5/1(水) <攻防>
今日から年号が令和になるそうだ。
だが、僕の学校は『そんなもの関係無い』とでも言うように今日も課外授業がある。
それでもみんな愚痴をこぼしながらも、ちゃんと授業を受けた。
部によっては部活が休みのようで、今日の帰りはあまり会話したことないクラスメイトと帰った。
そのクラスメイトが異世界とか言っていたのが気になったというのもあり、前から会話してみたかったのだ。
話を聞いたところ、『なろう』という名前の、異世界をテーマにした小説が有る。
僕は家に帰ってさっそく『なろう』を調べてみたが、小説投稿サイトが出てくるだけで『なろう』という小説は見つからなかった。
今日もまたいつも通りの地下室が目の前に広がる。
いや、いつも通りだとダメじゃないか!
「ねえタラス、女の人達はどこへ行ったの?」
「村の発展のため、女は皆、神の建てられた建物に移しました。いやぁ大変でしたよ」
「なんで勝手にそんなこと! い、一番若い子をここに連れて来て。僕が面倒を見るよ」
「他の5人は?」
「ネコ耳の子だけ!」
「は、はい。かしこまりました」
僕が声を荒げたからか、タラスは急いで外へ出ていった。
こんなに大きな声を出したのは久々な気がする。
しばらくしてニャオを連れて帰ってきた。
ニャオは部屋に入るなり僕に飛びついてきた。
「神様ぁ、怖かったぁ」
「どうしたの?」
「沢山の男が変な目で見てきたの」
「怖かったろうね、これからは安心して良いよ」
僕が頭を撫でてあげると、ネコ耳がピクピク反応した。
かわいい。
このままいつまでも撫で……
「敵襲だ! 神の助けを!」
突然、村人が外から駆け込んできて叫んだ。
敵襲だと!? 良い所だったのに!
邪魔する奴らは手のひらで潰してやる!
地上へワープすると村はパニック状態だった。
空には火のついた矢が飛び交い、櫓や村人の家が煙を出していた。
すぐに櫓の上までジャンプする。
「水よ!」
手から大量の水を作り出し、即席の雨を村全体に降らせる。
鎮火した櫓の上に立ち、あたりを見渡した。
いったん火は消えたが、火矢はまだ四方八方から飛んできている。
村が敵に取り囲まれているようだ。
「風よ!」
手を大きくあおぐと風が吹き、矢は村の外へと飛んでいった。
ひとまず火の矢はどうにかなったが、これで終わるはず無い。
情報を集めるため村の軍のリーダーの所まで飛ぶ。
「ソルア、何が起きてるか分かる?」
「この矢は帝国軍の物だ。帝国軍め、前回は行軍中に全滅したから、今回は四散して隠れながら近づいて来たみたいだな。前みたいな御業は使えねぇぜ」
「次の敵の行動は?」
「村に侵入して白兵戦だろうな。皆に鍬は持たせてるが……耐えきる自信は無い」
ソルアはきびしい顔をした。
耐えられないなら僕が活躍するしかない。
僕は空中に飛び、透視能力で敵の位置を探す。
そして見つけ次第デコピンで敵を潰していく。
だが倒せば倒すほど、敵の数の多さが見えてきた。
このままだと倒す前に現実に戻されてしまう!
とっさに僕は敵の中のひとりに目標を絞り、その目の前にワープした。
驚いた顔をする敵兵のおでこに手を当て、その思考を読み取った。
ただし読み取る思考は「この戦闘に関する情報」に限定するようフィルターをかける。
それでも大量の情報が僕の頭に流れ込んできた。
気分がしんどくなり頭もフラフラするが、欲しい情報は手に入れた。
これだけ大きな軍だ。
四散して攻撃するなら、何か事前に決めた号令があるに決っている。
だから『撤退』の号令を敵兵から読み取ったのだ。
僕は敵兵から弓とかぶら矢を奪い、空に向かって射た。
ヒョオォーと音を立て矢が空へと飛んでいく。
これで敵兵は撤退す――
帝国軍が撤退する様子を見られないまま、現実に戻ってしまった。
あれで撤退してくれただろうか。
不安だけれど、それを確かめるには明日を待つしか無い。
僕はニャオ達のことが気になり、なかなか眠りにつけなかった。




