1章IX 『氷結』
魔獣討伐訓練も終わり、教室に戻ってくると、流れるように帰りのHRが始まり、そして直ぐに終わった。まだ私帰りの支度済んでないのに…。
「はい、それではこれで帰りのHRを終わりにします。皆さん魔獣討伐訓練お疲れ様でした。1人、他グループに討伐を任せた不届き者が居たようですので、その方は来週補習です」
「ぐえーーそんなー。聞いてないですよー」
帰りのHRで叱責を受けた愛莉が机にもたれかかって項垂れる。でもそれはそうって感じだ。
「そんなやつがいると思ってなかったから言ってないだけだ。それと、明日からはゴールデンウィークだ。今年は5/3,4,5と3日間だけで、果たしてゴールデンウィークと呼べるのかどうか微妙なラインではあるが、くれぐれも羽目を外しすぎないように楽しむこと。そしたら解散!」
HRが終わった。短めとはいえ、明日から連休ということもあり教室内は活気に満ち溢れ、明日からの予定を立てる者同士の話し合いで誰もが盛り上がっている。
「よーし、紗夜ちんー一緒に帰ろ〜。と、その前に」
私にもその相手が来たようだ。愛莉には前々からゴールデンウィーク楽しみにしていてねなどと、少し匂わせがあったのだ。かなり期待している。
「ん?どうかした?」
「じゃーん!見てよ〜遊園地無料招待券〜」
愛莉が、この街でいちばん大きな遊楽施設である遊園地の無料招待券を私に見せてきた。しかも4枚もある。
この遊園地はとても大きなジェットコースターやらアトラクションやらが偏在している、近場で唯一の大きな遊び場所だ。満13歳の私たちが子供だけで行くにはかなり都合が良い。
「紗夜ちん、この遊園地に連休中一緒に行かない〜?どうせ暇なんでしょ〜?」
「その暇を確定されているのが若干癪だけど…お望み通り暇ですよーだ。でも、遊園地楽しみだから行きたいかも!」
ここ最近遊園地なんて行ってないし、こんなイベントはどんなにあっても困ることは無い。人生は楽しむべきだ。
「でも、チケット4枚あるっぽいけど、どうするの?流石に2日連続は厳しいものがあるよ?」
「大丈夫ー。ちゃんと人を誘ってるからー」
愛莉が人を誘う…?こやつに誘えるような人が居たか…?というか、愛莉よりも私にそんな知り合いがいないんだけど…他人と丸1日遊園地はさすがに厳しくない…?
「この度はお招きいただきありがとうございます。姫野さん」
「貴様に借りを作るのはあまり嬉しくないが!…遊園地は行きたい…」
ここで、愛莉が多分誘ったであろう2人が私の元へ近づいてきた。
「ほら〜委員長と凛花誘ったんだ〜この4人で行こ〜?」
なるほど、このメンツなら私の知り合いでもあるし、愛莉もギリ交流関係のある人達だ。全然この人たちとなら私も一緒に遊べる。服の下を一方的に見た仲でもあるし。
「いいじゃん!遊園地なんて人が多ければ多いほど楽しくなるだろうしね!」
「はい、私も涼風さんで遊…いいえ、涼風さんと遊ぶことが出来る機会をいただけて本当に光栄です」
「ちょっと今不穏な助詞の間違いがあったけど?また魔法で私を苦しめるんじゃないでしょうね!?」
このドS委員長に振り回される涼風さんも大変だなぁ…。今までの委員長の行動って涼風さんで遊ぶためにやってたんだ…。涼風さんが苦虫を潰したような顔をしたが、涼風さんが会話を広げた。
「それで!?回る順番はどうするんだ?やっぱ今のうちに決めときたいだろ!」
「そうですね、涼風さんは委員長とどこか回りたい所あるんですか?」
確かに。涼風さんの言う通り、とんでもなく広い遊園地に休日に行くのだ。予定を分単位で考えないと絶対に立ち往生することになってしまう。良い提案すぎる。
「「え??」」
ん?なんか後ろで愛莉と委員長が驚いた声を上げている。なんの驚きだ…?今なんか変な会話の流れがあっただろうか?
「ちょっと待ってよ紗夜ちん〜。遊園地行くのに下調べするのはちょっとナンセンスじゃない〜?」
「そうですよ涼風さん。その日の気分との一期一会を楽しむのが遊園地を楽しむ上での醍醐味なのでは?」
「「え!?」」
続いて驚きを上げるのは私と涼風さん。遊園地で遊ぶことに対してそんなこだわった考えが存在してたいうのか…?これはまずい…遊園地を楽しむ上での方向性の違いというやつか…?
「ちょ!ちょっと待ってよ。だって遊園地だよ!?それにゴールデンウィーク中だから混んでるだろうし、並ぶ時間とかも考えると効率よく回った方が良くて…」
「そ、そうですよ皆さん。それに愛莉も!どうせジェットコースター乗りたいとか言うんでしょ?今のうちにどれ乗るとか決めといた方が絶対良いって…」
予定を立てるべき組が焦りながらも反論を並べる。私の意見は大体涼風さんと同じだ。
「は〜分かってないよ紗夜ちん。遊園地に行った時にジェットコースターに乗りたいかどうかなんてまだ分からないでしょー。もしかしたらその日はお化け屋敷とか軽いアトラクションや体験型の施設で遊びたい気分の可能性だってあるじゃないかー」
愛莉も間髪入れずに反論をしてくる。自分の意見を曲げる気は到底無さそうだ。
ぐぬぬ…この言い争いはおそらく埒が明かないやつだ…。どちらの派閥もお互いの意見を曲げる気が無い…。愛莉は気分屋な所があるから確かにその場の気分によって左右されやすいところがあるのかもしれない。
「あ!そうしましたら、私に良い提案があります!」
ここで口を挟むのは委員長。果たしてどんな提案なんだろうか…。愛莉の『服従』で遊園地貸切にしちゃいましょう!とか言い出さないでもらえると助かるんだけど…。さすがにそれは倫理的に問題がありすぎる。出来るけど〜ってやつだ。
「あの子をお連れしましょう!」
そう言って委員長はクラスの端の方から1人の少女を連れてきた。その姿は私が授業中の7割くらいの時間、ぼーっとしてる時にずっと見ている姿だった。
「はい!小鳥遊結愛さんです!この方の『瞬間移動』を使えば園内を一切の時間を取らずに動き回ることが出来ます。そうすれば、私たちの行き当たりばったりな予定でも大丈夫でしょう」
「ま、まぁ確かにそうかな…」
これなら折衷案として最適だと思う。まだお互いに言い足りない所はありそうだったけれど、委員長がせっかく考えてくれた考えを無下にする気持ちはどちらにもなかった。
「え、えと。すみません。これは一体なんですか…?」
急に連れてこられた小鳥遊さんがおどおどとした様子で口を挟む。そらそうである。急に連れてこられて会話の種にされていたら誰でもこうなってしまう。
「それは〜私から説明すると〜ここに遊園地のチケットがあるからみんなで行こう〜って話になってるの〜。4枚しかチケットがないんだけどまぁ追加の分はみんなで割ろうかなぁ〜」
「な、なるほど。遊園地ですか。確かに楽しそうですが…。す、少しいいですか?」
小鳥遊さんが申し訳なさそうに私たちに質問をする。今この状況は小鳥遊さんが会話で優位を保っている。聞かないわけにはいかない。
「はい、どうなさいましたか?」
「え、えと。遊園地なんですけど…は速水さんも一緒でいいですか?」
あぁ、そういえばそこのふたりは仲が良かったんだっけ。もちろん人数が増えることに越したことはない。この2人にはチケット自腹で買って貰わないといけないけどね。……愛莉も言ってたし、さすがに割り勘で2人分買ってあげようかな…?
「もちろんいいですよ〜。一緒に行きましょう!」
こうして6人のメンバーで遊園地に行くことが決まった。
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家への帰り途中、私はいつも愛莉と一緒に帰るのが日課だ。途中まで愛莉の家と帰る方向が同じ…というか、100mくらい私の家から歩けば愛莉の家にたどり着く。
「楽しみだね〜。三連休最終日に遊園地に行けるなんてね〜。一緒に遊園地に行くの初めてじゃない?」
「うん、遊園地自体行くの結構久しぶりだしね。というか…」
そう、休日に外出すること自体があんまりない。覚えてる限り半年ぶりくらいだろうか。だって友達が愛莉しか居ないのだから、愛莉が誘ってくれない限り私が出かける場所とか存在しないし。
「出かけるの久しぶりすぎて、外出用の服とか持ってないかもしれない…」
私が持ってる制服以外の服は基本パジャマとか家で着る用の服しかないという危惧がでてきた。小学生が着るような派手ピンクのTシャツとかはあるんだけど、流石にそれを着て遊園地に行くのは恥ずかしいかな…?
「んーそれはまずいねー。そうだ!明日一緒にデパート行こうよ〜それで服買ったり遊んだりしよ〜」
愛莉がお買い物の提案をしてくる。もちろん私も賛成だ。愛莉が言ってこなかったら私から誘おうとした位でもある。
「いいね!凄くあり!私も愛莉と一緒に遊びたいしね」
「それじゃあ決まりね!また明日〜」
十字路の分かれ道で私は愛莉と別れた。楽しい三連休になりそう。




