5/12(日) <準備>
今日は自転車に乗って古本屋へ行き、マンガの立ち読みをしていた。
特に戦記物マンガを読んで、戦略についての知識を得るためだ。
家に帰ってから『なろう』を読んでいると、気になる小説があった。
『寝る前5分は全知全能』という小説だ。
読み始めると、背筋に寒気が走った。
書いてある内容が僕の身に起きていることそのままだった。
まるで自分の日記を他人が書いているかのようだ、気持ち悪い。
いったいどういうことだ?
しかしおかげで、昨日僕がセティとどんな話をしたのか見直すことができた。
やはりこれは、ダモス帝国と戦争する流れになってしまったのだろう。
国の民にまた苦しい思いをさせるかもしれないと思うと、気が重かった。
椅子の前にはヴィダが待機していた。
「神様、昨日はお疲れ様でした」
ヴィダはいつも通り、にこにこと優しい顔をしていた。
「戦争することになったけど、あれで良かったのかな?」
「はい。むしろ不可侵条約を結ばないかヒヤヒヤしていたくらいです」
「そ、そうなのか?」
「もともと我々は帝国でクーデターをし、失敗して逃げて来た者ですからね」
「つまり、帝国を嫌ってる人が集まって出来た国なのか」
「そうです。帝国では以前より……おっとこの話はまた今度に。今、戦略について議論している所なので、参加して頂きたいです」
「わかった、僕で良ければ」
「それと、開戦は明後日の予定です。宣戦布告の使者はもう出しました」
「えぇ! 早すぎない?」
「帝国が準備する前に叩きたいですからね、早い方がいいのです」
ヴィダはニコッと微笑みながら言った。
家の1階では何人もの人が地図を見て戦略について話し合っていた。
タッセは皇帝の城を中心に4つの壁で囲まれているらしい。
「最初の壁は簡単じゃ。最初の壁は下級農民の物、我々の元仲間の物じゃ。問題は2つ目以降の壁じゃ。1ヶ月前のクーデターでは突破できんかった」
アドル翁という人が僕にそう語った。
「前回と違い今回は魔法がある。じゃがMPが足りん。まず神様にはMP切れの補填に大砲や投石機を作って欲しい」
「わかった、できるだけ作るよ。剣や槍も欲しいよね」
「うむ。一点突破で城まで攻め、皇帝を城から出せば勝利じゃ」
「案外簡単そうだね」
「難しいぞ、敵も一点集中で防御するからの。早くて3日はかかる想定じゃ」
3日か、思ったより長い。
「アドル翁の通り、神様には兵器の量産をお願いします」
ヴィダにそう言われ、僕は魔法の訓練していた所に向かった。
訓練所にはソルア達が居た。
僕はその近くで兵器の量産を始めた。
「おう神様。昨日は良かったぞ」
「ありがとう。魔法の調子はどうだい?」
「あぁ、今は少ないMPで強い魔法を打つ方法を探ってるんだ。これが結構楽しいようだ」
「省MP魔法か。多分、経験あるのみだよね。パラメータ表示で経験値も見れたよね?」
「あぁ。死にかけると早く経験値がたまるみたいだぜ」
死にかけるのが経験値効率がいいのか……。
そこで僕は閃いた。
武器を作る作業を止め、1辺が50mくらいの四角い巨大なハコを作った。
そのハコの中の空間に『明るい』『急速回復』『死なない』という設定を上書きした。
「ソルア、これの中に入ってみて」
「お、おう。オレの勘がヤバいって言ってるぜ……」
ソルアがハコの中心に来たあたりで、僕は後ろから槍でソルアの心臓を突き刺した。
槍を抜くとソルアの胸から血が大量に出てきたが、すぐに何事も無かったかのように治った。
「なんじゃこりゃあぁ」
「ハコの中を不死空間にした。ここで命がけの訓練をすればすぐ強くなれるはずだよ」
「そんなん有りかよ……」
これで兵の訓練も急速に出来るはずだ。
全ては明後日からの戦争のために――
現実世界に戻ると『なろう』の『寝る前5分は全知全能』が更新されていたので、最新話を読んだ。
今さっき自分の身に起きたことがそのまま書かれていた。
マンガを立ち読みしたこと、『寝る前5分は全知全能』を見つけたこと、開戦に向け準備したこと、不死空間を作ったこと……。
気味が悪い。
更新時間は22:00ちょうどなので、僕が異世界に行った瞬間に投稿されたということだ。
何が起きているのか、さっぱりわからなかった。




