第68掌 バレるところだった
マリアーヌをヒロインにするか、それともそのままサブキャラにすべきか悩んでいます。
まあ、姫キャラって世界を旅していたらいつでも登場させることは可能だからここで姫キャラをヒロインにする必要がないんですよね。
本当にどうしよう・・・。
「まず、何故姫様がこのような依頼を出したかだが」
これはまあ、深い理由は分からないが、大体予想できる。ベルモンドさんの話や実際に会ったことによって分かっていた。王になるつもりがないことは。それなのに何故、王位継承の争いに参加しているかが答えだろう。自分としては王になるつもりなどなかったのに周りの連中が欲を出したのだろう。仮にも王族なのだからそこら辺もしっかり統率しろよ、と思わなくもないが見た目の印象よりも優しいのだろう。
「君も分かっていそうだが、姫様の周りの貴族たちの暴走が原因だ」
「ああ。大体予想していた」
「それで姫様の周りの貴族だけが原因ならその貴族たちを何とかすればよかっただけなのだが・・・」
なるほど。そこで王子派の奴らの登場ね。
「王子派の貴族がろくでない者たちだったの」
マリアーヌは苦虫を噛み潰したような表情で言った。
「王子は私の腹違いの弟なのだけど、自分さえ良ければ他はどうなってもいいと言った性格の子で」
典型的なバカ息子だと。
「父は特に後継者を誰にするとかは何も言ってこないし、退位することを発表して以降は表に出てこないの」
おおう。王様、生きてたのね。継承問題になっているくらいだし、てっきり、お亡くなりになっているのかと思ったよ。
「それで本来なら王位継承順位で一番は長男の弟になるのだけど・・・」
ダメな王様になることは目に見えていると。
「それでこれではこの国はダメになると判断した叔父、つまりは王弟のハフナーが王には自分がなると立ち上がったの」
なるほど。それで継承争いが始まったと。
「でも、それを見ていた私の勢力の貴族たちが自分たちに益がなくなると判断して私を担ぎ上げた」
「それで神輿になったと」
「ええ。その通りよ」
「つまり、あなたの最終的な目的はあなたの叔父である王弟様に王になってもらうことってことですか?」
「ええ。それには私の勢力と弟の勢力が邪魔なの。そうでなくても叔父は公爵。私や弟は王族で格が違うの。つまり持っている勢力も負けている」
現在、王弟のハフナーさんだっけ?その人が頑張ってこの国の三分の二と戦っているのね。それの味方をして欲しいと。そういうことか。
「大体分かりました。それでアネッサさんがその依頼を了承した理由を聞きたいんですけど」
「私の方はまあ、簡単なことでね。数日前、姫様がここに依頼を出しに来る前に王子の遣いがやって来たのよ。自分たちが王位継承争いに勝ち、王になった暁にはこの冒険者ギルドは王の管轄下に置くというお達しと共にね」
「疑問なんですが、そもそもギルドはどういう立ち位置にあるんですか?」
「どこの国でもギルドは国によって管理されているわ」
「あれ?それなら別に王子の管轄に置かれても変わらないんじゃ」
「いえ、そうはならないわ。どこの国のギルドでもそうだけど、ギルドは国に管理はされていても独立しているの」
ん?どういうことだ?
「つまり、ギルドは国によって作られているけど、国はギルドに権力を行使できないの」
ん~。なんとなく分かった。親子の関係みたいなものだな。生んでもらったけど、子どもが親の言う通りになる訳ではない、みたいな。
「それを王子はギルドに対して権力の行使をすると言って来た。それをギルド長である私は許すわけにはいかないの」
「なるほどね。ちなみにそれはどこの国でも同じことなんですか?」
「ええ。でも、その国のギルド長の方針次第よ。国に依存しているギルドもあれば、完全に独立しているギルドもあります。ちなみにこの国のギルドは半々ってところね。頼り頼られの関係」
「その感じですと国々のギルドは繋がっていないっぽいんですが」
「ええ。その通りです。ギルドは横のつながりはありますが、縦のつながりはない。国と国の関係と同じね」
「理解しました。どうしてアネッサさんがこの依頼を突っぱねなかったのかも」
突っぱねたら今の体制が崩れてしまうし、王子の好きにさせてしまうからということか。
「それは良かったわ。他に聞きたいことはない?なかったら後は姫様の指示に従ってもらうのだけれども」
「一つだけ」
「何?」
「このような依頼、どうして俺に出したのかを聞きたいですね」
「あなたが黒の英雄だからではダメ?」
マリアーヌが首を小さくコテンとしながら言う。なんかあざとい感じがする・・・。
「俺が受けた緊急依頼の内容を知っているのなら分かっているとは思いますが、俺は精々五百の敵を倒したぐらいですよ?国の三分の二を相手にするのに俺では足りないのでは?」
「・・・正直なところ、私にも分からないの。でも、あなたが他の人間とは違うと私の感覚が言っている気がするの。この人なら何とかしてくれるって」
なんだそりゃ。でも、もしその感覚が正しいなら俺が他者と違う点は神の使徒であるという点だ。ちょっと気になる。ステータス、見てみるか。
マリアーヌ・L・オークス 女
種族 ヒューマン
レベル55
HP:219/219
MP:241/241
STR:186
DEF:223
INT:266(+10)
AGI:223(+10)
MND:300
固有:感覚看破
スキル:礼儀 レベル7
細剣 レベル5
威圧 レベル3
詐術 レベル2
指揮 レベル5
魔法:風魔法 レベル4
光魔法 レベル4
加護:風妖精の加護
光妖精の加護
おおい!固有スキルに危ないもんがある!感覚だから気づかれなかったけど、あっぶねー!バレるところだった!
焦るわー。俺の持ち前のポーカーフェイスが無かったら即、顔に出てたわ。
名前の所のLってのはミドルネームか?それとも母方の苗字か?まあ、どっちでもいいか。
「そうですか。それでは俺達はあなたのその感覚が正しかったと証明できるように頑張ります」
「話は以上かい?それじゃ、あとは姫様に任せよう。私は席を外すから後は好きにしなさい」
そう言ってアネッサさんは部屋から出て行った。
さて、話も纏まったし、俺達も一旦帰りますか。
「マリアーヌ様。俺達も一旦宿に戻ります。マリアーヌ様の護衛の方がいらっしゃらないのでしたらお送りしますが、どうします?」
「迎えはギルドの裏手に待たせてありますからお気になさらず。それよりも私からも一つ、聞きたいことが」
「なんでしょう?」
「あなたは一体何者なんですか?」
感覚看破さんが仕事をしていらっしゃるようだ。
「それは言う訳にはいきません」
「あなたのパーティーメンバーにも?」
「いえ、この三人にはすでに教えていますので」
「そう・・・。まあ、いいわ。最後に」
「はい」
「あなたたちの名前を教えてくれる?」
「そうですね。もう黙っている必要性もあまり感じませんし。俺はタカキと言います」
「わ、私はリリアスと言います!」
「俺はダンガだ」
「私はアメリア・フェルゲンと申します」
「あれ?フェルゲンってことは・・・」
「はい。私は父、ベルモンドの庶子になります」
「そのことをベルモンド殿は?」
「承知しています」
「そう。わかったわ。それでは依頼の件、よろしくお願いね。あなたたちの力を借りたいときには遣いを出すから」
「報酬などは先にお聞きしていても構いませんか?」
俺はうっかり忘れていたことを聞く。これが冒険者にとっては一番大切なことだし。
「それも次にお会いした時にお話しします。ハフナー叔父様と共に」
「分かりました。それでは失礼します」
俺達もマリアーヌを部屋に残して退出していった。
その日の残りの時間は休憩としてゆっくりと休んだ。話し合いは次の日でいいだろう。
さあ。俺の嫌いなドロドロ展開をどうやって回避しようかな。そんなことを考えながら俺は眠りについたのだった。
読んでくれて感謝です。
感想・評価・ブックマークをしてくれると嬉しいです。
よろしくお願いします!
それと、アネッサさんの口調ですが、結構安定していませんよね。丁寧に話したかと思えば急にタメ口になったりとか。まあ、作者的にこれがアネッサさんのデフォなのでそういうキャラだと思って納得しておいてください。




