02 彼女の記憶ー違い
一面の赤、赤、赤、、、紅の景色が広がっていた。秋らしさを感じる、むしろ理想の秋そのものの様な景色が目の前を覆い尽くしていた。
一言で言うのならば、
「すげえな、紅葉ってこんなに赤いんだな、、、」
その一言に尽きるほど、赤かった。「自分」の思わず口から出た言葉が自分の思ったそのもので、「自分」なんだなと感じていた。
「すごいでしょーここの神社は紅葉で有名なの。てか近所なのに知らなかったの?」
「いや、知ってたけど夏にしか来たことなくて」
たしかこの時、来たことないと言えなくて必死に言い訳ですらないなにかをしていた、はずだ。彼女に「そんなことも知らないの?」と言われたくなかったのだろう。
彼女と「自分」は神社に続く長い長い、紅葉に囲まれた石段を登る。少し登ったところで気まずくなったのか彼女は唐突に話を始めた。
「ねぇ、秋夢はなんであの高校受けようと思ったの?」
「近いから」
「はやっ!てかまぁそんなことだろうと思ったけどさー」
「じゃあ聞くなよ」
「うわっ、そんなこというの?冷たいよー」
「まぁ涼しいけど」
「そんなこと言ってるんじゃないし・・・てか絶対わざとだよね?」
普段からこんな風に喋っていたのだろうか、そんな気もするし、違う気もする。曖昧な記憶の欠片が、原型から少し欠けたパズルを組み合わせていくように隙間が出来て、何か抜け落ちている絵になってしまったようだ。
今目の前で見ている記憶以外の記憶が定かではなく、記憶の中の「自分」の感情も自分にとっては曖昧なものになっている。
そんな自分の思考など、むしろ存在など知る由もない彼女と「自分」は神社の建物に着いた。それと同時に、頭に疑問符が浮かんだ。
(あれ・・・ここで死んだんだっけ?死んだのは・・・まぁ俺だよな)
賽銭箱を見ながら、彼女は口を開いた。
「もしさ、もし私が死んでも叶えたいお願いがあったら、君は全てを失ってもその願いを手伝ってくれる?」
「極端な話だな・・・簡単にまとめると私の為に命をかけれるかってことだろ?」
返答に対して彼女は首を振った。横に。
その動作に、欠けたパズルが少しずつ埋まって行く。
(違う、違う、違う、違う、死んだのはーーー)
「何を言ってー」
「自分」は知らない。次に起こることを。
自分は知っている、次に起こることを。それに対して自分は焦っている。焦って、焦って、だがなにも出来ずに。
「私を失っても、私の為に生きて行ってくれる?」
「そ、そんな縁起でも無いことを言うな!失うとか、失わないとかっ・・・」
自分は知っている。「自分」の言葉に対して、もう彼女が応えてくれないことを。
彼女の口からは、言葉と共に鮮血が零れる。
その意味を「自分」は理解して、
その意味を自分は知っていて、
自分も「自分」も共に叫ぼうとして、
意識が、戻っていく。




