第66掌 受けるべきか、受けないべきか
感想にて意見をいただいたので、ここでも記しておきます。
この物語の中で神の依頼は話全体の目的です。また、長編の予定ですので神の依頼をあっさりと達成することは出来ません。
なので、ところどころで寄り道はします。
ご了承の程、お願いします。
それでは本日の話をどうぞ!
姫騎士派と王子派の貴族を潰して欲しいという指名依頼をマリアーヌ、つまり姫騎士から出された俺達は硬直した。
だってそうだろ?王子派だけならまだ分かるけど、この指名依頼の内容は姫騎士派と王子派の貴族を潰して欲しいだ。この姫様は自分の勢力を潰して欲しいと言って来ている。そんなことを言われたら誰だってどういうことだと混乱する。実際、俺達は混乱していた。
「どういうことでしょう?何故、そのようなことを?」
俺が代表して聞く。
「気持ちは分かります。私も初めに聞いたときは驚いたから。でも、どうしてかという理由はこの依頼を受けるかどうかをはっきりさせてからにして」
アネッサさんはそう言う。顔にも疲れが出ている。でも、どうやらこのことは俺達よりも前に聞かされていたことのようだ。
「すみません。少し時間をください。仲間たちと相談したいので」
「構いません。隣の個室を使ってちょうだい。決まったら戻ってきて。それまでここで待っていますから。マリアーヌ様もお待ちくださいます。出来るだけ早くお願いね」
「はい。行こう、皆」
俺は三人を促して部屋から出る。そしてその隣の部屋へと入る。そこもさっきアネッサさんとマリアーヌがいた部屋と同じ作りだ。
「ちょっと待ってよ」
俺は話し始めようとする三人に静止の言葉を告げ、スキルと魔法を行使する。
「はい。もういいよ」
「何をしたんですか?」
「隠蔽と風魔法で防諜した。これで俺達の会話は周りには聞こえない」
実はさっき、マリアーヌが部屋にいたことを視認した瞬間、このスキルと魔法を使ったのだ。王族がギルドにいる時点で何かあることは分かるからな。しかし、ベルモンドさんとの密会でも使えばよかった。こっちの方が使いやすいし。
「便利だな」
ダンガが呆れた様子で言ってくる。
「これも俺の能力の特権さ。そんなことより、早速皆に聞いておきたい」
俺は部屋のソファに座る。俺に倣ってみんなも座る。
「この指名依頼、どうする?」
「どうするって言ったってなぁ」
「タカキさんの判断に任せますよ」
「まあ、この中で一番依頼とかの判断がしっかりしているからね」
みんな、俺を信じているの?それとも丸投げしているの?
「まずはみんなの意見を聞いて。今回の依頼をどう思うか」
「そうだな・・・。俺は受けてもいいと思う」
ダンガがそう言う。
「なんでだ?」
「今後、俺達はお金が必要になってくる。拠点を買うしな」
まあ、その通りだ。
「それに俺は商売をするし、このパーティー、グラスプは今後神の眷属共と戦っていく。そういう時に後ろ盾は多いに越したことはないと考える」
まあ、後ろ盾は少ないより多い方がいいけど。
「まあ、柵も増えていきそうだがな」
ダンガが俺にニヤリとしながら目線を向ける。
「そうだな。分かった。リリアスとアメリアはどうだ?」
「私は受けない方がいいと思うわ」
アメリアは反対か。
「どうして?」
「依頼内容は姫騎士派と王子派の貴族を潰すこと。それはつまりこの国の約三分の二の権力者を敵に回すと言うことよ。そんなの賛成できるわけないわ。貴族としても、メイドとしても。そしてあなたの友達で婚約者としても」
アメリアにそう言われると照れるね。まあ、アメリアも分かっているのだろう。いつも通り、今回も俺が一番矢面に立つことになるだろうことは。
「わ、私はタカキさんに任せたいと思います」
リリアスは受けることを賛成も反対もしなかった。
「理由はあるの?」
アメリアがちょっと厳しめに言う。まあ、こういう場面で自分の意見を言えないのはイラッとするかもしれないけど。
「あります」
リリアスはそう言った。
「私はここに拠点を建てたいと言いました。それは私の意見です。つまりダンガさんのお金と後ろ盾を得ることには賛成なんです。でも、それでタカキさんが私たちの分まで大変な思いをするのは嫌です」
リリアスは俺達三人をしっかりと見据えて言う。
「だから私はタカキさんがやりたいと思ったことに従います。その代わり、もし依頼を受けるなら私たちもきちんと矢面に立ててください。足手まといにならないように頑張ってついて行きますから!」
「・・・・そうか」
俺は目を瞑って考える。依頼を受けることに賛成は一人。反対も一人。中立が一人。結局俺が決めることになった。
俺はダンガの言ったこと、アメリアの言ったこと、リリアスの言ったことをしっかりと考える。
確かにお金は今後必要だ。このような依頼だ。勿論、報酬はかなりのものだろう。それに後ろ盾があるに越したことはない。今回は貸しを作るんだ。借りが出来る側には大分いい条件で協力してくれるだろう。
でも、この国の三分の二を敵に回す。いくら俺が神の使徒で滅茶苦茶な能力を持っていてもかなり大変なことだ。なのになぜ、俺の能力を知らないはずのマリアーヌがそんな無茶な依頼を出したのか。そしてアネッサさんはどうして介入を嫌っていたはずなのにその依頼を了承したのか。
気になることはたくさんある。それは受けると決めたら恐らく話してくれるだろう。だが、いいのか?これは神の依頼とは直接は関係ない。間接的には今後のためになるから関係あるかもしれないが。
しかも、今回は一人じゃ無理だ。いくら俺が強くても手が回らない。そうなるとリリアスたちに頼むしかない。確かにリリアスたちはかなり強くなってる。俺のオールブーストの力もあってステータスは結構補正されている。そこらの奴らにやられることはまず、ないだろう。でも、仲間のリリアスたちを出来るだけ危険には晒したくない。
今後のことを考えると受けるべきではある。しかし、それにはかなりの危険がある。どうするっ!
俺は眉間にしわを寄せて考える。
「タカキさん!」
リリアスが俺の名前を呼ぶ。
「!」
「これだけは分かってください。私たちはタカキさんの仲間です。守ってもらうだけの存在じゃありません。守り、守られる存在なんです!」
そのリリアスの言葉にハッとする。
「お願いですから私たちにもタカキさんを守らせてください」
「そうだな。分かった。・・・・この依頼、受けることにするよ。力を貸してくれ、皆」
「「「はい!(おう!)」」」
決まりだ。それじゃあ、返事をしに行くか。仲間と共にこの国を掌握するってことを。
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