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ハズレと笑われた『罠』スキルの俺、実は超激レアな最強スキルでした  作者: シマリス


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スーパーネズミシューズ

十一月に入り、街を抜ける風はだいぶ肌寒くなってきた。


地上では冷たい雨が降り続いていたが、東京ダンジョンの中は一定の温度に保たれている。

とはいえ、湿り気を帯びた空気はどこか重く、悠太は濡れた上着を軽く払いながら、ダン研の一角にある瀬戸のショップを訪れていた。


「いらっしゃいませ、甘露寺さん。雨の中、わざわざお越しいただきありがとうございます」


カウンターの奥で、瀬戸はいつものように柔和な微笑みを浮かべて悠太を迎えた。


この間、如月と三人で探索に出た際は思わぬ展開の連続で結局自分の装備を整えることができなかった。

だが、第五階層のグレーウルフとの実戦を経験し、悠太は改めて痛感していた。ソロで生き残るためには、一歩の踏み込み、一瞬の回避能力が命運を分けるということを。


「瀬戸さん、今日は相談があって来たんだ。今のシューズの性能を上げたくて」


グレーウルフとの戦いでの稼ぎは、まだ多いとは言えない。しかし、第四階層のオークたちには随分と稼がせてもらった。悠太は今日、その中から捻出した全財産を握り締め、覚悟を決めてここへ来た。


「予算は二十万。これで今の俺の足を、もう少しだけ速く、もしくは軽くすることってできないかな?」


瀬戸は人差し指を顎に当て、少しの間、何もない空間を見つめるようにして考え込んだ。


「二十万円ですか……。そうですねぇ、完全な新品で今のものより性能の高いお靴を用意するとなりますと、そのご予算では少し厳しいのが正直なところです。ーーですが……」


瀬戸はカウンターの下から、丁寧に布に包まれた素材を取り出した。


「先日、お二人と第五階層へ行った際に回収したドロップ品――『ウルフの皮』がいくつかあります。こちらの素材を用いて甘露寺さんの現在のシューズを補強し、魔素回路を編み込み直す形であれば、そのご予算内で承れますよ。お時間、二時間ほどいただければ」


「本当? 助かるよ。ぜひお願いします」


悠太が履き古した『ネズミシューズ』を預けると、瀬戸はそれを大事そうに受け取った。


「分かりました。それでは心を込めてお預かりしますね」


彼女が奥の作業スペースへ消えた後、悠太は手持ち無沙汰になったので、店内の商品を眺めて回ることにした。

改めて見ると、どれも息を呑むような高級品ばかり。それらは全て、魔素で強化された重厚なショーケースに収められている。値札に踊る数字は、安くても数十万。中には数百万、一千万を超える武器や防具が鈍い光を放ちながら並べられていた。


(いつか、こういうのを迷わず買えるようになるんだろうか……)


そんなことを考えながら待つこと二時間。


奥から、少しだけ上気した顔の瀬戸が戻ってきた。その手には、見違えるような変化を遂げた一足が握られている。


「お待たせいたしました、甘露寺さん。こちらが改良を施した一足……名付けて『スーパーネズミシューズ』でございます」


元々のネズミシューズの軽快さはそのままに、表面にはグレーウルフのしなやかな皮が幾重にも編み込まれ、銀色の魔素が繊細な模様を描いている。


「あのさ、瀬戸さん。ウルフの素材を使ったなら、普通に『ウルフシューズ』でよくない?」


悠太の素朴な疑問に、瀬戸は珍しく少しだけ頬を膨らませて、頑固な口調で首を横に振った。


「いいえ、それは認められません。甘露寺さん、『ウルフシューズ』という名称の商品は、当ショップの既製品として既にラインナップに存在します。単なる改造品に既存のブランド名を冠することは、私の美的感覚が許さないのです。これはあくまで、ネズミシューズの魂を極限まで引き上げた『スーパー』な存在なのですよ」


そして、そこから瀬戸の熱い「うんちく」が始まった。


「いいですか、このフィット感を見てください! ウルフの皮の伸縮性を利用することで、足との一体感を極限まで高めています。さらに、ソール部分の魔素回路を再構築したことで、グリップ力が飛躍的に向上いたしました。これにより、ただのネズミには叶わなかった急激な方向転換……つまり、小回りが利くようになるのです。そしてさらに……」


止まることのない瀬戸の解説。敬語でありながら、その熱量は凄まじい。悠太は「あはは、なるほど……」と苦笑いしながら、圧倒的な知識の濁流を浴び続けた。


しかし、実際に履き替えてみると、その差は歴然だった。


軽くステップを踏んだだけで、足裏が吸い付くように地面を捉える。これなら、複雑に根の張った林の中でも、自由自在に立ち回れそうだ。


「ありがとう、瀬戸さん。これなら、次の作戦も行けそうだよ」


「どういたしまして。甘露寺さんの歩みが、より良いものになることを願っておりますね」


外は相変わらずの雨だったが、新しくなった靴の感触を確かめる悠太の足取りは、かつてないほどに力強かった。


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