5/13(月) <運命の前日>
今日の授業中、『寝る前5分は全知全能』について考えていた。
あそこに書かれているのは、ゴールデンウィーク前後に僕の身に起きたことそのものだ。
補習とか家族旅行はもちろん、異世界で女の子を作ったとか街を潰したとか、僕の思考までいちいち書かれている。
プライベートが全世界に公開されているだなんて最悪だ。
感想欄に「気持ち悪いです、連載をやめてください」とでも書いたら連載は終わるだろうか?
書こうかどうか悩んだ結果、結局感想は書かなかった。
こっちの世界に来て、まずニャオ呼んで頭を撫でてあげた。
本当は戦略会議に行きたいところだが、『なろう』の作者の思い通りに行動しないためだ。
「神様ぁ、戦略会議に行かなくて良いんですか?」
「良いんだよ。最近かまってなかったから、ニャオも寂しかったでしょ?」
「そうですけど……」
そう言いながらも、ニャオはネコ耳をパタパタさせて喜んでいた。
ニャオとの時間を満喫してから、戦略会議に顔を出した。
会議は完全に詰まってる様子で、全員何も言わず悩み続けていた。
ヴィダに聞いてみる。
「困ってるようだけど、どうしたの?」
「それが……3日かけて城を落とすとお伝えしましたが、その間の食料をどうするか考えていたのです」
「食べ物くらい運べばいいじゃない?」
「無理ですよ、50人分くらいの食事を3日分なんてどんな量になるか。武器や兵器も運ぶ必要があります。それをタッセに運ぶだけで2日はかかる想定です」
「タッセは、そんなに遠いのか……」
マンガで戦略について知識を集めた時、物資調達は大事ってあったのを思い出した。
でもその程度、神の力の前では問題ない。
「僕がワームホールを作る。ここからタッセに直接ワープするなら、食料も武器も一瞬で運べる。これで問題解決だね」
会議の参加者全員が驚きと希望の顔で僕を見たあと、立ち上がって拍手をした。
満場一致で僕の案は採択された。
会議は進み始めたので、僕は訓練の様子を見にソルアのところへ行った。
いつも魔法の練習をしていた軍人達は誰も居なかった。
全員がハコの中に入っているんだろうか、ハコからは奇声が響いてきた。
「どうだいソルア、例の不死空間は」
「凄いことになってるぞ。どんどんレベルが上がって次々新技を手に入れてる。昨日までとは別の軍ってくらいだ」
「そんなに凄いの!」
「オレもレベルが20くらい上がったぞ。素早さが倍増して、今ならどんな攻撃も避けられる」
このハコ、予想以上に効果があったようだ。
中に入って訓練の様子を見ようと思ったら、ソルアに止められた。
「中はグロいことになってるぞ。見たら多分、吐く」
「わ、わかった。やめておくよ……」
その後僕は、昨日の続きを始めた。
剣や槍、大砲や投石機。思いつく限りの武器や攻城兵器を作る。
そうしていると、いつの間にか大量に人が集まっていた。
軍の人じゃない、農民たちだ。
その中から農業長のアブロスが前に出てきた。
「こ今度の戦争に、み皆が参加したがっています。わ私達にも武器と魔法を授けて欲しいのです」
「でも、君たちって軍人じゃないでしょ」
「ぐ軍人にしてくださいって言ってるんです」
アブロスは真摯な目で僕を見つけてきた。
その真っ直ぐさに、僕の心は動かざるを得なかった。
「わかった。全員に魔法をくれてやる。武器もだ。国民全員で総力を上げて戦おう!」
僕は一人ひとりに魔法を授けていった。
戦力が増えたなら武器ももっと沢山必要だ。
時間ギリギリまで、僕は武器を作り続けた――
今日もこっちの世界に戻るなり、すぐに『なろう』の『寝る前5分は全知全能』をチェックした。
すぐに最新話を読む。
そこにはやはり、今日自分のした事や考えた事が書かれていた。
感想を書こうとした事も書かれていたし、ニャオの頭を撫でたことも書かれていた。
くっ、裏をかくのは無理なのか……。
この作者はどうやって僕の事を知るのか、僕に何をさせたいのか。
そんな事を考えながら、僕は眠りについた。




