第1話。消えゆく紫の空。
このお話は、私が幼い頃疑問に思った
『朝日はのぼる。夕日は沈む…じゃあ、その朝日どこへ行ったの?夕日は、どこから登るの?』とお母さんに聞いていた幼い頃疑問に思ったことをテーマに、Aiに文章を作ってもらった共同制作の作品です。
私自身がゴビの調整や行間の演出など、こころを込めて編集しています。
幼い疑問への物語
読者の私と一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです
『時をかける交差点 〜夕暮れの迷子〜』
第1話:消えゆく紫の空
「いってらっしゃい、朝日さん。また明日、ただいまを言い合おうね」
26歳になった私――アサヒは、ベランダから西の空を見上げて微笑んだ。
あの日、
【ひかりの交差点】
でお母さんから
「自分と未来は変えられる」
と教えてもらってから、2年の月日が流れた。
今の私は、小さなデザイン会社で働きながら、毎日をとても大切に、楽しく生きている。
過去の寂しさが消えたわけじゃない。
でも、お母さんから貰った愛を胸に前を向いている私の毎日は、とても充実していて、未来は確かに輝き始めていた。
ポケットの中で、あの形見の懐中時計が「チクタク」と優しい音を立てている。
ネジを巻かなくても、私の心の歩みに合わせるように、正確に今を刻み続けていた。
しかし、ここ数日、私の街ではある不思議な異変が起きていた。
「……やっぱり、今日もだ」
時計の針が午後6時を回る。
いつもなら、燃えるようなオレンジ色の夕日と、深い夜の青が混ざり合い、空が一番綺麗な「紫色」に染まる時間だ。
お母さんが教えてくれた、朝日と夕日がハイタッチをする
『ひかりの交差点』の時間。
なのに、最近の空は、オレンジ色から何の前触れもなく、いきなり真っ黒な夜へと切り替わってしまうのだ。
まるで、誰かが部屋の電気をバチンと消したみたいに。
あの美しい紫色の黄昏が、世界から完全に消えかけていた。
「どうしちゃったんだろう……」
私が不安げに空を見つめた、その時だった。
ジリリリリ!!
突如、ポケットの中で懐中時計が激しく鳴り響いた。
驚いて取り出すと、時計の文字盤が、あの2年前と同じ眩しい紫色の光を放ち始めたのだ。
「えっ、まさか……!?」
次の瞬間、強い風がベランダに吹き荒れ、私の視界は紫色の光で埋め尽くされた。
足元がぐにゃりと歪み、重力から解き放たれる。
ハッと気がつくと、私は再びあの場所に立っていた。光の道路が十字に交差する、
あの
【ひかりの交差点】だ。
しかし、
2年ぶりに訪れたその場所は、かつてないほどの大混乱に陥っていた。
交差点の真ん中で、黄金色の光をまとった男の子と、茜色の光をまとった女の子が、お互いの胸ぐらをつかみ合って大喧嘩をしていたのだ。
「もう限界だ! 僕は毎日、東から西まで世界中をピカピカに照らしてヘトヘトなんだ! なのに君がちっともバトンを受け取ってくれないから、僕は『朝日の国』に帰って眠ることもできない!」
「そんなこと言ったって、私だって『夕日の国』から走ってきて疲れてるのよ! 世界中の人が『夕日は寂しい』とか『一日が終わっちゃう』なんて悲しい思い出ばかり私に預けるから、体が重くて一歩も動けないのよ!」
「あ……」
私は声を失った。
間違いない。あの二人が、本物の「朝日くん」と「夕日ちゃん」だ。
「これじゃあハイタッチなんてできない!」
「僕だってバトンタッチなんてしない!」
二人がぷいっと互いに背を向けた瞬間、交差点の足元の光が、パチパチと音を立てて消えかかった。
世界から紫色の空が消えていたのは、この二人が喧嘩をして、交差点で交わるのをやめてしまったからだった。
「待って、二人とも!」
私は思わず、二人の間に駆け込んだ。
「えっ? 誰、この人間……」
夕日ちゃんが、茜色の大きな目で私を不思議そうに見つめる。
朝日くんは、私のポケットから覗く懐中時計を見て、ハッと目を見開いた。
「あ! 君、あの時の……! 過去を許して、自分の未来を輝かせた人間だね!?」
「私のことを知っているの?」
「もちろんさ。君の懐中時計は、この交差点のネジと繋がっているんだから。……お願いだ、アサヒ! このままだと交差点が完全に壊れて、世界は『永遠の真っ暗な夜』になってしまう。夕日ちゃんが預かりすぎた『悲しい思い出の重み』を減らして、彼女をもう一度歩かせるために、君の力を貸してほしい!」(第1話・おわり)




