第45掌 お互いの頼み
五万アクセス突破しました!
そんなわけで追加でもう一話投稿します。
本日二話目です。
それではどうぞ!
執務室に移動中。俺はリリアスとダンガに小さな声で話しかけていた。
「依頼のことを話すつもりはあるんだが、もしものことがあれば準備はしておいてくれ」
ここでの準備とは戦闘、もしくは逃走の準備のことだ。
「ああ」
「はい」
ダンガもリリアスも緊張の面持ちだ。まあ、貴族相手に一戦あるかもしれないんだ。緊張は当たり前か。貴族とかがない現代日本から来た俺はそんなに緊張していない。
「ここだ」
ベルモンドさんが俺達に声をかける。どうやら着いたようだ。
「入りたまえ」
ベルモンドさんの言葉に促されて部屋に入る。テレビとかで見る政治家の政務室みたいな感じだ。
「座ってくれ」
部屋にあるソファに座るように促される。それに従って座る俺達。結構フワフワだな。流石は貴族。
「さて、それでは聞かせてもらおうか?」
「はい」
部屋にはアメリア以外に使用人はいない。ここには俺、リリアス、ダンガ、ベルモンドさん、アメリアしかいない。
「まずは俺が何者かということですが・・・」
「あのフォーマスに憑りついた?者は知っていたようだが・・・」
「ええ。簡潔に言うとあれは神の眷属です」
「かっ、神の⁉」
「ええ。俺は彼らと敵対関係にあります」
「それは君は神敵と言う訳かい?」
アメリアとベルモンドさんは俺に対して警戒する気配を感じる。アメリアのその対応には悲しいけど。まあ、魔法とかがある世界なんだ。それにこの世界は地球とは違って文明もまだ発達していない。神を誰もが本当に信じているんだ。まあ、実際にいるんだし、俺も今では信じているんだけど。
「まあ、そうなるのかな?うーん」
「何とも煮え切らないね」
「正直微妙なんですよね。この世界の神が行方不明なのは知っていますか?」
「何だそれは‼」
「まあ、俺も聞いただけで本当のところはどうなっているのか分からないんですけど、いなくなったらしいですよ?」
「なっ⁉」
驚く気持ちは分かるけどね。
「まあ、それで新しい神がこの世界に派遣されたらしいです」
「待ってくれ。何故、そんなことを君が知っているのだ?」
「ああ。それは簡単です。俺はその神から頼まれてこの世界に来た者だからです」
「・・・つまり君は神の使徒だと?」
「そう取ってもらって構いません」
「・・・ふむ」
「それで、フォーマス君に憑りついていた者は前の神、つまり失踪した神の眷属です」
「彼らの目的は?」
「分かりません。ですが、人間の死体を集めていることは確認しています。勿論、殺した上で」
「それはベルルクで起こった緊急依頼の件だね?」
「はい」
死体がどのような用途に使われるかは分からないが、面倒なことになりそうなのは確実だ。
「俺が神に頼まれたのは前の神の眷属の捕縛、もしくは殲滅です」
「それを人の身である君に出来るのかい?」
「さっきも言いましたが、俺は神の使徒ですよ?なんなら俺のステータスを見ますか?」
俺のステータスって上がり方がおかしいからな。本当ならこのステータス値はダンガやリリアスのステータスを見て分かるようにレベル150以上はないとこれくらいにならないだろう。それを俺は現在、レベル96で手に入れている。これからもこの感じで上がっていくだろう。それに俺にはレベルの上限がないからな。いくらでも強くなれる。
「念のためだ。見せてくれるかい?」
「はい。ですが、一つだけ」
「なんだね?」
「ここで聞いておきたいのです。俺はあなたに協力者になってもらいたいのです。貴族としての立場のあるあなたが協力者として欲しい」
「・・・・ふむ。それが今回の報酬と言う訳かい?」
「はい」
「・・・」
「俺達はこの世界ではなんの権力も持っていません。俺に関してはこの世界の常識や知識すら持っていません。俺の持っていないものを持つ人に是非、協力してもらいたいのです」
「・・・」
目を瞑り、考え込むベルモンドさん。
「分かった」
時間にして数分。考え込んでいたベルモンドさんが返事をした。
「ありがとうございます!」
「ただし、条件がある」
「・・・・何でしょう」
「君たちも私に力を貸してくれ」
「何か問題でもあるんですか?」
「ああ。実は王都では今、王位に誰が付くかでもめているのだ。先日、私のところにも協力するよう要請が来た」
もしかして、あの時の正規軍のやつか?
「王都は今、三つの派閥に分かれていて、王子派、王弟派、姫騎士派となっている」
まさにって感じだな。テレビとか歴史の勉強とかで見たやつだ。
「先日、私に要請してきたのは姫騎士派のところだ。わざわざ姫騎士本人が出向いてきた」
「それは・・・」
「ああ。この現状で姫騎士が来るのはおかしい。恐らくは神輿だろう」
いつ命を狙われるかも分からない立場の人間が王都から離れてここにやってくるのは危険極まりない。例えあれだけの兵を連れていてもだ。
「神輿というのは確実なのですか?」
「ああ。会った時に感じた。あれは王になどなりたくない者の目だ。覇気もない。周りの者が後ろで操りたいがためであろう」
ちょっと待ってくれよ。俺、そんなドロドロしたの嫌だぜ?
「それで?協力というのは」
「ああ。私はこの権力闘争に入る気はない。私の名代として王都に赴き、正式に断ってもらいたいのだ」
なるほど。危険な依頼だ。下手な奴が行ったら人質にでもなってしまうだろう。
「分かりました。受けましょう。それと、もう一つお願いがあるのですが」
「なにかな?」
「アメリアを俺の仲間に入れさせてもらえないでしょうか?」
「なに?」
ベルモンドさんは驚いた表情だ。リリアスやダンガ、それに俺に名前を言われた本人のアメリアも驚いている。
「先ほども言いましたが、俺達には権力がありません。ということは必然的にそういう知識はないですし、今後もし、俺の身分がバレたときにそっち方面で優秀な者が欲しいのです」
「何故、アメリアなんだい?」
「彼女は俺の友人です。それだけでも仲間にする条件はこちら側は揃っているのですが」
「それだけではないと?」
「ええ。彼女は固有スキルにかなりレアなものを持っていますね?」
俺はアメリアに初めて会った時にことを思い出した。あの時、アメリアは俺に悪意がないことを感じ取っていた。
「っ⁉何故それを」
「まあ、今までの付き合いで」
「そ、そうか」
「勿論、それだけではありません」
「まだあるのかね?」
「はい。アメリアは先日、俺達がここに来た時に応接間に、正確に言うとあなたの後ろにいましたね?」
「そ、そこまで分かっていたのか⁉」
「ええ。俺の能力の一つです」
まあ、把握しただけなんだけどね。
「彼女はあなた方家族に良くしてもらっていると言っていました。彼女には何かあるんですね?」
俺はアメリアの話を聞いてから思っていたことを聞いた。
「ああ。その通りだ。アメリア、君もこっちに来て座りなさい」
ベルモンドさんの後ろに控えていたアメリアにそう言って声をかけるベルモンドさん。その声はどこか優しさが含まれていた。
「・・・はい」
アメリアはベルモンドさんの言うことを聞き、ベルモンドさんの隣に座った。
「いずれは話そうと思っていた。いい機会だ。聞いてくれ」
そうしてベルモンドさんは話し始めた。アメリアを何故、こんなにも気にかけているのかを。
読んでくれて感謝です。




