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デカルコマニー・ラヴァーズ  作者: 金剛ハヤト
許されざる彼女
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第20話 ePi10gⓤE¿

 ずっと雨が降っている。


「この調子だと止みそうにありませんね」

「天気は天の気持ち次第って書くからな。こればっかりは、しょうがない」


 深夜4時。私と普くんは初日の出を見るために特別開放された展望台にいた。


「残念です……折角振袖も着てきたのに」

「俺は清音の振袖が見れて大満足だけどなぁ」

「またそんなこと言って……後で後悔しても知りませんよ?」

「何を後悔するんだよ。え、もしかしてもう見せてくれないのか?」


「それは確かに嫌だな」と、普くんは笑いながら言う。純粋無垢な笑顔を見て、私は彼が『結末』のことを完全に忘れていることを確認した。


 動物園で普くんに『結末』のことを口にしたのは完全に私の凡ミスだ。いつもの私なら口を滑らせるような真似はしない。でもあのときは、普くんの『結末』を改変することができて、ちょっと舞い上がっていたんだと思う。


 動物園に行ったときにはもう改変能力は取り上げられていたから、後になってそれはもう大慌てになった。やってしまったものはもうどうにもできないから、とにかくこの1年間徹底的に話を逸らし続けてきたが、その甲斐あって、なんとか忘れさせることができた。


「普くん、今何時ですか?」

「ちょっと待ってな……」


 普くんは腕時計に目を落とす。文字盤に四つ葉のクローバーがデザインされたその腕時計は、私がクリスマスのとき、結婚指輪の代わりに贈ったものだ(本人には恥ずかしくて伝えられていないけど)。


 三葉くんに、私を一つ足して、四葉。この腕時計は私と普くんが一心同体であることを示す証なのだ。以来、彼は毎日使い続けてくれている。それを見るたびに私は嬉しくて、口元が緩んでしまう。


「お、すげ! 見ろよ清音! 4時44分! ゾロ目!」

「ふふ……」


 普くんは無邪気に腕時計の針を指差して見せてくる。私は嬉しくて、また笑った。


「そういえば普くんはもう進路は決めましたか?」


 神社で参拝する途中、私は密かに気になっていたことを普くんに聞いてみた。


「まだ特には決めてないな。結局やりたいこともまだ分からないし……母さんに迷惑もかけられないから、適当に良さげな公立高校でも受けようかな」

「応援してますよ。と言いたいところですが、普くんはまぁ大丈夫そうですね」

「大丈夫だとしても好きな人には応援されてぇよ」


 二礼、二拍手、合掌。


 ずっと雨が降っている。


「私のことは気にせず生きてくださいね」


 神様に祈る代わりに、私は普くんに言った。


「え?」

「……普くんの人生は普くんのものですよ、という意味です。普くんは結構人任せというか、受動的ですから。私としてはもうちょっと自立して欲しいんですよね」

「……すまん。善処するよ」

「約束ですよ? せめて自炊洗濯くらいは……私が居なくてもできるようにしてください!」

「頑張ります……」


 普くんは心底申し訳なさそうな顔をしながら、そう約束してくれた。


 ずっと雨が降っている。


 突然、景色が変わった。


「あ、れ……」


 ここはどこ?


 さっきまで普くんと一緒にいたはずじゃ……というか、私はなんで寝転がってるんだろう。


 雨も降ってる……ということは、ここは外?


 一体、どういうこと?


「やばい! やばいってコレ!」

「救急車呼べ!! はやく!!」


 声が聞こえる。


「大丈夫ですか!? いや大丈夫じゃないのは分かってるんですけど!! 私の声聞こえますか!! 返事してください!」


 この人は、誰……?


 全部真っ赤で、何も見えない。


「意識が無い……! ど、どうすれば……」

「マッサージ!! とりあえず心臓マッサージじゃないか!?」

「やってどうなるんですか車で轢かれてるんですよ!?」

「お、俺に言われても知らねぇよ……!」

「止血しろ止血! 今言い争ってる場合じゃねぇぞ!!」


 なんだか夢を見ていた気がする。長かったような、短かったような。とても幸せな記憶を見ていた。


「お姉ちゃん! お姉ちゃん!」


 子どもの声が聞こえる。


 良かった、無事だったんだ。私は間に合ったんだ。走ってから、間に合わないかもって思ってたから。何も見えないけど、声ははっきりしている。大きな怪我もしてないみたいだ。


 でも、なんでこんな『結末』になったんだろう? 


 私が見た『結末』には子どもなんていなかった。もしかしたら今まで多くの『異能力者』と関わったから、その影響で『結末』に微弱な変化が生じたのかもしれない。そういえば走っているとき、誰かに背中を押されたような……いいや、きっと気のせいね。


 それにしても、凄く痛い。全身が熱くて苦しいはずなのに、雨のせいなのかずっと寒くて、自分が死に向かって行るという実感が湧いてくる。私、あんなでもちゃんと生きてたんだ。


 なんだ……私も結局、死にたくないんだ。もっと早く気づいていれば……なんて、今更気づいても遅いか。


 ずっと雨が降っている。普くんは今何をしているかな。この時間だと、きっとあの空き教室で私を待っているんだろうな。


 ごめんね普くん。今日はもう、行けそうにないや。ちゃんと好きって、言っておいて良かった。


 でも、もう大丈夫。約束は守れなかったけど……普くんのことは守れたよ。もう普くんが死ぬことはないから。できれば私が死んでもあんまり泣かないでね。


 普くんは泣いている顔よりも、笑ってる顔の方が可愛いから────…………






【2020年3月1日午後4時44分:水永清音は交差点で車にひかれて死ぬ】




































































【ERROR】

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