5/2(木) <建国>
課外授業の合間に昨日話をしたクラスメイトに『なろう』について聞き出してみると、『小説家になろう』の略らしい。
あの小説投稿サイトにある小説の多くが、異世界をテーマにした小説なんだそうだ。
家に帰ってさっそく『なろう』のランキング上位の話を読んでみたが……どうも読み進まない。
最近小説を読んでないからか、文字がなかなか頭に入らなかった。
それでも異世界でスキルを使って敵を次々倒すストーリーは、今の自分には深く共感できた。
「タラスの言う通りだ。神様、おかえりなさい」
こっちの世界に来るなりニャオが僕に抱きついてきた。
今日はタラスは居ないようだが、ニャオが無事な所を見る限り、昨日の帝国軍はあれで撤退してくれたようだ。
ほっと一安心しながら頭を撫でてあげると、ニャオが聞いてきた。
「神様は、なんで固まっちゃうんですか?」
「固まる? どういうこと?」
「神様はこの椅子に座って石みたいにカチカチに固まってたじゃないですか。タラスに聞いたら、お昼になったら勝手に戻るって」
どうやら僕がこの世界に居ない間の話らしい。
こっちの世界の僕の体はそんな事になってたのか。
「なんで固まるんだろうね、僕も知らない」
「神様でも知らない?」
「そうだね。さぁ昨日の被害を見に行こうか」
僕はニャオと一緒に地上に出て、村の様子を確認した。
昨日の火の矢でいくつかの竪穴式住居みたいな家は燃え、黒コゲになっていた。
櫓も真っ黒になっていて、このまま使い続けるのは不安が残る。
「神様、みんなのおうちを作り直せます?」
「出来るさ、見てなよ」
さっそく建築関連の本に載っていた建物を思い出しながら、家を生成する。
細かいところまでは覚えていないが、ある程度はアドリブでカバーして……
イメージしながら力を込めると、長方形を大胆に組み合わせた幾何学なデザインの家が出来上がった。
フランク・ロイド・ライトを思わせる、この村に似つかわしくないモダン建築だ。
ニャオがぴょこぴょこ跳ねながら喜んだ。
「凄い、さすが神様。家なんて作れるんですね」
「フフ、自分でもちょっと驚いてるよ」
家自体は満足な出来だ。
だがこれを作るだけで体力や集中力が大幅に削られた。
これを量産するのはちょっと厳しそうだ。
もっと簡単に作れる家を考えなくては。
そこで僕は右目を閉じ、右目だけの千里眼でタッセの街を透視した。
左目は目の前の土地を見る。
こうすることでタッセにある家を見ながら、目の前の土地を見て家を生成できる。
この世界の家をそっくりコピーするのだ。
すると……簡単に出来た。
このやり方なら、集中力を消費せずとも出来るようだ。
調子にのって、僕は家を連続で10軒くらい作ってやった。
家を新しく建てるたびに、村人がおおっと声をあげる。
ある程度作って一旦手を止めたところで、村人に話しかけられた。
「神様、少しお話をしてもよろしいでしょうか」
優しい顔をした若い青年だ。
後ろには数十人の村人を連れていた。
「私はこの村で自治をしているヴィダという者です。この村を新しい国にしようと考えています」
ヴィダの後ろにいた村人たちが、持っていた旗を広げた。
大きな旗には紋章のようなものが書かれていた。
「これが新しい国の旗です。国名はゼディロ、『真の神に仕える』という意味です」
「それは、新しい国を作るのを僕に承認してほしいってこと?」
「そうです、そのとおりです」
「うん良いと思う。今日からここは新国家ゼディロ。ここに建国を宣言しよう――
国、か。
僕の国が出来たのか。
なんだか実感が湧かない。
そもそも村が国になるとどう変わるんだろう。
寝る前に『なろう』を読もうと思っていたが、国について考えていたらいつの間にか眠っていた。




