表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハズレと笑われた『罠』スキルの俺、実は超激レアな最強スキルでした  作者: シマリス


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
62/115

出力二倍

ジャイアントウルフの巨躯が爆発的な勢いで床を蹴った。


地鳴りのような足音が響き、視界のすべてが灰色の影に覆われようとしたその瞬間、床に仕掛けられた魔素の蔦が跳ね上がった。


「いけ!『スネア』」


悠太の声に応えるように、オートアジャスト機能とサイズ調節をフル稼働させた蔦が、巨狼の前脚をガッシリとホールドする。並の魔物ならこのまま引き倒されるところだが、相手はフロアキーパー。


「ガアァァァァッ!」


ウルフが力任せに脚を振り抜く。強靭な筋肉の隆起に合わせて、魔素の蔦がガシャガシャと耳障りな悲鳴を上げた。構築された構造が歪み、火花のような魔素が散る。


(頼む。少しでも長くもってくれ!)


悠太はその隙にシューズの性能をフルに引き出し、横方向へ全速力で駆け抜けた。

予想通り、十秒と持たずにスネアは粉砕されたが、巨狼は一度失った慣性と砂煙のせいで、標的である悠太を一時的に見失った。


しばし鼻を鳴らし、殺気とともに辺りを伺っていたウルフだったが、柱の影に潜んでいた悠太をすぐさま発見する。再び、逃げ場のない突進。悠太は息を乱しながらも、あらかじめ設置しておいた「次の罠」へと誘導する。


バゴン!という凄まじい衝撃音とともに、地面が跳ね上がった。


四メートルを超える巨体が乗ったバネ床が限界までしなり、反発する。

相手の力量が勝り、吹き飛ばすまでには至らなかったものの、跳ね上がった床のプレートが一時的に「壁」として立ちはだかったことで、ウルフの突進を強制的に停止させた。


「はぁ、はぁ……っ!」


悠太は壁の向こう側で息を整え、左右に細かく動きを変える。壁を挟んだ、命懸けのかくれんぼ。


ウルフは苛立ちを露わにし、前脚で壁を叩き壊そうとするが、そのやり取りの最中に視界の端のカウントダウンがゼロを指した。


「完成だ。いけ!『ウッルの目』」


悠太が壁の端からスッと姿を晒した瞬間、広場のあちこちに張り巡らされた「瞳」たちが一斉に見開かれた。


無音の銃撃。


魔素消費160、通常火力の二倍に設定された不可視の弾丸が、四方八方からジャイアントウルフへと殺到する。空気を引き裂く波導の嵐。

しかし、悠太は直後に目にした光景に言葉を失った。


「なっ! えっ!?」


ジャイアントウルフは逃げる素振りすら見せなかった。


巨狼は即座にその場に低くうずくまって体を丸め、鋼のような灰色の毛を全身に逆立てたのだ。それは、毛の一本一本に魔素を巡らせた、物理と魔力の両面に対する絶対防御態勢だった。


シュパパパン! と魔素弾が弾ける音だけが虚しく響く。


二倍に跳ね上げたはずの銃撃は、逆立った硬質の毛に触れた瞬間に霧散し、皮膚に届く前に威力を削がれている。致命傷どころか、有効なダメージすら与えられている実感が湧かない。


『ウッルの目』の発動時間である四分。


その間、ジャイアントウルフは一歩も動かなかった。瞳から放たれる執拗な連射を、ただ静かにじっと耐え続けている。まるで、この嵐に終わりがあることを最初から理解しているかのように。


そして、ついに銃撃の波が止んだ。


魔素の瞳が一つ、また一つと霧に溶けて消え、広場に不気味なほどの静寂が戻る。


沈黙の中、ウルフがゆっくりと、その巨体を持ち上げた。


逆立っていた毛が元のしなやかな毛並みに戻り、そこには傷一つない王の姿があった。


「バケモンかよ…」


一番の切り札。魔素を二倍まで注ぎ込み、レベルアップで強化したはずのスキルが、完全に無効化された。


期待が大きかった分、目の前の現実に悠太の思考が白く染まる。


立ち上がったジャイアントウルフが、低く、深く、地を這うような唸り声を上げた。


それは「遊びは終わりだ」と言わんばかりの、冷徹な殺意。


悠太の背中に、今まで経験したことのないような、ゾクリとした悪寒が走った。


膝が笑い、視界がわずかに震える。


罠使いの最大の武器である計算が、目の前の王によって根底から覆された瞬間だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
4分間も防御態勢でじっとしてるなら足元に落とし穴設置できないかな? モンスターがいる座標に直接罠設置できない縛りあった?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ