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魔法少女学園  作者: 弟子
2章
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2章I 『透過』

「名前は姫野愛莉、魔法は『服従』。これからよろしく頼む」


 先生の自己紹介で教室が静まり返った。ふ、『服従』…!?


「色々と聞きたいこともあるだろうが、先に点呼を取るか。遅刻者を炙り出さないとな。えーっと、名簿名簿…」


「せ、先生!先生の魔法について私知りたいです!」


『服従』の魔法って確か…なんか凄い魔法みたいな感じで世間的に認知されてた気がする…。ちっちゃい頃の話だからあんまよく覚えて無いけど…。

 し、知りたい…!


「まぁ、慌てるな。座って待ってなさい」


「なるほど、連続で使えないんですね?」


「…っ!?」


 お、先生が驚いている!これはビンゴかな?


「先程私はおそらく先生に『早く席に着け』という命令を受けました。その結果私は自分の席を把握していないにも関わらず自席に座ることが出来た。これは先生の魔法によるものでしょう。そして、今も『座って待て』という命令を私にすれば良かったはずなのしなかった。ってことは、しないのではなく出来なかったと考えるのが必然ですね」


 私の名推理が炸裂する。こういうの、得意なんだよね〜。


「ふん。正解だ。私の魔法は5分のインターバルが必要だから、さっきはまだクールタイムだったんだ。でもご高説のおかげでもう5分経ったぞ。『席に着け』」


「なっ…!?」


 ご、5分!?デメリットとして機能してないでしょそれ、早すぎる…!?

 私の体はぺたんと椅子に縛りつけられてしまった。


「まぁいい。出席を取ろう。居たら返事をするように。秋元、魔法は『交換』か」


「……ぐぅ」


 ね、寝てる…。学校初日のしかもHRから睡眠…。なんて度胸のある人なんだ。


「おい、秋元、『起きろ』!」


「ひっ!は、はい!」


 秋元さんって呼ばれてた人が返事をする。どうやら強制的に『服従』の能力で起こされたようだ。黒髪短髪の元気っ子…キャラ被りしてます!!私の髪はどっちかって言うと茶髪だけど!!


「宇田川…魔法は『不老』か。面白いじゃないか」


「は、はい!」


 次は宇田川さんか。『不老』だって、でも不死じゃないってことは、無敵って感じじゃなさそう。逆に不死とかの魔法を持ってる人もいたりするのかなぁ?


「私もいつの間にか13年も老けてしまってな。これ以上はあまり歳をとりたくないものだよ」


「そ、そうですか…。でも私の魔法は…」


 ん?なんかデメリットが大きい魔法なのかな?


「というわけでさ、『不老』の魔法、使って?」


「えっ!?」


 !?先生の体がピンク色のオーラで覆われている。ってことは魔法が使われてるんだ!『不老』の能力行使を間近で見れる…面白そう…!

『服従』の能力行使を受けた宇田川さんの体は黄緑色のオーラで包まれ、そして姫野先生に向けて魔力を放出する。そして…


「ふむ…これで私は不老になったのか…?実感は湧かないな」


 バタン!!


 と音を立てて人が倒れる音が鳴った。音の発信源は宇田川さんの方である。


「な!?」


 名前の順的に真後ろの席に座ってた沙那は目の前で人が急に倒れたことで驚きの声を上げる。


「お、おい大丈夫か宇田川…?」


「うーん。これは死んでるんじゃないですかね?」


 声を上げたのは宇田川さんの右隣の席に座っていた子だ。濃いめの紫色の髪をしており、赤い眼鏡をかけている。如何にも真面目メガネキャラって感じの風貌だ…。

 で、でも死んでる…?そんなまたなんで…


「僕の魔法は『心読』です。心の声が聞こえるのですが、今途端に宇田川さんの心の声が聞こえなくなりました。寝ていても気絶していても心の声というのは脳が生きている限り存在します。それが聞こえなくなったということは、死んだと判断するのが妥当かと」


 僕っ子眼鏡ちゃんが考察する。『心読』か、そういう使い方もできるのね…。


「にゃにゃ!?この子死んじゃったのかにゃ!?」


 僕っ子眼鏡ちゃんの真後ろの席に座っていた子が話し始める。白い髪で猫耳のカチューシャをつけているけど…マジで話し方も猫なの…!?


「はい、僕が考えるに恐らく『不老』の代償かと。魔法の効力からもデメリットが寿命に関連してもおかしくない」


 ん…それはおかしくないか…?


「ま、待って!眼鏡ちゃん!」


「それは僕のことですか?僕には如月(きさらぎ)(あおい)という名前があります。ちゃんと名前で呼んでください」


 あ、あおいちゃんか。確かに眼鏡ちゃんは失礼かも…。


「葵ちゃんの言ってることは近いと思うけどちょっと違う部分があると思う」


「聞きましょう。どこが間違っていると?」


 そう、葵ちゃんの推理には明確におかしい所がある。


「それは、宇田川さんが自身の魔法の能力とデメリットを把握していたことだよ!ここがおかしい!」


「なるほど、確かにおかしいかもしれません。魔法は発現した後使ってみなければ自分の魔法がどういうものなのかを知る術はない。しかし、1度使っただけで命を失うならば、その魔法の内容に気づけるはずがないということですね」


 ん、葵ちゃん賢い!私の考えてることがシンクロしてる…違う!この子『心読』で私の心読んでるだけでしょ???


「はい、確かにその通りです。そして、貴方の考察をお借りしますが、確かにその線で行くならば、『不老』の能力行使の強さによって代償が大きくなるということでしょうか」


 わーわーわー!!!私がかっこよく言おうと思って考えてたことを全部言われちゃう!!!


「にゃ?行使の強さってどういうことにゃ?」


「分かりやすく言うと、10年不老を授けるならば10年分の寿命が、20年ならば20年分の寿命が削られると言った感じでしょうか。もちろん、この数量関係は分かり兼ねますが」


「ふーん。じゃあこの子は今姫野先生に全寿命を代償とするレベルの『不老』を授けちゃったってこと?」


 皆の話を静かに聞いていた沙那がまとめよる。

 でも…そのまとめによって、教室中はざわめきに呑まれてしまった。


「え…死んだ…?」「嘘!?寿命を代償に?」「姫野先生ヤバくない?これ」「普通に殺人でしょ」


 いろんなざわざわが教室中を覆う。

 収拾がつかなくなりそうなところで姫野先生が声を上げた。


「全員、『静かにしろ』」


 一瞬でピタリと教室が静かになる。私は…さっき魔法を食らったばっかりだから、効果の範囲外っぽいので感覚的に喋れるけど、雰囲気的には喋れなかった。


「まぁ、そのなんだ。これは不慮の事故みたいなもんだ。気に病むな。魔法少女が死ぬなんてよくあることさ」


 姫野先生はこの件を有耶無耶にしようとしてる。いやでもそれはなくない…?今私クラスメイト1人死んじゃったんだよ…?しかもそんなこと言ったら…

 私ははっとして沙那の方を見るが、沙那の席にはもう人の姿は無かった。焦って姫野先生の方を見ると、その背後には黒板がある。

 が…よく見るとわかる。そして、それは沙那の魔法を知っている私だからこそ注視出来るのかもしれない。黒板を見ると、まるでそれが液体かのように少し波打っているのが見える。おそらく『透過』で壁の中に潜り込んだのだ。

 そして、波は姫野先生の真後ろへと辿り着き…姿を現す!

 教室の皆も気づいただろう。姫野先生の後ろから急に沙那の姿が現れたのだ。右手にはハサミを持っており、それを勢いのまま姫野先生の左胸へ突き刺す!


「っっ!?」


 姫野先生が驚きの声を上げる。沙那は人一倍正義感が強い。しかし、その正義感が少し歪んでいるのも私は知っている。

 沙那は自分の正義のためなら復讐なども厭わないタイプなの。

 沙那の心は多分今「姫野先生は人殺し⇒姫野先生は悪者⇒なら殺しても構わない」という思考回路があるはずだ。

 そして多分それは合っている。だって今沙那の心を読んでいるであろう葵ちゃんが冷や汗をかいている。狂気じみた考えを沙那がしているのには間違いないはずだ。


「ちっ!いきなり生徒が先生に盾つこうとはいい度胸じゃねぇか。私の体よ、『回復しろ』」


 姫野先生がそういうと、先生の体はみるみるうちに回復していった。『服従』にそんな使い方があるの…!?


「先生、私はあなたを許さない。例え知らない人であろうと、私は人殺しという罪を裁かずには居られない」


 沙那が先生に向かって告げる。……喋っている…?なぜだ…今クラスのみんなは『静かにしろ』という命令を受けて喋れなくなっているはず…。ふと周りを見渡してみると、周りのみんなも喋れるようになっているみたいだ。


「ち、ちょっと、あの子どうなってるんだ?君の知り合いだろう?」


 葵ちゃんが私に話しかけてくる。そりゃそうだ。


「うーん。昔からああいう所があるんだよ。ちょっと自我が強いというか…いつもは大人しいんだけどね…」


「ふっ、13年しか生きてない癖に、いっちょ前に罪や罰について語ってるんじゃないよ!対象、教室内の机!浦川に飛んでいけ!」


 姫野先生の一声で教室内の机が全て宙に浮かぶ。椅子だけ残された私たちはなんか身ぐるみを剥がされた気分だ。

 そして宙に浮いた机は高速で沙那の元へと飛んでいく。でも…沙那に物理攻撃は…


「無意味です。行きます」


 沙那の体は青色のオーラで覆われる。と同時に机が沙那の体に衝突するも、その机は沙那の体をすり抜け、向こう側の壁へと衝突する。

 さらに、そのまま飛んでくる机の列に沙那は潜り込み、まるで川を逆流するかのように泳いで姫野先生との距離を詰める。


「厄介な魔法だ…。『透過』って所か?対象、浦川の持つハサミよ。私から離れろ!」


「っっ!!」


 沙那の持つハサミが沙那の手から離れ、逆方向の壁へと飛んでいき、スパッと刺さる。

 武器を取り上げられた沙那は分が悪いと判断したのか、机の波から外れ、ある程度の距離を取った所で体を元通りに具現化させる。


「にゃ…バトルが高度すぎるにゃ…」


「ぼ、僕にも何が起きてるのか捉えきれません…。君は捉えられているのですか?あの『透過』の姿を」


「当然。まぁでも慣れだね」


 私もずっと沙那と一緒にいたから、沙那の魔法を見続けてきた経験がある。そのお陰で沙那の姿をある程度捉えられてはいるけれど、姫野先生の魔法も最強格過ぎて、争い自体にはあまりついていけてない。


「ふん、インターバルは後1分って所か。こちらからの攻撃手段は無さそうだな。防御に徹するとするか」


「…させません!」


 沙那の体が床の中へと消えた。そしてその姿は姫野先生の足元へと移動する。


「どこへ消えた…!」


 私が捉えている沙那の姿は姫野先生のちょうど足元へとたどり着く。そして、そのまま姫野先生の脚を液体かのように這い上がり、沙那の体と姫野先生の体が一体化する。


「これでトドメ…!」


 姫野先生の腹の辺りから沙那は顔を出し、そして姫野先生の左胸に手を入れる。心臓を握りつぶす気だ…。


「うっとうしい!」


 姫野先生が振り払おうとするが、沙那の体は今先生の身体という()()の中にある。先生の体と一緒に沙那も動くため、振り払うことは出来ない。


「一か八かだ。秋元!『交換しろ』!」


 姫野先生が『服従』の魔法を秋元さんへと行使した。秋元さんの体がグレーのオーラに覆われて、出欠の時に言われてた『交換』の魔法が使われる。

 そうか…!秋元さんは『起きろ』という命令を受けていたから、クールタイム的に『静かにしろ』という命令を受けていない。だから今秋元さんに対して魔法が行使出来ているのか。

 そして、『交換』の魔法は恐らくだけど、特定の物体を1対1で交換する魔法…。沙那はあくまでもそこにいる先生の体に入っているわけだから、沙那までは『交換』されないと踏んだのか…凄い…戦闘の経験値がまるで違う!


「うわぁぁぁ!許してください!」


「くっ…」


 予想通り、秋元さんと先生の位置が入れ替わった結果、沙那の体は秋元さんの体の中に入ることとなり、先生は秋元さんが居た場所へと位置が変動した。心臓に手をかけられてる秋元さんが情けない声を上げる。


 2人はもう一度距離を取って様子を見合う。


「…………あすみ」


「!?」


 沙那が私の名前を口にした。なんで!?大体こういう時は私になにかして欲しいことがある時だけど…。この状況で!?さすがに無理だが。

 そして先に勝負を仕掛けたのは沙那だ。今度は真正面から先生の方へ向かって駆けていく。


「正面からだと?また潜らなくて平気なのか?」


「……不要」


 な、なんだ。沙那の要求…。なにか私の頭で考えられること。


 そうだ!さっきの違和感。『静かにしろ』という命令を受けたにもかかわらず喋ることが可能になったクラスメイト。命令は永続じゃない?同じ空間で発動できる命令は1つまでか。それとも何か命令について時間制限があるか。

 どちらでも結論は同じだ。私の後ろにはさっき飛ばされた沙那のハサミがある。もしもこのハサミが『先生から離れろ』という命令の対象外になっていたとしたら…!


「沙那!!」


 私は沙那に向かって後ろの壁に刺さっていたハサミを抜き取り、投げる。そのハサミは沙那の体を貫通し、無事右手の位置へ。そのまま、ハサミを元の姿に戻し、構える。


「上出来」


 ハサミの持ち主は一気に加速して先生との距離を詰め刺しにいくつもりだ。でも…。


「タイムオーバーだ。『魔法を使うな』」


「っっ!!」


「おらっっっ!!!」


 姫野先生の蹴りが沙那の腹部へと直撃する。その勢いのまま、沙那は黒板へと衝突し、意識を失ってしまう。

『静かにしろ』という命令から、先生の魔法クールタイムである5分が過ぎてしまったんだ。魔法が使えなくなった沙那は蹴りを『透過』出来ずにもろに食らってしまう。

 沙那は魔法によって物理攻撃を受けないから、耐久面については人一倍弱い。大打撃だ…。


「制裁を加えてやる」


 姫野先生は加速し、意識を失った沙那の元へと近づく。まずい、このままじゃ。


「やめてくだ…」


「そこまでです!」


「っ!?」


 私がセリフを発する前に、先生と沙那を結ぶ線分上の間に一人の人間が立ち、姫野先生を止めに入る。

 しかも、この人、今一瞬でこの場に現れた…!どうなってるんだろう??


「姫野さん。初日からいきなり生徒を殺したり、生徒と争ったりってどうなってるんですか?これあなたにこのクラスを託した私が始末書書かなきゃいけないんですけど?」


「小鳥遊か。始末書もなにも、先に襲ってきたのはそいつだぞ。そう書いとけばいい」


「そういう問題じゃなくて……はぁ、もういいです。この子は私が保健室連れてきますんで」


 そういうと、綺麗な赤髪をしている人。先生なのかな?が沙那を連れて、沙那ごと姿を消した。

 す、すごい!もしかして瞬間移動的な魔法かな?

 先生は辺りを見渡している。私も見渡してみるけど、机や椅子やら荷物までもが散乱しててひどい有様になってる。


「ま、まぁ今日は入学式で帰りだ。授業は無い。その、なんだ。色々混乱してると思うが、落ち着いたら体育館に来なさい」


 そう言い残すと、先生はスタスタと教室を出ていこうとする。


「そうだ、忘れていた。七瀬とか言うやつがこのクラスにいるらしいな。そいつは式が終わったあと職員室にいる私の元へ来ること」


 先生は姿を消してしまった。え、七瀬ってもしかして私?


「あの…すみません。このクラスって私以外に七瀬って名前の人はいますか…?」


 恐る恐る尋ねてみるが…。


「僕は昇降口でこのクラスの名簿は一通り確認しましたが、七瀬という名字は1人しか確認していませんね。もしかして君が七瀬さんなんですか?」


 葵ちゃんが無慈悲な回答を告げてくる。まじかぁ〜。


「うん…私が七瀬。私なんかしたかなぁ」


「あすみっちはどんな魔法が使えるんだにゃ?というか、名前はあすみっちであってるのかにゃ?」


 猫みたいな子が話しかけてくる。そういえばこの子名前はなんて言うんだろう。


「うん。あすみであってる。あなたの名前は?」


「私の名前は古賀(こが)(たまき)って言うにゃ。たまって呼ぶといいにゃ。それで、あすみっちの魔法はなんなのにゃ?」


 う、いい感じにはぐらかせたと思ったけど、話を元に戻されてしまう。


「そ、それなんだけど実は…」


「魔法が使えないんですか!?」


 うわ!!葵ちゃん『心読』使った!!!この子性格悪すぎる!!


「にゃ!?魔法が使えないってどういう意味にゃ!?」


「そのまんまの意味だよ。魔法は持ってるらしいんだけど、使えた試しがないんだ。だからどういう魔法を持ってるのかも分からない」


 私は自分の性質をありのまま喋るしかなかった。


「ふむ…。だとすると、推薦コースへの入学がなにかの手違いだったとかでは?」


「手違い!?」


 え、嘘!?沙那も言ってたけど、私の入学ってやっぱりおかしい?


「だってそうでしょう。このクラスにはトップクラスに強い魔法の持ち主しか居ません。そこに無能力者が入れるとは考えにくい」


「うーん。やっぱりそうだよね。でも、だとすると入学式の後に呼び出しを食らってるのが引っかからない?」


 入学の不備があったとするならば、わざわざその人に入学式を経験させるという生殺しのようなことはしなくていいはずだ。いや、相当なドSだったらしてくるかもだけど。


「確かにそうにゃね。とりあえず行ってみるしかにゃいんじゃにゃい?」


「僕も同意見です。とりあえず一緒に体育館行きませんか?時間的にもそろそろ式が始まりそうです」


「そうだね…。行こっか」


 その後私たち3人は入学式を執り行ったけど、私はこの後に控えている呼び出しのせいで全く式には集中出来なかった…。











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