ってどんな感じなんだろう…。


 ✦︎


 う、嘘でしょ…?


「ひろーー!!!!!!」

「広すぎるにゃん!??」


 お風呂に入ろうとして私とたまちゃんはびっくり声をあげる。え、広すぎない?広さでいえば、学校の校庭くらいはある空間に、たくさんの種類のお風呂がまばらに点在している!


「ヤバい!めっちゃ興奮するにゃ!あすみっち!どれから攻略するにゃ?」


「迷う!でもまずはあの薔薇の湯ってやつに行こうよ!薔薇のいい匂いがするし!」


「良いにゃんね!さっさと体洗って行こうにゃ!」


「七瀬あすみも、古賀環も、何をそんなにはしゃいんでいるんだ。お風呂とかいうのに」


「葵も風呂とかそんなどうでもいいと思ってるタイプ?私も」


 後ろで葵ちゃんと沙那が気だるそうな会話をしている。沙那昔からお風呂そんな好きじゃなかったよね。いっつもシャワーだけで良くない?とか言ってたし。そんなわけないでしょ。


「浦川沙那もか。僕はすぐのぼせてしまうからね。さっさと温まって出ようか」


「うん」


 はぁー勿体ない!こんな楽しそうな遊園地みたいなお風呂をみすみす逃すだなんて!


「あすみっち!あすみっち!この薔薇の湯やばいにゃん!ガチの薔薇が入ってるにゃ!普通にトゲが直で肌に刺さって死ぬほど痛いにゃ!」


「えぇ!???誰が入るんだよそんな湯!!じゃあ私はこっちのコーヒーの湯ってやつに入ってみようかな……。これガチモンのコーヒーじゃない??普通に飲めるやつ???」


「にゃはは!!あすみっちコーヒー臭いにゃん!わざわざ自分の体汚くしてどうするんにゃよ!」


 ヤバい!ここのお風呂めちゃくちゃ変わり種ばっかりで面白い!これは楽しくなりそうだぞ…!


 ✦︎


「バカ」


「馬鹿ですね」


「にゃにゃ…」


「うぅ…星が見える…」


 無事に私とたまちゃんはのぼせて脱水状態になってしまった。早々に風呂から出て待ってた沙那と葵ちゃんが1時間経っても出てこない私たちに心配して舞い戻ってきたらしい。彼女らの想像通り、私とたまちゃんは2人ともリンゴの湯とかいうリンゴが浮いてるよく分からないお湯の中で意識を失っていたみたいで…。

 2人で私たちを部屋まで運んできてくれたみたい。


「ほら、水。あすみ飲んで」


「ありがとう沙那〜〜」


「なんか、昔もあすみって脱水症状で倒れてた時あったよね」


「そんなことあったっけ〜?」


「ほら、ピアノの発表会の時」


「あぁ…」


 確かにそんなこともあった気がする。とはいえ5歳とか6歳の頃の話だけど。私は小さい頃からピアノを習っていて、ピアノを弾くこと自体は好きだったんだけど、極度の人見知りかつあがり症だった私は、人前で発表する発表会が大の苦手だった。

 だから、そのピアノの発表会の時も、朝から緊張して起きてから出番の午後3時まで一滴も水分を取らなかったから……、最後、弾ききってたってお辞儀をする時に立ちくらみを起こして倒れちゃったこともあった。

 でも、その時に助けてくれたのが沙那だったんだよね。沙那が舞台の床の中からいきなり現れて水を私にぶっかけたらしい。逆に私は溺死しそうになってたらしいけど。


「あの時から、沙那と沢山話すようになって、で、人見知りも治ったんだよね」


「あすみはもうピアノ弾かないの?」


「うーん。弾いてもいいんだけどね。結局、魔法が使える子には発表会で勝てないし、習い事としてのピアノは辞めちゃった。でも、ピアノ自体は好きで、まだ弾けると思うし、趣味でなら再開してもいいかもね」


 結局こういった習い事においても、魔法が使える人間が優位に立つことには変わりない。8歳の頃、完璧な演奏をし、自分の持ちうる最大限の力を出し切った後、『律動』の魔法を持った魔法少女が完璧なリズムで一切のブレのない完璧な演奏をした時に幼い私の心は砕かれちゃった。


 でも、今ならその子にだって負けない自信がある!だってピアノの演奏って本質は一切のブレが無いかどうかじゃなくて、その音にどれだけの感情を込められるかだもん!小さい子の演奏はそりゃブレが無い方が目立つけど、中学生の演奏ともなれば、ブレが無いのなんて前提条件みたいなもんだしね!


「そっか、私、あすみのピアノ好きだから、もっかい聞いてみたいな」


「そう〜?そこまで言うなら今度弾いてあげちゃおっかな〜!」


 沙那って私のピアノ好きだったんだ〜うれしー


「じゃあ元気になった?明日も早いだろうしもう寝る?」


「えーー!本当は恋バナとか枕投げとかしたいんだけど〜」


「明日5時起きですよ?今12時ですし、僕的には割と限界な時間だと思いますけど…」


「そうにゃ…それに恋バナって言ったって誰かなにか話すことあるのかにゃ…?」


 ………


 4人とも完全なる沈黙、誰も浮ついた話無し!そりゃ私だって男の子と喋ったことくらいありますけど?3年前に?なんか落し物拾ってもらった時?それ以来喋ったことないけどね!


「はぁ…じゃあもう寝る?私はもう今日疲れたから眠いや」


「そうね、もう寝よっか。沙那おやすみー」


 葵ちゃんが電気を消す。それもそうだ。今日はいろんなことがあったわけだし、みんな疲れてるんだ。今日は早く寝て、また明日楽しもう!

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