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魔法少女学園  作者: 弟子
1章
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1章XXII(1章end) 『終焉』

「紗夜ちん!!嘘でしょ!しっかりして!!対象…ダメだ!!さっきの避けてで命令を行使してる。どうすれば…」


 愛莉が私の元へとやってきた。私の体に回復の命令をしようとしたのだろうが、5分のインターバルが邪魔をする。残念だけど私の命の猶予はもはや5分もないだろう。私の体内から胸部を通じて大量の血液が外部へと輸出されているのが、体を通じて確認できる。


「愛莉…やったね…!魔獣討伐できたよ…!」


 最後に愛莉の悲しい顔なんて見たくない。私は精一杯の作り笑顔を愛莉に向ける。

 私が言葉を発声しようとする度に、喉は空気の代わりに血液を押し出そうとする。舌は鉄の味でいっぱいになり、気持ち悪いが、私はそれでも懸命に笑顔を向ける。

 しかし、愛莉は私の顔など気づかず、私をどうにか治癒しようと頭をフル回転させている。


「待ってね紗夜ちん!今どうにかするから…対象!七五三柚葉!今すぐ紗夜ちんを回復させろ!!」


 愛莉が大きな声で宣言する。委員長をここに呼び出す算段なのだろう。でも、あの委員長に何か出来ることがあるだろうか。あの心が壊れてしまっている委員長に…。


「………………」


「おい!委員長!早く!命令が効いてるだろ!?『時間遡行』をしろ!!!」


 委員長がとてつもないスピードでこちらへ向かってきた。戦闘序盤でナイフを引き寄せた時と同じである。もはや委員長を道具として扱っているかのようだ。しかし委員長はやはりまだショックから立ち直れていないらしい。そもそもこの魂が抜け落ちたような委員長はショックによるものなのか?ネガディブモードだとしてもこちらの言葉に対して返答くらいできるんじゃ…。そして、愛莉が命令をするが、さっきも愛莉が言っていた通り、この状態で命令を行使しても『時間遡行』は使えないのだろう…。


「委員長!!早く!!」


「うぐ…ぎぎぎ、が」


 委員長の喉がおかしな音を上げる。何かが詰まって壊れた機械が無理やりにでも動こうとして、普段ではありえない音を出してる時の音だ。今委員長の体は『時間遡行』を行使しようとしている肉体と、ショックを受けて立ち直れていない精神。これが集中力という橋で繋がっていない状態なのだろう。これでは委員長も魔法を使うことが出来ないはずだ。


「ねぇ…頼むよ!!いい加減に!!早く!!!」


「あ…あが…」


 愛莉の語気が強くなる。愛莉だって委員長に当たってもどうにもならない、これがただの八つ当たりだと言うことはわかっているはずだ。ただ、今誰を責められるかと言われれば、自分か、そして委員長かしか居ないのだろう。

 そして委員長の体は肉体と精神の乖離により限界を迎え始める。処理に耐えきれなくなった脳は崩壊を起こし、委員長の目や鼻、耳などから破壊された脳の断片が血と一緒に垂れ落ちてくる。


「委員長…柚葉…ねぇ…」


「愛莉……もう、委員長は……ダメだよ…」


 もう委員長の体は人間の肉体を保っていない。全身から血が吹き出し、そして最後には……委員長の頭蓋が破裂した。風船のように散り散りになった委員長の顔面、吹き飛び散る委員長の骨と血。その結果、辺り一面には委員長の血が飛び散る。私の顔にもそれは1部かかり、視界が赤色に染まる。血の匂いが私の周りに充満し、なんとも言い難い嫌悪感を想起させる。


「この役立たず!!待ってて紗夜ちん!今どうにか…」


「待って…」


 私は暴走寸前の愛莉を言葉で繋ぎ止める。


「最後くらい、一緒にいさせて…ね?」


 これが私の今1番の、そして最期の願いだ。これが私の本心そのものである。最後だからこそ何もせず、一緒に最後を迎えて欲しい。それこそが私のエゴだ。


「最後ってそんな縁起でもないこと言わないで!大丈夫だから…、あと2分半耐えて、いやそれが無理なら止血を…!」


 自分の体のことは自分がいちばんよく分かっている。あと2分耐えるのは…おそらく無理だ。出血が如何せん多すぎる。私の体も段々と冷えてきてしまった。指先からもう既に腕は体温を失っている。血が流れてないのだろう、体が寒いというのが私の感覚だ。。このまま目をつむれば私の生命活動は終わってしまう……。そんな気がした。ただ、私にはその前にやらなければならないことがある…!


「愛莉…指、出して…左手」


「手って、今そんな場合じゃ!!」


 私は愛莉の手を強引に掴む。愛莉は驚いたようにこちらを見る。やっとこっちを見てくれた…。そう、それでいいんだよ…。そしてポケットの中からペアリングを取り出した。


「やっと…こっち…向いてく……れた…。」


「紗夜ちん…!それ…!」


 愛莉は初めて見ただろうけど、察したはずだ。これが私たちの付き合った証。ペアリングになる。


「愛莉、これで…私のこと…絶対忘れないでね…」


 私は愛莉の左手の薬指にそっと指輪をはめる。そして、そろそろ限界が体にやってきたようだ。もう腕や足の先に力を加えることすら難しい。愛莉の指に指輪をはめた私の腕が、無造作に地面へと自由落下する音が聞こえた。首から下の感覚は無い。自分が生首だけで存在しているのではないかという錯覚に陥る。


「そんなの…当たり前じゃん!待って!もう片方のペアリング…」


 愛莉が私のスカートをまさぐってペアリングのもう片割れを探そうとしてくれている。なんて律儀なんだろう。あぁ、ここに来て私の目に愛莉が今流しているものと同じそれが流れ始める。この感情はなんなんだろうか…。後悔、惜念、友情…おそらくまだ世界に存在している名前の付いていない感情だ。

 これを人はまとめて「愛」と呼んでいるんだろう。私はもう一度、もう一度だけで良かった。愛莉と一緒に遊びたかったのに…。


「見つけた…!待って、これをはめて、回復して、そしてもっかい一緒に…」


 私にはもうそれに応えることする叶わない。ゆっくりと自分の意識が遠ざかっていくのを感じる。人は死にゆく際に触覚と聴覚が最後に残ると言われているが、実際にそうらしい。最後に私の左手に何か感触があったようだ。多分指輪をはめてくれたのだろう…本当に嬉しい。これで私と愛莉の心が真に繋がることが出来たと、私はそう思う。

 脳が働かなくなってきた。もう既に目も開かない。私はこうして、最期にあの観覧車の時のキスの味を口に思い出しながら、息を引き取ったのであった。




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 2088年4月7日、今日は待ちに待った入学式の日だ!この私13回目の春を迎えたこの朝!私の人生の快進撃がここから始まるのだ!!!なんてね。


「おはよう、あすみ。今日も朝から変な妄想ばっかりしてたの?」


「心外だな〜。沙那は私がいつも変な妄想をしてるような人間だと思っているわけ〜????」


 ベージュのような色の髪をしていて、綺麗なカールがかかっている高身長の美少女が私に声をかけてきた!入学式初日からエンカウントイベント!?とも思ったけど、その顔はよく知っている顔見知りの沙那だった。がっかり…。


「うん、いつも、毎日、常に思ってるよ?」


「ひ、ひどいよ…そんなぁぁぁーー」


「ちょっ、ベタベタするなってうっとおしいな。」


 そう!私が学園への登校中にかけてきた沙那っていうのは私の幼馴染!クールビューティーな浦川沙那(うらかわさな)!毒舌キャラってやつなのか分からないけど、いっっっつも私のことをこうやって小馬鹿にしてくる。本当にいくないと思うんだよね?そーゆーの。

 対する私はいつでも元気満点な七瀬(ななせ)あすみちゃん!テンションの高さとポジティブさなら誰にも負けない自信ありなのだー。


「にしても、まさかあすみが本当に私と同じ選抜クラスに入れるとはね。驚いたや。」


「ふふーん。でしょでしょ?まぁ私やればできる子なので〜。」


 そう!何を隠そう今日から私たちが通う学園は数多く存在する魔法少女学園の中でも、エリートの中のエリートが集うクラス、東京都C地区4番校舎の選抜クラスなのだ!

 選抜クラスは全国でも優秀な魔法少女たちがハイレベルな特訓を行うために作られた機関で、もし世界の崩壊が起きた時には最前線で戦うのが目的らしい。私は生まれたばっかりだから記憶とかないんだけど、13年前の2075年の崩壊では、イレギュラーな程でっっっかい魔獣が出たんだって!そして、これで13年おきに世界の崩壊が起きたのが4回目らしい。だから今年!世界の崩壊が起こる可能性がひじょーーーにたかい!だから私達が期待の世代ってやつだね。そのための選抜クラスなんだとか。

 私たちはそのでっっっかい魔獣と戦うための親衛隊?みたいな感じっぽい。

 そして選抜クラスは基本は推薦じゃないと入れないんだけど、なんと自己申告制で、どうしても入りたいです!って懇願すれば、偉い人に認めてもらえると入れるっぽい。私は実際そうやって入ったし…。


「沙那は優秀だもんね〜。魔法、『透過』でしょ?自分の体を液体みたいにして何でも通り抜け出来るようにするとか強すぎるもん!」


 沙那の魔法は『透過』!床でも壁でもなんでも通り抜けることが出来る。たとえボールが飛んできても、ボールが沙那の体を通り抜けちゃうから痛くないんだって。いいな〜。

『透過』については私にも詳しく教えてくれないんだけど、ドアとか開けずに毎回部屋に入ったりしてるし、かなり強いんだろうな〜とは思ってる。対象を選べるっぽいから、ドアを『透過』させる時に床を『透過』させずに落ちません〜ってことも出来るらしいしね。


「本当に、そんな私と同じクラスに、まさか魔法が使えないあすみが通うことになるとはね。」


「うぐっ、それを言われちゃうと肩身が狭いですな〜。」


 そう、沙那がなぜ私が選抜クラスに…?と困惑しているのも当然。この選抜クラスに入るは基本戦闘においてとても優秀な魔法を持つとこが必要条件として定められてるっぽい。『透過』とか優秀すぎるでしょ。

 ところがどっこい、なんということでしょう!私は魔法が使えません!一応検査によると、魔法は持ってるらしいんだけど、それに自分の体が気づいてないというか、何かしらの影響で魔法が使えない状態にあるっぽい。

 なんか特別!って感じでいいよね。


「なぜ、あすみが選抜クラスに入れたのか、まずはそれを知るところからスタートかな〜。」


「ちょっ!私不正とかはしてないからね??」


 ✦︎


「うわぁ、めっちゃ個性的な人が沢山いるよ〜。」


 沙那と一緒に教室の中を見渡すとクラスメイトがもう既にたくさん居た〜。これは中々…個性的だぞ…。


「うん、みんなどんな魔法が使えるのか知りたいところだね。」


「もーー。そうやって沙那は魔法のことばっかり!まずは仲良くなる所からでしょ!」


 沙那は本当に魔法バカってやつだな〜。私たち中学生なのにもっと学園生活を楽しもうって気はないわけ??

 選抜クラスには今年13歳になる少女たちが30人ほど集められているっぽい。こん中の1人に私がいる…!ワクワクが止まらないね!


「ん?なんだお前ら入口で溜まるんじゃない。『早く席に着け』」


「あ、はーい!」


 先生かな?ドアの前で立ち往生してたら声をかけられてしまった。席に座ろう……あれ?なんで私自分の席がどこか知らないはずなのに迷わずこの席に辿り着けたんだろう?なんか無意識的にここにたどり着いたような気が…。


「あい、全員揃ってるな。私がこの選抜クラスの担任だ。まずは自己紹介から…」


 やっぱり先生だ!ちょっと低めの声で怖めだけど、髪の色はピンクのショートヘアでとても綺麗。首にはネックレスをしていて、そのネックレスはチェーンにリングが通っているパターンだ。リング2つもチェーンに通してるけどすごく邪魔そう。そして…目の奥…なんか元気があんまりなさそう。何か嫌なことでもあったのかな?



「名前は姫野愛莉、魔法は『服従』。これからよろしく頼む。」



1章終わった〜。伏線を貼り貼りしながら書いてたので大変でした。こっからが本番ですね〜。 もしも伏線に具体性を持たせたかった時は1章の内容を改変するかもしれませんが、細かい言い回しを変えるくらいで、流れをあんま大きくは変えないと思います。大事なことは全て書きました。そして、もう少しだけ1章は続きます…。

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