第86掌 服完成
服を買いに行ってから一週間が経った。
拠点の改造も少しずつ形になって来ている。防犯機能の方がほぼ完成したのでようやく地下作りに入っていた。リリアスは相変わらずレベル上げをやっているし、アメリアはキッチンの方が終わったので俺とダンガの方を手伝っていた。まあ、手伝いと言っても間食を作ってくれたり、ゴミや作業中に出た石や岩とかを運び出したりしてくれていたりだ。本当に重たいのは俺やダンガが運ぶのでアメリアは重くない物を運ぶと言った感じだ。
リリアスのレベルだが、頑張っているため、レベルも上がったようだ。本来ならこんなに早くレベルが上がることはありえないそうなのだが、俺のオールブーストの恩恵でかなりあっさりレベルが上がるようだ。オールブーストは恐らく、俺のレベルに比例して上昇補正してくれるのだろう。俺はともかく、他の三人の上がり様がすごい。まあ、リリアス以外は特にレベル上げをしていないので顕著に表れてはいないが。
現在のリリアスの召喚魔法のレベルは4。リアを召喚しては元の場所に戻すといったことを繰り返しているようだ。だが、そろそろ召喚して戦うという段階に入っているようで、たまにリリアスは一人で依頼を受けている。俺は最初、絡まれたりするんじゃないのかと心配になったのだが、どうやらリリアスは俺のパーティーのメンバーであるということが広まっているらしく、誰もちょっかいを掛けては来ないようだ。たまに俺のことを知らない奴が絡みそうになっても周りが止めるそうだ。
別にこれらの情報は俺がリリアスの後をこっそりついて行って知ったことじゃないぞ。改造に必要な素材を採るために依頼を受けたときに受付嬢の一人から聞いたのだ。でも、これで俺も一安心だ。
実はすでにリリアスの入学の時期は決まっていて、来月になっている。俺も最初はリリアスの安全対策としてレベル7を課題としたんだが、思わぬ幸運というかなんというか。リアがグラスプに加入したのだ。これによって俺の警戒意識のグレードは下がった。レベルも高いし、ステータスも高い。そんなリアがリリアスにくっ付いていれば大体のことは何とかなる。そうでなくてもリリアス自体が強いのだ。学園生程度が勝てる相手ではない。
でも、出来るだけレベルは上げていて欲しいな。俺達を召喚するのが一番安心だからな。
とりあえず、これはリリアスに任せるとして、俺は服を取りに行かなきゃな。まあ、みんなで行くんだけど。
そして今、俺は皆で服を取りに来ていた。
「ここが防服店か」
ダンガが興味深そうに店の中を見渡している。
「ああ。おーい!一週間前に服を頼んだ者なんだけどー!」
俺が大声で店の奥に呼びかける。
「・・・」
「「「・・・」」」
「あれ?」
来ないや。
「おーい!」
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
来ない。
「おかしいな?今日来いって言ったのはあっちなのに」
「間違えたんじゃねえのか?普通、こういうオーダーメイドってかなりの時間が掛かるもんだぞ」
「マジで?」
「普通は早くて三週間くらいは掛かる」
「おいおい。俺のミスかよ」
でも、確かに一週間って言ってたんだけど。
「・・・あれ?今日は多いな」
後ろからそんなダルそうな声が聞こえて来た。
「あ!」
そこには店のお姉さんがいた。
「あの・・・。一週間前に服を頼んだ者です」
「・・・ん」
「今日で合ってますよね?」
「・・・ん。そう」
「それ、ホントか⁉」
ダンガが驚く。
「・・・ホント。服は出来てる」
「おお!ほらな、ダンガ。俺、ミスなんてしてないだろ?」
「あ、ああ。そうだな」
「さっそく見せて貰ってもいい?」
「・・・ん。待ってて」
そう言って店の奥に戻っていった。
「随分素っ気ない奴だな」
ダンガがそういう感想を持つ。
「お姉さんって感じの見た目でしたね」
「そうね。私たちにはない感じの雰囲気だったわ」
リリアスとアメリアがそういう感想を持つ。あれ?そっちの感想?
「リリアスさん?アメリアさん?なんだか雰囲気が怖いんだけど・・・」
「そうですか?」
「そんなわけないじゃない」
息ぴったりですね。
「・・・お待たせ」
そんな話をしているとお姉さんが戻って来た。
「・・・これ」
そう言って差し出して来たのは黒を基調とした防服。赤の線が所々に入っていて、白い手袋がある。増々中二病だと正直俺は思ったが、他の三人の表情が何ら変わりなかったので変ではないらしい。黒く薄いコートを上から羽織るようになっていて、風が吹いたり、走ったりすればマントのようにたなびくだろう。
「・・・コートには魔法耐性と物理耐性を付与しておいた」
「付与?」
聞き慣れない言葉だな。
「物に色々な効果を与える魔法だ」
ダンガさん、説明ありがとうございます。
「・・・服自体には衝撃吸収と破壊無効を」
「破壊無効って?」
「付加した物を壊れないようにする」
「なるほどね」
「・・・手袋には筋力増加を」
これは分かる。より重たい物を持てるようになるってことだな。
「・・・靴には速度上昇を」
これも分かる。っていうかかなりパワーアップしてない?まあ、ないよりあった方がいいに決まってるけど。
「・・・着てみて」
「はい」
そう言う訳で着ることにする。
「結構イケてんじゃねえか」
ダンガはうんうんと頷いている。
「カッコイイですよ!」
リリアスは顔を赤らめてキャーキャー言ってる。そこまでなの?俺としては完全に痛いコスプレって感じなんですけど。
「これならいいわね」
アメリアも何納得してんの⁉どうすんだよ!もし、この格好を日本の学校の奴らに見られたら恥ずかしさで死にたくなるぞ。しかも、神が言うにそいつら俺を探しているんだろ?ヤバいじゃん。異世界の奴らだけならまだしも地球の奴らに見られたらヤバいじゃん!
「俺としてはもう少し見た目は地味でも良かったんだが・・・」
「・・・付与のバランスを考えたらこれがベスト」
「そうですか・・・」
どうにもならないらしい。
「それはもういいや。それよりこの三人にも服を頼みたいんですが」
「・・・いいけど、お金掛かる」
「分かってます。とりあえず、これは俺の分」
そう言ってお金を出す。実はダンガから相場を聞いておいた。その少し多めの料金を渡したのだ。金貨十枚だ。
「・・・ちょっと多い」
「今後とも贔屓にしたいですから」
「・・・ありがたい」
そう言って懐にお金をしまうお姉さん。
「名前を教えてくれないですか?」
聞いてなかったしな。
「・・・店の名前と一緒」
「アシュナさんね」
「・・・ん。そっちの三人の注文も了解した」
「よし。俺の名前はタカキです」
「俺はダンガ」
「リリアスです」
「アメリアよ」
「・・・ん。よろしく。完成は三週間後」
「じゃあ、そのくらいにまた取りに来ますね。それじゃ」
「・・・ん。待ってる」
そんなわけで注文も終わったので店を出る。
「この後は、久々にみんなで依頼を受けないか?」
「どうしたんだ?急に」
「最近は拠点にかかりっきりで体を動かしていなかったからな。たまにはいいと思って」
「そうですね。私も最近はいつも一人だったのでみなさんが来てくれると嬉しいです」
「私も体が鈍っちゃうかもって思ってたところだし」
リリアスとアメリアも肯定的だ。
「分かった。それじゃあ、ギルドに行くか」
ダンガも了承したのでさっそく行くことに。
どんな依頼を受けよっかなー。
読んでくれて感謝です。
感想・評価・ブックマークをしてくれると嬉しいです。
よろしくお願いします!
しかし、書いていて思いましたが、服の描写を書くのも難しいですね。
なかなかうまく書けません。




