第44掌 目的との最初の邂逅
戦うときに武器をどうするかを移動中に聞かれたフォーマスと俺はそれぞれ剣と素手と希望していた。俺が素手と言ったらフォーマスはムッと眉を寄せていたが、すぐに元の不機嫌顔に戻った。だって俺が武器使ったら危ないじゃん。
そんなわけで。フォーマスとの戦いだ。
最初に攻撃をしたのは俺だ。素手での攻撃で、フォーマスのギリギリ避けれないくらいのレベルの攻撃を繰り出す。
「フッ」
それを危なげなく避けるフォーマス。そして俺の懐に潜り込む。そして剣で突きを繰り出した。どう考えてもレベル10の出せるスピードじゃない。どうなっているんだ?
俺はそれをバックステップで回避。剣を蹴り上げる。剣の刃の部分を縦じゃなくて横にしていたから楽に蹴れた。
打ち上がる剣。それにより隙が出来たフォーマスに気絶程度で済む威力のパンチを鳩尾に繰り出した。
「うっ」
俺のパンチが決まったことで膝をつく。これでおしまいかな?流石にレベル96の俺がレベル10のフォーマスに負けるはずがない。勿論、油断もしていないし。
でも、おかしいな。把握能力を使ってみたけど、結局フォーマスの周りには誰もいなかった。俺の勘違いか?もしかするとフォーマスはセンスがいいのかもしれないし。
俺は念のために気絶しているかを確認すべく、フォーマスに近づく。すると、ものすごい殺気が俺に向けられた。勿論、出所はフォーマス。
次の瞬間。明らかにおかしいスピードで俺の喉元に剣が迫って来た。
「っく」
それをギリギリで避ける。おいおい。どうなってんだ、これは?レベル10の攻撃じゃないぞ!
その異常を確認すべく、フォーマスのステータスを確認する。
フォーマス 男
種族 ヒューマン(神の眷属コントロール下)
レベル 10
HP:10/56
MP:45/45
STR:44
DEF:43
INT:33
AGI:56
MND:50
固有:なし
スキル:剣術 レベル2
礼儀 レベル3
限界突破 レベル1
魔法:水魔法 レベル2
おいおいおいおい!マジかよ!
ここで神の眷属だぁ⁉しかもさっき見たときにはなかったスキルまであるじゃねーか。
「おい!限界突破ってなんだ?」
この異常事態。見学していた四人に大声で聞く。俺の切羽詰まった声に何かあったのだと感じたリリアスが答えた。
「げ、限界突破は文字通り、己の限界を超えて自分よりも強い相手と戦うためのスキルです。レベルが高いほど自身への体の負担が減ります」
つまり、レベル96の俺と戦えるほどの力を出してはいるが、それには体の負担が増えているってことか。フォーマスの限界突破のレベルは1。あとちょっとでも出力を上げれば体が壊れるだろう。むしろ、現状でよく保っているな。奇跡の域だ。レベル差は86。それだけでこの無茶具合が分かるだろう。
「仕方ないな。止めますか」
使うつもりもなかった全掌握を使う。それだけで動きが止まるフォーマス。
<礼儀を掌握しました><限界突破を掌握しました>
「ぐっ!」
「これでもう大丈夫だな」
「キサマ!ヤツノテサキカ!」
おお。片言で明らかにフォーマスじゃない奴がフォーマスの口で喋り出した。神のことを言わないのは理由がありそうだな。しかし、なんで簡単に特定できたんだ?俺が神の使徒だって。
「その感じだとお前は俺の目的の奴だな」
「フン。コタエルキハナイ。シカシ、コノヨウナヤツヲヨコストハ、ナメラレタモノダ」
「それはあのバカに言ってくれ。俺は仕事を受けただけに過ぎない」
それに、お前。俺の能力で完全に身動き取れなくなってるじゃん。よくそんな状態でそんなことが言えるよな。
俺とフォーマス(神の眷属)との会話に唖然としている見学一同。まあ、リリアスとダンガはともかく、アメリアとベルモンドさんは何が何だか分からないことだろう。急な展開だしな。
「その体はどういうつもりだ?」
「フン。イイダロウ。キサマテイドナラハナシタトコロデドウニモデキハシナイ。コレハ、ウツワノヒトツニスギンカラナ」
「フォーマスは死んでないのか?」
「ホントウハ、コロシタホウガ、イロイロトラクダガ、コレハジッケンサ。イキテイルイキモノハツカエルノカトイウナ」
ものすごいペラペラ喋ってくれる。こいつは下っ端なんだろうか。そうなると重要な情報は持っていないのかもしれないな。でも、神の眷属なのは変わらないのか。・・・・それにしても、フォーマス、生きてんのか。
「最初からお前だったわけではないな?」
「アア。ソウダ。オレガ、イレカワッタノハ、タタカッテイルサイチュウカラダ」
なるほどね。戦っている時か。じゃあ、兵士の件も分かる。倒したのは恐らくコイツだな。よし!それじゃあ、もういいかな。
「サクッと駆除するか!」
全掌握でフォーマスの根幹までも掌握する。目に見えない何らかの方法で操っているんだ。それならこの全掌握で取り除いてやる。
俺はフォーマスに手をかざし、目を瞑り、集中する。
「・・・」
「キサマ!ナニヲスルツモリダ!」
「お前に教える義理はないな」
イメージはフォーマスに憑りついている得体の知れないものを大きな手で掴んで捨てる感じだ。自分の手の動きもイメージと連動していた。
「おりゃ!」
「グワッ」
短い悲鳴を上げて、それからフォーマスは動かなくなった。
「ふぅ。これで完了かな?」
倒したわけではない。ただ単にフォーマスの体から神の眷属を引きはがしただけだ。
でも、フォーマスのせいでベルモンドさんには話さなくちゃいけなくなっちゃったかな?やれやれ。
・・・
フォーマスはベルモンドさんが呼んだ使用人たちによって医務室に運ばれて行った。最初にここに来た時には驚いていたけど、俺が死んではいないことを伝えると安堵していた。
「さっきのことについて、詳しいことを聞いてもいいかな?」
険しい表情のベルモンドさん。後ろに控えているアメリアも深刻そうな顔だ。
「ええ。ですが、ここではちょっと・・・。出来れば他人には聞かれない場所でお話したいのですが」
「分かった。私の執務室に行こう。防音の魔法もかけてある。そこならいいだろう」
「はい」
あーあ。なんか、振り返ってみるといつも何気にあっさり話しているよな、俺って。まあ最悪の場合、全掌握使って何とかすればいいからどうとでもなるんだけど。
俺達はベルモンドさんとアメリアに連れられて練兵場を出た。
ベルモンドさんが協力してくれればいいんだけど。どうなることやら。
まあ、今後使えそうなスキルを掌握出来たんだから良しとしますかね。
そんなことを移動しながら考えていた。
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