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第十三魔導武装学院  作者: 黒姫
第二章 固有武装暴走編
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第35話 挨拶回り・支援科

黒神くろがみ 刹那せつな

 黒髪の青年。心優しい性格と残忍な性格を併せ持つ二重人格者。

 八型一刀流の使い手で、どんな武器でも扱い。特に刀を使った白兵戦に突出しているが、魔法適性値が低く、胸の内ではその事で常に劣等感を抱いている。


ティア

 蒼白の長髪の少女。刹那の義妹。頭脳明晰だが口数が少なく、周りからは何を考えてるのか分からない不思議ちゃん。

 可憐な見た目に反して狙撃銃や大鎌などといった大型の武器を扱う。魔導兵器として育てられた時期があり、戦闘時には機械に並ぶほど冷徹無比な行動を取ることがある。


ステラ・スカーレット

 緋髪あかがみの少女。勝ち気で天邪鬼あまのじゃくな性格のツンデレ。

 魔導適性が高く、様々な得物や状況に対応して戦闘できるエリート。特に大剣と魔導を上手く合わせて白兵戦をこなす事を得意としている。

 自身の内に抱える弱さや我儘な部分を素直に出せる相手を密かに求めている。


小桜こさくら 風香ふうか

 緑髪の少女。礼儀正しく誰にでも敬語を使う真面目な性格。刹那達部隊の年長者で重心的存在。

 欠点と呼べるものがなくどんな武器でも扱う。特に双剣を使い好み、自身の速さを活かした手数で圧倒する戦闘が得意。

 礼儀正しい一方で、風紀委員長だった時の影響で基本的な問題解決方法が強引だったりするのが玉にきず


白神しらがみ 琥珀こはく

 白髪の長髪の少女。真面目で心優しく少し控え目な性格。

 刹那と同じく八型一刀流の使い手。小柄な見た目や謙虚な性格に反して、八型一刀流を用いた白兵戦闘がずば抜けて高く。他のエリートと張り合える程の実力を備えている。

 幼少期に神童と呼ばれていた刹那に対して強い憧れを抱いている。


アルウィン・エストレア

 特務科主席。紳士的で常に余裕を崩さない金髪の青年。

 あらゆる分野において成績優秀で、学業や戦闘でも数字付き学院(ナンバーズ)最強と謳われ誰もがそれを認めるほど。

 人当たりも良く、そのカリスマ性の高さから十三校全体の取り纏め役をも担っている。


常盤ときわ 文乃ふみの

 支援科一員。明るく人懐っこい少女。

 誰とでも打ち解ける社交性を持つ一方、機械や武装の話になると周囲が見えなくなるほど熱中する技術オタク気質の持ち主。場の空気を和ませるムードメーカー。


ひいらぎかなで

 通信科一員。物静かで理知的な少女。

 透き通るような澄んだ声の持ち主でその人気は絶大。通信科のオペレーターとして情報伝達や作戦管制を担う。


新規登場人物


雨宮あめみや創真そうま

 支援科主席。気さくで気風きっぷの良い青年。

 雨宮重工の御曹司で、機械弄りや物作りが好きなエンジニア。武器や家、乗り物等を一から造り上げる程の知識と技術力を持っている。


東雲しののめ志那之しなの

 支援科副席。寡黙で澄ました雰囲気を纏う少女。

 東雲グループの御令嬢で少々人見知り。物作りの腕もることながら整備も得意とし、どんな物でも完璧に整備を仕上げる。


たかき慎也しんや

 支援科書記会計。物腰柔らかな青年。

 エンジニアとして豊富な知識と経験を持っており、面倒見が良く周囲への気配り欠かさない頼れる存在。


崩谷つえたに雪兎ゆきと

 支援科一員。とてもとても不思議な言動をするちょっとへんな青年。

 言動は自由気ままでふざけているが、協調性があり気配りもできて、意外と根は真面目。


暮無くれないみこと

 支援科一員。特殊な障害を抱えた少女。

 障害により幼児のように無邪気で天真爛漫な行動をする。元来は粗暴だが職人気質で自他共に厳しいストイックな面を持つ人。

 長い通学路を歩き、ようやく十三校へと着いた刹那達。

 一行はⅦ組特務科の教室となった旧Fクラスの教室へと到着した。


「おはよう」


 扉を開けて入るやいなや、颯爽とした挨拶が掛かってくる。

 声が聞こえた教壇の方を見ると、そこにはアルウィンの姿があり、アルウィンは教壇の端末で何かを打ち込んでいるようだった。


「「おはようございます」」

「おはよう」

「……おはよ」


 全員、アルウィンに軽い挨拶を済まして各々(おのおの)適当に空いている席に着く。

 教室には刹那達とアルウィン以外にはおらず、登校しているⅦ組の人はまだいないようだった。


「今日から新しい学生生活で、気を張って来たところを水差すようで悪いんだけど、教官達の講座は午後からだよ?」


「ええ、それは既に確認してあります」


 教壇にある端末のコンソールを叩きながらアルウィンは今日の日程の事を問い、それに対して風香が承知であると答えた。


「ならその話は大丈夫だね。それで君達13(イチサン)(エー)部隊には、午前の間に各科の主席達に会いに行って欲しいんだ」


「それ、必要なこと?」


 アルウィンの口から出てきた部隊の名称が刹那は気になったが、それを尋ねるより先にステラが各科への挨拶周りに異を唱えた事によって聞けず仕舞いになってしまう。


「じゃあ聞くけど、各科の主席の名前は言えるかい?」


 主席。各科のリーダーと言えば分かりやすいだろうか。

 各科の代表者を決めての意志決定や、内外ないがいの連絡を円滑にする為の存在。要はの取り纏め役である。

 そして主席は補佐役として副席を選ぶ事ができる。

 特務科で言えば主席はアルウィン、副席は紅司である。

 聞いた話では、ごとに主席と副席の選出は異なったらしく、ないで一番強い者、成績が良かった者、人柄で選ばれた者など、様々な理由で選ばれているらしい。


「勿論よ。Ⅰ組強襲(きょうしゅう)主席、戸破ひばり健護けんご。Ⅱ組魔導(まどう)主席、シャオ雨刀ユーフェン…」


「Ⅲ組の防衛(ぼうえい)主席は早見はやみかおるさん。Ⅳ組の医療(いりょう)主席は初瀬辺はせべ深雪みゆきさん…」


「えっと、Ⅴ組支援(しえん)主席、雨宮あめみや創真そうまさんに、Ⅵ組通信(つうしん)主席、シキさん…」


「……Ⅶ組特務(とくむ)主席、アルウィン・エストレア……」


 ステラ、風香、琥珀、ティアがそれぞれの主席の名前を言う。

 勿論、刹那も主席の人達の名前は全員把握している。


「じゃあ彼らの人柄は?」


「…流石にそこまでは知らないわよ」


 笑顔でアルウィンからの意地の悪い問いが来て、投げやり気味に折れてしまったステラ。

 おそらく、知ってて答えても今度は「副席は?」という質問が飛んでくるのを悟ったのだろう。

 どうやらアルウィンは刹那達にどうしても各科への挨拶周りに行かせたいようだ。


「今後の為にも各科の主席と会っておけ。と言うわけですね」


「そう。出来れば副席と科の雰囲気なんかも知ってきてくれると良いね。もう既に彼らには連絡してあるから会って欲しいんだ。勿論、会いに行くのは君達13(イチサン)(エー)だけじゃないけどね」


「あの、そのさっきから言ってる13(イチサン)(エー)って言うのは僕達の事ですか?」


「そうだよ。第十三魔導武装学院(エー)部隊、通称13(イチサン)(エー)。何か気に入らなかったかな?」


「いえ、その(エー)というのは…」


「単なる記号だよ。能力の格付けや(エース)といった意味じゃあない。Aなのは、ただ君達がこの学院で目の部隊というだけさ。これで納得してくれるかな?」


「…はい」


 一番という言葉が妙に強調されていたのは、自分の気にしすぎだろうと刹那は自分に言い聞かせ、アルウィンの隙のない建前に、不承不承ながら返事をする。


「それでは行きましょうか」


「「了解」」


「頼んだよ。我らが十三校一の精鋭部隊、13(イチサン)(エー)


 去り際にアルウィンが放った言葉に、やっぱりじゃないかと言いたくなったが、それ以上は言う事もせず、刹那達はアルウィンに見送られ、教室を後にしたのだった。


□□□


 アルウィンの頼みを受けてから、まず刹那達が訪れたのは支援科の格納庫ガレージだった。


 Ⅴ組である支援科から先に来たのには、ちゃんとした理由がある。

 教室でアルウィンと話したように、講義は午後からなので各クラスの出席者はまだまばらだが、支援科の学生達はずっと格納庫ガレージで作業をしているからである。


『オーライ!オーライ!』

『おーい!この強化ガラスはどこ持っていくんだ?』

『誰だ!ここに資材置いたのは!!』

『誰か私の工具見なかった?』

『おい康汰こうたぁ!足場で筋トレすんなー!』

『手伝ってるからちょっとくらいいいだろー!』

『いい訳あるかぁ!!てかいい加減、強襲科に帰れよお前!』


 しかし格納庫ガレージの中は想像以上に騒々しく、学生達が何かを製造していたり、荷物の運搬などでせわしなく動き回っていて、訪れた刹那達を気に留める学生がいなかった。

 そしてとてもじゃないが、誰かを捕まえて声を掛けられるような雰囲気でもなかった。


「……人、いっぱい」


「すごい喧騒ね」


「ちょっと話しかけられる雰囲気じゃありませんね…」


 場の雰囲気に圧倒されて呆然としていると、一人周りを見渡していた風香が静かに指を差した。


「あの人に声を掛けてみましょうか」


 風香が指を差したのは、並べられた資材のそばで端末を持って立っている青年だった。

 彼の元には人波が来ては資材を持ち去っていて。よく見ると学生達に指示を出しているようだった。

 おそらく彼は現場監督を行っているのだろう。そう言った人間は立場が高い。つまり支援科の主席であると推察できる。


流石さすが風香、よく見てる」


「目が良いので」


 見つけてくれた風香を褒めて、早速向かう。

 風香が周りを見ていなかったら、刹那はそこらにいる学生に手当たり次第、声を掛けて聞き込みをするところだった。

 丁度、指示を出している青年から人波が減ってきていたので、声を掛けられそうだった。


「この箱は購買部の方に、こっちは中身が医療用品だから医療科の方に届けて来て」


「のじゃ!」( `・д・´)ゞ


「のだ~!」( *≧∇≦)ゞ


 いま物凄くコミカルな言動をする人達が荷物を持って走り去って行ったが、気を取り直して声を掛ける。


「あのー、すみません。ちょっと良いですか?」


「ん?君は……俺に何か用かな?」


 穏やかそうな青年は、刹那達を見て何かを察した様子で丁寧に対応してくれる。


「特務科の黒神くろがみ刹那せつなって言うんですけど、支援科の主席の人に挨拶しに来まして…」


 刹那の事は順位戦で、全校生徒に知れ渡っているはずだが、礼儀として自己紹介しつつ要件を言う。


「うん、話はそれとなく聞いてるよ。ちょっと待っててね」


 青年は知っていたような素振りで刹那の話に答えると、明後日の方角に目を向けて大きく息を吸った。


「おーい!みゃーくーん!!」


「ぁん!?なんすかー!シンさん!」


 青年が大きな声で呼び掛けると。格納庫内の一角にある車両から、一人の青年が顔を出して返事をしてきた。


「お客さんだよー!」


「いまいいところなんだ!ちょっと待たせてくれ!」


 顔を出した青年。もとい雨宮あめみや創真そうまは、取りつく島もない様子で車両内に体を引っ込めていった。


「ごめんね。みゃー君、集中すると中々手を離さなくてさ、少し待って貰えるかい?」


「大丈夫です。それより、みゃー君。って雨宮さんの事ですよね?てっきり僕は貴方が主席の雨宮さんかと思ってました」


 気まずくなったのか苦笑いをする青年に、刹那は率直な感想を述べて話題転換をはかる。


「ああ、ごめんごめん。自己紹介が遅れたね。俺は慎也しんやたかき慎也しんやだ。よろしくね、くろ君」


くろ…君?」


 慎也にいきなりフランクな呼び方をされて刹那は戸惑ってしまう。


「ああごめんよ。支援科ここのみんなは大体あだ名で呼びあってるから、ついね」


「いえ、親しみがあっていいと思います。ええと…」


 あまりされない呼ばれ方に驚いて、刹那は慎也しんやの名前が頭から飛んで言い淀んでしまう。


たかき慎也しんや。分かるよ、俺も人の名前を覚えるのが苦手でさ。だから大体あだ名呼びなんだ。俺もみんなからいろんな呼ばれ方されるけど、よく『シン』って呼ばれてるから、よければそっちで呼んでよ」


「ではそちらのほうで呼ばせて貰います。ところで、シンさんは支援科こちらの副席なんですか?」


「ん?ああいや、違うよ。支援科ここの副席は…」


 慎也が否定したところで、丁度そこに凛と澄ました雰囲気を纏った女の子が慎也の所にやってきた。


慎也しんやさん、雨宮あめみや君は?」


 彼女は主席の雨宮あめみや創真そうまを探しているようで、横にいる刹那達に目もくれず慎也しんやに居場所を尋ねる。


「みゃー君はあっちで車両整備してるよ。と、丁度良いところに。彼女が支援科ここの副席さ」


 尋ねに来た女の子に教えつつ、慎也は女の子の事を刹那達に紹介しはじめた。

 そこでようやく女の子は刹那達を見る。


「初めまして。特務科所属、13(イチサン)(エー)部隊の黒神くろがみ刹那せつなです」


 失礼のないよう気を付けつつ、自分の名前と先程覚えたばかりの部隊名を添えて自己紹介をする。


「…初めまして。支援科副席の東雲しののめ志那之しなの。よろしく…」

 

 しかし志那之しなのは簡単な自己紹介だけをすると、創真が整備している車両の方へと踵を返して行く。


「何よあの子、ちょっとないんじゃない?」


「ごめんね。志那之しなのさん人見知りするタイプみたいでさ。慣れない相手にはあんな感じだけど、良い人だし本人にも悪気はないから許して欲しいな」


 志那之しなのの態度にステラが憤慨ふんがいにじませるが、慎也が苦笑いしながら彼女のフォローを入れる。


「気にしてませんよ。知り合いにも素直になれない人がいて、こういった事には慣れてますから」


「なっ!」


 刹那が慎也のフォローを入れると、特に誰とは言ってないのにステラが動揺をして消沈する。どうやらステラの怒りを沈めるのに効果覿面こうかてきめんだったようだ。


「うーん、人見知りとあま邪鬼じゃくはまた違うと思うんだけど…。素っ気ないという点は一緒なのかな?」


 慎也は刹那の言ったことに少し疑問を呈しながらも、これ以上言うのは野暮と思ったのか、そこまでにして終わった。


「おや!刹那さん達じゃないですか~!」


 そうして他愛のない話をしていると、刹那達の後ろから誰かが声を掛けてきた。

 振り返ってみるとやってきたのは文乃だった。


「文乃さん!支援科にいたんですね」


「はい!支援科こちらの方が私に合っていると思いましたので!」


 屈託のない笑顔で話す文乃を見て、彼女は何処であろうと上手くやっていけそうだと改めて思う。


「刹那さん達はどうして支援科こちらに?」


「ああ、それはね……」


 刹那達の訪問の理由を知らない文乃は興味津々に尋ねて来たが、その説明を慎也が刹那達の代わりに掻い摘まんでしてくれた。


「確かに。これから同じ学院で過ごす者同士、顔合わせはしておかないとですね」


「うん。俺達もそれぞれ時間を作って、他科の所に挨拶しに行かないとね」


 慎也の説明を聞いて納得した様子の文乃。慎也もそれに見習うつもりようで、支援科の内での挨拶回りの段取りと調整の計画をし始めるようだった。


「少し聞きたいのだけど、支援科ってどんな学科なの?なんか色々やってるみたいだけど、何をする学科なのかイマイチ分かんないのよね」


「……てるず、あす」


 支援科について問うステラとそれに便乗するティア。それは刹那達部隊の全員が思っていた事でもあった。

 そしてその問いに文乃が待ってましたと言わんばかりに胸を張って答え始めた。


「よくぞ聞いてくれました!我ら支援科は……何でしたっけ?」


「「ガクッ!!」」


 肝心な所を忘れた文乃に、その場の全員が肩透かしを食らう。


「文乃さん。そこは俺達にとって大事なところなんだから、しっかり決めてくれないと…」


「いや~すみませんちょっとド忘れしちゃって。慎也さん代わりにお願いしてもいいですか?」


「仕方ないなぁ…」


 そんな文乃に慎也がツッコミを入れると、結局思い出せなかった彼女は支援科の紹介を慎也に譲ると、慎也は仕方なさそうに頭を掻いた。


「"我ら支援科は、他科への人的支援のみならず。その技術力をもって、如何いかなる局地きょくち局面きょくめんにおいても、盤石ばんじゃく拠点きょてん移送いそう手段しゅだんを作り、他科への支援を行う事を信条とする"だね」


 支援科の全員で話し合って作ったであろう理念スローガンを、慎也はしっかりと言い切って場を締めた。


「ま、堅苦しい御託ごたくを抜くと。要は、俺達は作って他科の支援をする。って事だな」


 慎也が言った内容を要約するように言って刹那達の後ろからやってきたのは、さっきまで車両の整備をしていた雨宮あめみや創真そうまと、東雲しののめ志那之しなのだった。


「よっ!黒神。俺が支援科主席(リーダー)雨宮あめみや創真そうまだ。よろしくな!」


「特務科13(イチサン)(エー)部隊の黒神刹那です。よろしくお願いします。雨宮さん」


「創真で良いぜ」


 創真が気さくな挨拶と共に、手を差し出して握手を求めてきたので。刹那も自己紹介しながら握手を交わす、創真はこちらの部隊全員に握手を交わし終わってから口を開いた。


「さっきも言ったが、俺ら支援科は作る事がメインだ。人員が足りてねぇ他科のすけに入ることもあるだろうが、基本はサポートだって事を覚えてくれてりゃいいぜ!」


「…雨宮君の説明を補足すると、私達がするのは主に"供給"。今は学校に居て、周りに街があって自由に動けるけど、戦地におもむけばそうはいかない。雨風を凌げる住居に生き抜く上で不可欠な食料、移動時に必要な足。必要な時にそういった物を揃えるのが支援科の役割」


「ふーん」


 志那之の説明にステラは納得したようだが、さっきの事があってか、気のない返事をする。


「そういえば確か、黒神は個性武装ユニークウェポン持ってたよな?整備は勿論、なんか新しいもんつくろうっときは気軽に俺に言いな。手伝ってやるぜ!」


「…雨宮君、貴方はたださえ忙しいんだから自分から仕事増やさないで」


「気にしない気にしない。俺達は常に働いてナンボだろ」


 志那之の注意をさらりと軽く受け流す創真。

 創真の申し出は刹那にとって有難い話だが、いまの所そのような予定はないので、頼るのは学院生活にみんなが慣れてからになるだろう。


「あの~刹那さん、もし良ければですけど~、その~…」


 創真と志那之の問答を見てそんな事を考えていると、不意に猫なで声で文乃が声を掛けてくる。

 言いよどんでいて、彼女が何を言おうとしているのか分からなかったが、会話の流れから辛うじてその意図を汲むことができた刹那は、虚空から剣銃ガンブレードを取り出す。


「もしかして、これ?」


「はい!!」


 刹那の剣銃ガンブレードを見た瞬間、文乃が目を輝かせて舞い上がるが如く返事をする。

 祝勝会の時の、境の個性武装ユニークウェポンを見た時の入れ込み具合を覚えていなければ、分からなかったが、どうやら当たりだったようだ。

 文乃のあまりのテンションの上がり方に引きつつも、刹那は出した剣銃ガンブレードを彼女に渡す。


「ふおぉぉ!!」


 手に取った剣銃ガンブレードを見て、興奮の余り変な声を上げ始める文乃。

 もはや周りが見えている様子では無かった。


「この無駄のない洗練されたフォルム!まず目に付くのはこの切り詰めた銃身!銃身と呼べる部分はほとんど無く、一見銃のグリップと剣が繋がっただけのようですが、この剣銃ガンブレードは斬る瞬間に射撃時の衝撃を加えて威力を増すといったコンセプトで、銃身を切り詰めるのは当然ですね!そしてこのグリップ!射撃機構が無い分、斬撃に特化させる為に剣として握りやすさと斬りやすさを追及した厚みと角度!それに加え、暴発する危険性はありますが、人差し指が掛かるトリガーを敢えて浅くして、強く握って振れるようにされてます!しかも!銃の機構は回転式リボルバーではなく自動式オートマチック!これは戦闘中でも再装填リロードの回数を減らす為!美学ロマンより合理ラショナル!くぅ~!まさに機能美の塊!」


 熱くなって、誰に何の解説しているのか分からない一人語りをしているが、周りのみんなはドン引きであった。


「しかもこの刻印!ガーネット社のリリー・モデル!特注品オーダーメイド製じゃないですか!この機能美と合理性も納得です!」


「リリー・モデル?」


 文乃の口から刹那も聞いたことのない名称を聞いて、銃剣ガンブレードを見ながら復唱する。

 刹那の記憶では確か、銃身にあたる部分に、槍の様に見える刻印があったと覚えているが、文乃が指しているのはそれの事らしい。


「ガーネット社の名工マイスター。リリー・ホワイトが手掛けた製品の事です!知らないんですか!?」


 目を爛々(らんらん)とさせて詰め寄ってくる文乃に圧倒されそうになるが、刹那は平静を装いながら剣銃を手に入れた経緯を思い出す。


「知らないなぁ。確か五、六年前に個性武装ユニークウェポンを作ってくれる企業に依頼して、つくって貰ったものだからね」


「五、六年前!?ガーネット社が軍需産業に参入したのは五年前ですよ!まさかこれがリリーの処女作!?ふおぉぉぉ!」


 刹那の話を聞いて、勝手な想像から更に興奮する文乃。

 このまま興奮が頂点に達して爆発してしまうのではないかと思うくらいのテンションであった。


「いい加減落ち着け常盤ときわ。俺もだが、それ以上にみんな引いてるぞ」


「はッ!すみません、つい夢中になってしまって…」


 興奮して手の付けようが無くなっていた文乃を創真が軽くたしなめると、文乃は落ち着きを取り戻し、自分の行動を恥じ入るように顔を赤らめながら、刹那に剣銃ガンブレードを返してきた。


「見せていただいてありがとうございました」


「どういたしまして」


 萎縮する文乃を気遣いながら刹那は剣銃ガンブレードを受け取って虚空に仕舞う。


「悪いな。常盤ときわは夢中になるといつもこんな感じだからよ」


「周りを気にしなくなるという点においては、作業中のみゃー君も同じでは?」


「…言えてる」


「俺は誰にも迷惑かけてないだろうが!」


 慎也と志那之の冗談に創真がツッコんで、少々気まずかった場の雰囲気が和む。

 雰囲気が和んだ所を狙っていたか否か、そこへ二人の生徒が一団の中に乱入してきた。

 二人は慎也に声を掛ける時にすれ違った珍妙な生徒だった。


「のじゃ!」( `・д・´)ゞ

 

 男子生徒は凛々しい顔して敬礼をし、まるで任務遂行してきました。と言わんばかりの表情をしていた。


「のだ~!」(\*≧∇≦)/


 一方、もう一人の女子生徒の方はやけにテンションが高く、ファンキーな見た目とは裏腹に天真爛漫な子供の様に楽しそうにしていた。


「な、何よこの二人…」


 キャラの濃い二人の突然な乱入に刹那達は困惑するが、慎也が二人の前に出て対応する。


「配達ありがとうラヴィ君、みことさん。紹介するよ。こっちはラヴィ君、みんなはラヴィって呼んでる。見ての通りちょっと変わってるけど、意外と真面目でイイ子だよ」


「のじゃ!?」Σ(゜ω゜)


 慎也の紹介の仕方にショックを受けたのか、ラヴィと呼ばれた生徒は物凄く心外そうな顔をしていた。


「本名は崩谷つえたに…」


「ラヴィ!」( `・д・´)


 創真そうまが彼の本名を言おうとして、彼は大きな声で叫んでそれを阻止し始める。


ゆき…」


「ラヴィ!!」( `・д・´)


「らびー!」(*≧∇≦)


「……」


 再度、創真そうまが名前の方を言おうとしてまた大声を出すと、女の子の方も乗っかるように声を出し始める。


「ラヴィ君。話進まなくなるから諦めよっか?」


「むぅ…」(ーωー)


 埒が空かないと判断した慎也が仲裁に入り、彼はようやく引き下がった。


「こいつの名前は崩谷つえたに雪兎ゆきと。なんか知らんが名前で呼ばれるのを嫌がるから、みんなラヴィーネって呼んでる」


「な、なるほど」


 さっきのやり取りは、本名を言うな、あだ名で紹介しろ。という圧だったのかと理解する。


「俺と同学年で、十校出身みたいなんだが、こんなちんちくりんなヤツ見た覚えがねぇんだよな。いままで猫かぶってたのか、十三校ここに来てキャラ作ってんのかは知らねぇ」


「ニャーン!」(=゜ω゜=)


「はぁ…」


 創真の補足に猫の鳴き真似をしながらふざけ始める雪兎ゆきと。それを見て創真は少々呆れたように溜め息をついた。

 慎也が始めに言った"意外と真面目"という話が嘘のように思えるが、おそらく人前では常にこういう感じなのだろう。と刹那は思う事にする。


「それで、こちらの方は?」


「…この人は暮無くれないみことさん。障害を抱えてるけど、邪険にしないであげて」


「ぱぁ~!」\(*^∇^*)/


 志那之からの紹介を受けてみことは両手を上げて元気一杯なアピールをする。志那之の言う通り、言動から彼女が障害を抱えているのが窺えた。


暮無くれないみこと……どこかで聞いた名前のような…」


「のじゃじゃじゃ~!」三\ ゜∀゜)/


「のだだだ~!」三\*≧∀≦)/


 みことの名前を聞いて何かを思い出そうとする風香を余所よそに。当のみことはじっとする事に飽きたのか、一団の周りで雪兎ゆきとと追いかけっこを始める。


「あの~失礼かもしれませんが、みことさんは高次こうじのう機能きのう障害でしょうか?」


「難しい言葉をよく知ってるね。そう、みことさんは高次こうじのう機能きのう障害。所謂いわゆる知的障害さ」


 走り回る二人を見ながら、琥珀が日常生活ではまず聞かない用語で聞いた事に慎也は感心を深めつつ補足し始めた。


みことさんは二年前の事故でこうなったんだ。とは言っても、俺らも記事でしか知らない話だけどな…」


「二年前…。思い出しました!確か彼女はプロレーサーで、レース中の事故で大怪我をしたとニュースで見た記憶があります」


「そうそれ。その時の後遺症でこうなったみたいなんだが……」


 と創真が言い掛けた所でみことつまずき、受け身を取る事もなく、傍らにあった荷物の山に顔面から突っ込んで行った。


「「あ…」」


 悪いことに、その荷物は見るからに堅そうな金属製の箱で、荷物の山が崩れ落ちる事は無かったが、代わりに周囲に鈍い音が響き渡る。

 そしてみことはズルズルと顔を箱に引きりながら突っ伏し、微動だにしなくなった。


「だ、だ、だ大丈夫ですか!?」


「すぐに救急を!」


「待て!近寄るな!」


 悲惨な状況に琥珀は慌て、風香は迅速に救護しようとするも、両手を広げて創真がそれを静止させる。


「何で止めるのよ!?」


「いや、ほんの少しでいいから待ってくれ」


 創真の制止をステラが咎めたが、少しも待つことなくみことは手を地について、ゆらりと体を起こし始めた。


「ラ~~ヴィ~~ネ~~~!!」


「のじゃ!?」Σ(゜ω゜)


 無事だったと安堵したのも束の間、彼女は怒気を含めた声で雪兎ゆきとをあだ名で呼ぶと、目にも止まらない速さで彼に襲い掛かっていった。


「アタシ言ったよなァ!釣られるから走り回るなって!テメェの頭はミジンコかァ!?エェ!!」


「のじゃのじゃのじゃ!?」(゜Д゜ 三 ゜Д゜)


 雪兎の制服を掴み、激しく揺さぶるみこと。首が取れるんじゃないかと思う勢いで揺さぶっていて心配になるが、誰もみことを止めないまま、そっと刹那達に慎也が近付いて口を開く。


「みゃー君が言いそびれてしまったけど、あれが本来の彼女だよ」


 慎也の言う通り、さっきまでの無邪気でほのぼのとした雰囲気とは全く異なり、粗暴できびしそうな印象を受ける人だった。


「詳しい事は忘れたが、とにかく頭を強く打つと元に戻るんだと…」


「な、なるほど?」


 頭を打っただけで治るなどという、創真の端折はしょった説明にそんな事があり得るのかと納得しかねるが、実際にそうなっているので納得せざるを得なかった。


「ったく、ふざけやがって…」


「きゅぅ~」( ×A×)


 そしてみことは雪兎への折檻せっかん、もとい説教が済んだようで彼を放す。激しく揺さぶられて酔ったのか雪兎はその場で倒れて伸びてしまった。


「何見てんだ文句あんのか?」


「いえ、ナンデモアリマセン…」


 その様子を眺めていたのが彼女に良く思われなかったようで、いきなり喧嘩を吹っ掛けられてしまうが、彼女の琴線ことせんに触れないよう刹那は目を逸らし、当たり障りない返答をする。

 みことがとても怖い人という事は分かったが、そのせいで場が完全な静寂に包まれてしまう。


「うっ!」


 彼女との会話で、何を話題にしようかと思案したのもつかの間、みことは苦しそうな呻き声を出し、頭を抱えてうずくまった。


「ぱぁ~!」(*・∇・*)


 そして次の瞬間、さっきまでの粗暴で厳しそうな雰囲気が消えて純心無垢な顔つきになった。


「元に…戻った?」


「……不思議」


「のだ?」(*・ω・ *)


 刹那達高等組が思った感想をそのまま口にしてくれた琥珀とティアに、何も理解していなさそうな顔をするみこと

 彼女は横で伸びている雪兎を見つけ、しゃがんでつつき始める。


「まあ、元に戻ると言ってもそんな長くねぇんだ。打ち所に依っちゃ今みたいに数分くらいの事もありゃ、半日近くいる事もある。はぁ……高次脳機能障害こんなんじゃなけりゃ、主席リーダーに向いてるんだけどな…」


 雪兎をつつくみことを見ながら、創真は小さく呟いた。

 その言葉を聞いて風香が創真達へと問い掛ける。


「そう言えば、各科で主席の選出基準が異なったと聞きましたが、支援科こちらではどのような基準で?」


「基準なんてねぇよ、だ~れもやりたがらなかっただけだ」


「そんな嫌味ったらしく言わないでよみゃー君」


「…まあ、本当の事だし」


「志那之さんまで…」


 風香の問いに創真と志那之が答えるが、二人の返答に慎也はばつの悪そうに苦笑いしていた。


「決まった事に口出しする気はないけれど、私から見て、慎也の方が主席リーダーに適任って感じるけど、そうはならなかったのかしら?」


「「……」」


 ステラの問い掛けが地雷だったのか、支援科組の間で謎の沈黙が走る。


「私変な事言ったかしら?」

 

 気まずい雰囲気を作ってしまったステラは困惑を色を示す。

 そしてその沈黙を先に破ったのは文乃だった。


「そーいえば、支援科の拠点として格納庫ここを作ろうって言ったのは、慎也さんでしたね」


 何故か棒読みに近い話し方をする文乃。


「俺は案を出しただけで決めたのはみんなでだ。それに実際に学院長に話を通して許可を取ったのは志那之さんだし、その為の資材の手配をしたのはみゃー君さ」


 そんな彼女に慎也は謙遜気味に言葉を返す。


「…確か慎也さん、十二校でも設計と開発の成績が上位だったとか聞いたけど?」


「成績なんて実際に現場に立てば役に立たない事の方が多い。十三校ここでは俺よりみんなの方が場数の踏んでて優秀さ」


「とか何とか言って、なんだかんだ影でみんなをフォローしたり纏めてたりしてるしさ。シンさんが主席リーダーなってくれた方が、俺としては助かるんだけどな」


「前に話したけど。みゃー君は現場監督の経験あるし、俺より知識も技術力あってみんなから慕われている。現場の士気を上げる意味でも、主席はみゃー君の方がいいのさ。そもそもみんなを引っ張っていく、なんて俺のがらじゃないしね」


 文乃、志那之、創真の三人から出される慎也の貢献度や功績の一つ一つを、慎也はのらりくらりとかわして返していった。


「なるほど、そういう事でしたか」


 三人が敢えて聞かせるように話した一連の会話を聞いて、刹那達一行は状況を理解した。


「見て通り、シンさんがいつまでも経っても絶対に首を縦に振らないから、仕方なく俺がなったって訳」


 慎也を横目で見ながら創真は嫌味っぽく話す。


「人聞きの悪いことを…代わりに誰もしない見積書の作成と資材管理をしているだろう?」


「そりゃ助かるけどさ…。ま、既に決まったもんにあーだこーだ言っても仕方ねぇしな。好きなようにやらせてもらうさ」


 慎也に物言いたげな創真だったが、すぐに割り切った様子であっけらかんとする。

 刹那達はそこに彼の気風の良さを感じ、何故彼が主席になったか分かった気がした。


「あの~すみません。倒れている方がいらっしゃるのですが、この方は大丈夫なのでしょうか?」


 不意に声を掛けられて、一団の注目が集まる。

 そこにやってきたのは奏であった。

 状況を知らない奏は、伸びたままの雪兎を心配そう見ていた。


「ん?ああ、そいつは放っといても大丈夫だ。気にしないでくれ。それより支援科おれらに何か用か?」


「いえ、用というより登校途中に文乃さんから連絡があって、訪ねて来た次第なんですが…」


 そういって文乃を見る奏。

 それによって全員の注目が一気に文乃へ集まる。


「はい!刹那さん達が挨拶回りをしてると聞いたので、奏さんに通信科まで刹那さん達を案内して貰おうと思って、勝手ながら連絡をしました!」


「ああ、なるほど。呼ばれたのはそういう事でしたか」


 洞察力の鋭い奏は、文乃の説明を聞いて全部納得したようだった。


「刹那さん。挨拶も済ませましたし、ここは失礼させて頂きましょうか」


「そうだね。そろそろ行こうか」


 文乃の厚意で奏が来たので、風香が支援科を離れる事を提案し、刹那もそれに同意する。


「もう行くのか?」


「はい。奏さんも来ましたし、これ以上邪魔しちゃ悪いですから」


「何か入り用があったらいつでも支援科に来てね」


「そうさせて貰うわ。それじゃあね」


 そういって刹那達は支援科の面々に別れの言葉を掛け、奏に付いて支援科を後にした。

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