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5/3(金) <営み>

今日は課外授業のあと、母親の買い物に荷物持ちとして付き合わされた。

母親が店にいる間スマホで『なろう』を読み続けていた。

様々なチートスキルを持った主人公が上手くスキルを使いこなす様子は参考になる。

おそらく僕は、あの世界ではその全てのスキルを真似することが出来るはずだ。

次に帝国軍が来たときは、奴らに何をしてやろう……。

今日は何故か、いつものように暗くならなかった。

それどころか自分の部屋より明るい。

眩しくて閉じた目を少しずつ開ける。

ここは……昨日僕が作ったモダン建築の中のようだ。


「おかえりなさい、神様」


ニャオが後ろから飛びついてきた。


「あの地下室から皆で神様を椅子ごと運び出したんですよ。こうしたら良いってタラスが教えてくれたんです」

「へぇ、ちょっと驚いた。椅子はいつもの石の椅子だね」


そう言って、ニャオの髪を撫でた。


石の椅子が置かれているのが二階で、一階は人が集まり話し合いをしていた。

法律とか外交とか言っているので、国のこれからについての話だろうか。

新国家としてそういった話もしないといけないのか。

面倒そうだと思い、僕はそそくさと家の外へ出ていった。


家が出来たからか、村は以前より活気が溢れているように見える。

村に出て最初に目についたのは、簡単な楽器と草笛を演奏する音楽隊だ。

陽気な曲を奏でていて、人々がそこに集まっていた。


ニャオと二人で村を歩いていると、大きな麺棒を転がして何かを平らにしている人たちが目に入った。

気になったので近づいて見てみると、何か薄くて細長い板を組み合わせた物を押しつぶしていた。


「これはなんです?」

「おおっ、あなたは噂の神様ですね。これは紙の作り方を研究してるんです」

「紙?」

「この村に紙を作れる人が居ないので、有志達で試行錯誤して作っているんですよ。紙が無いと不便ですからね」


この世界では紙を自分で作らなくちゃならないのか。

でもこんな方法で紙が作れるのだろうか。


「ほら、紙なら僕が作るよ。これを使ったら良いよ」


僕はA4コピー用紙を大量に生成して彼らに渡した。

「こんな奇麗な紙、見たこと無い」と言って、紙を作っていた人たちは驚いた。


紙を作る人達と別れ、また村を歩く。

次に目に止まったのは服を売る屋台だ。

売っている服が3着しかないのが気になった。


「これは、服を売っているの?」

「か、神様。えぇ、呉服屋のつもりです」

「私、カワイイ服が欲しいです」


ニャオが横から口を挟んできたのでネコ耳を撫でてあげた。


「商品はこれだけ?」

「すみません。帝国からここへ来るとき持ってきた物だけで、新しい生地が作れないんです……」


ここもさっきと同じパターンだ。

技術が不足しているのに需要だけ大量に溢れているんだ。

ここでも布を大量に作って渡した。

素材は綿とポリエステルだと思う。


服屋に別れを告げた所で、ヴィダに呼び止められた。


「神様、探しましたよ。ひとつ、我々から頼みがあるんです」

「頼み?」

「はい、今は帝国の通貨を流用しているのですが、新国家としての通貨を発行して欲しいのです」

「いいよ、作る」

「ありがとうございます! デザイン案が有るんですよ。皆に募集して良いアイデアを混ぜました」


そう言ってヴィダは持っていた紙を開いて見せた。

その紙に書かれたデザイン通り、僕は僕の顔が書かれたコインをジャラジャラと生成した――


自分の顔が入った通貨だなんて、ちょっと恥ずかしい。

でもおかげで、あそこが僕の国なんだという実感が持てた。

それにしても、いざ地下室の外を見てみると、色々な発見があった。

政治をする人、紙を作る人、服を作る人。

文明とはああやって支えられてるものなのだろう。

『なろう』を数話読んでから、僕は眠りについた。

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