5/7(火) <説教>
ゴールデンウィークが終わり、また学校の授業が始まった。
課外授業のせいで大型連休だったという感じがほぼ無い。
退屈な授業のあいだ、僕はタッセの街の事ばかり考えていた。
報復は、あれで良かったのだろうか……。
自分の中で結論が出ないまま、22時になった。
こちらに来ると、タラスが僕を待っていた。
「タラス、久しぶりだね。最近どうしてたの?」
「なんてことをしたのですか……」
タラスは僕の言葉に応えず、眉間にシワを寄せて睨んできた。
僕はタラスを怒らせるようなことをしただろうか。
帝国に潰されたこの村を復活させ、さらに報復に帝国の街を潰したのだ。
むしろ喜ばれてもいいくらいだ。
「どうしたの? そんな怖い顔して」
「タッセの街が壊滅したと聞きました。あの様なことが可能なのは、あなたしか居ません」
「神様、街を潰したの?」
ニャオが聞いてきた。
「あぁ。僕がタッセを全て破壊した」
「よくもあんな虐殺をして平然としていられる!」
タラスが凄い剣幕で僕に迫ってきた。
一瞬驚いてしまったが、僕もタラスを睨み返す。
「虐殺だなんて人聞きの悪い。『帝国を滅ぼせ』は村の願い、僕はそれを叶えたの」
「そんな過激な事を言っているのはごく一部だ。タッセに友を残してきた人もいるんですよ!」
「一部でも、願いは願いだ。叶える」
「……なら、一部の願いを叶えてください」
タラスは数歩下がり、座り込んだ。
そして頭を床につける。
「この村を復活させたように、タッセも復活させてください」
そうきたか……。
僕は言い返す言葉が思いつかなかった。
どうやったら僕を正当化できる……?
「タラス、自分が帝国に殺されたことを覚えてる口ぶりだね」
「……はい。二日前に帝国兵に襲われ死んだ後、あなたの力で蘇りました」
「僕はその報復をしたんだ。それのどこが悪い!」
「ですから! 報復は十分なのであの街を復活してください」
「……良いよ。でも復活させたあとまた潰すからね」
タラスは勢いよく顔を上げた。
驚いた顔をしていたが、徐々に怒りに変わっていった。
「あなたは間違っている。それでは悪神だ。邪神になりたいのか!」
「僕は唯一神だ、僕の言うことが正しいんだ。ニャオもそう思うだろ」
「私は……わからないです。報復に虐殺なんて……」
「何言ってんだニャオ。帝国に何されたかニャオは覚えていないのか?」
優しい声でニャオに語りかける。
だがニャオは嫌悪の顔で僕を見ていた。
「嫌だ、思い出したくない。神様のバカァ!」
ニャオは頭をおさえながら部屋から出ていった。
ニャオも自分が殺された時の様子を覚えているようだ。
ならなんで同意してくれない?
「彼女も気付いてるようですね。そんな報復は無意味だと……」
「うるさい!」
僕が手を横に振ると、タラスは壁に叩きつけられた。
タラスはぐったりとし動かなくなった。
「タラス……?」
近寄って様子を確かめる。
呼吸していない。
そ、そんな。殺すつもりは――
ちょうどそのタイミングで、ヴィダが部屋に入ってきた。
「神様、これは……?」
「タラスは神への反逆を示した。だから、天罰を与えた」
勢いで言い訳のように言ってしまった。
「タラスが……そうですか。では見せしめとして村の中央に晒しておきます」
「そこまでする必要は……いや、よろしく頼む――
タラスを殺してしまった。
帝国軍を倒したときや報復のときは感じなかった、人を殺したという感触があった。
いや、でもいざとなったらタラスを蘇らせることだって出来るはずだ。
タラスの怨霊が襲いに来るんじゃないかという恐怖を背筋に感じながら、僕は眠りについた。




