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14.従者との恋愛

 先に、レオから貰ったオリアーナ様の情報を簡単に頭の中でおさらいする。



 オリアーナ様は、私とエイミー様と同じ侯爵家の御一家。

 オリアーナ様には幼い弟さんが二人いて、どちらかが後継者、との噂がある。

 彼女は勤勉で真面目な方で、クールな印象が強い。 又、私より3歳程年上である。


 彼女には浮いた噂が一つもなく、ドレスで飾り立てるようなこともあまりしない。

 ダンスより剣術に長けている、との情報もある程だ。

 だから、密かにエイミー様とはまた違った形でファンクラブがあるほどだ。


 ……そして、話は戻る。




「貴女、レオン様と本当に恋仲なの?」

「!」



 私は動揺してしまった。

 ……もしかして、バレたのだろうか。

 そう思ってどうしようか、返答しかねていると、困ったようにオリアーナ様は笑った。



「ごめんなさいね。 率直に聞きすぎたわ。

 ……ただ単に、私と同じなのかなと思っただけなの」

「? 私と同じ……?」



 私が驚くと、オリアーナ様は頷いて、わたしに一歩近付くと、小声で言った。



「……私、実は彼と付き合ってるの」

「へ?」



 そう彼女が指差した先に居たのは、間違いなくレオの隣……、オリアーナ様の従者さんを指していた。



「……え!?」

「しーっ、声が大きいわ」



 慌てて私の口元に人差し指を立てる彼女に、私は黙ると、オリアーナ様はその手を退けてすこし俯き加減で言った。



「その……、従者と恋愛しているだなんて、あまり公には出来ない、でしょう? 私もまだ、両親には言っていないの。

 でも、貴女なら、レオン様と付き合っている風に見えたから、同じなのかなと思ったの」



(……そういうことだったのね)



 つまり、私がレオといるのを見て、付き合っていると思ったオリアーナ様が、私も同じように従者と付き合っているお仲間だと思ったのだろう。



「……もしかして、違った?」

「! い、いえ!」



 オリアーナ様の言葉に、私は反射的に首を横に振る。

 すると、オリアーナ様は朗らかに笑って言った。



「まあ、そうなのね! やはり、同じでしたの。

 ……そうなると、殿下の婚約者相手はやはり、エイミー様になるのかしら」

「……ちなみに、エドワード殿下は貴女方のことは知っていらっしゃるのですか?」



 そう私が尋ねると、今度は彼女が驚いたような顔をして少し考えた後、「えぇ」と頷いた。



「エドワード殿下に、あの夜会の夜にお話したの。 その上で、私は婚約者候補に残った。

 ……つまりは、エドワード殿下にカモフラージュを申し出たの」

「え?」


 そう言ってオリアーナ様は空を見上げた。



「……私は従者と結婚をしたい。 殿下はそれを分かって下さった。

 けれど、もしここで外れてしまえば、結婚適齢期を当に過ぎている私に両親が結婚を勧めてくる、そう思ったの。

 だから私は、貴女やエイミー様、それから他の方々が狙われていると聞いて、その方々の応援と、暗殺家の集中を私にも分散させる為にこうして残ったのよ」

「!」




 それは、予想していないことだった。

 まさか、オリアーナ様は私と同じように、殿下の婚約者になる為ではないけれど婚約者候補に残っただなんて。



「……何故、そんな大切なことを私に?」



 それにしてはリスクがありすぎる。

 誰かの耳に入れてしまったら、オリアーナ様が殿下の婚約者になるつもりはないと、誰かの口から噂になってしまうかもしれないと言うのに。

 そう考えた私は素直にそう問うと、オリアーナ様はにっこりと笑って言った。



「貴女も、私と同じだと思ったからよ。

 ……もし仮に、貴方方が付き合っていなかったとしても、いずれ私と同じ道を辿ることになるとお二方を見ていて思っただけ」

「同じ、道……?」




 どういう意味だろう。

 首を捻った私に、「まあ、今のは適当に聞き流しておいてくれれば良いわ」とオリアーナ様は手をヒラヒラと振り、そして笑った。



「まあ、何にしても、私は貴女を応援しているわ」

「……えっ」




 そんな話をしていると、控えていた二人が私達に近付いてきた。



「……あら、時間ね」



 そう言って歩き出そうとしたオリアーナ様に、私は言葉を発した。



「オリアーナ様。

 私も、貴女の幸せを願っておりますわ」

「! ……有難う、ジュリア様。

 貴女とお話が出来て良かった」





 そう言って微笑むオリアーナ様は、とても素敵な方だと思ったのだった。






 ☆





 一方、従者達は……



(レオ視点)



「久しぶりだね、レオ」

「……ロジャーさん。 お久しぶりです」



 ジュリア様から目を離さないよう気を付けながらそう返すと、ロジャーさんは苦笑いする。



「相変わらず、お嬢様馬鹿やっているのか」

「馬鹿とはなんですか。 ……これが仕事ですので」

「さあ、本当にそれだけかね」



 そうニヤッと笑うロジャーさんを軽く無視して、俺はふと口にする。



「……そういえば、どうして急にオリアーナ様がジュリア様にお話を?」

「あぁ。 多分、あれじゃないか。

 恋話、とか」

「……はぁ?」



 この人、ふざけているのか。 という意味を込めて言えば、ロジャーさんは「お前相変わらず辛辣だな!」と突っ込みを入れ、いつも照れた時にやる仕草……頭をかくふりをして、オリアーナ様を見る。



「……俺、実はオリアーナ様と付き合っているんだ」

「……え」

「お、流石のお前でも知らなかったか」



 そう満足げに笑うロジャーさんに思わずムッとして、「恋愛感情には少々疎いだけです」と答える。

 すると更に笑われる。



「はは、そうか。 まだお前は拗らせてんのか」

「!?」



 思わず反応してしまった俺に対し、図星だと再度笑うロジャーさんに返す言葉もなく拳を握る。



「……絶対に、ジュリア様とオリアーナ様には言わないで下さいね?」

「あぁ、分かってるさ。 お前がそういう感情に疎いことくらい、殿下だって俺だって十分に知っている」

「……」



(……恋愛なんて、分かるわけがない)



 一切の感情を捨て、ただ一人、心から仕えたいと思う人のためだけに剣を振るってきた。

 ……ただ本当に心から思う人の為だけに。



「……まあ、お前が努力家な証拠だよな。

 俺も殿下も、いつでもお前の味方だ」






 あまり無茶はするなよ、そう言って俺の肩を叩いて笑うロジャーさんに、俺も礼を述べて、少し笑みを返してみたのだった。


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