20話目 迷い人 その5
"シュリちゃん聞こえる。エリナだよ。"
"・・・・・・どうしたの、こんな時間に・・・・・・、シュウ君ならキャンプ飯をかっ食らって寝ちゃったわよ・・・・・・・"
"そうなんだ。エルフ女子の尻を追いかけていない? "
"・・・・・・大丈夫、私が傀儡の魔法陣を常に後ろに掲げているから・・・・・"
"ありがとう、見張ってくれていて。"
"・・・・・・任せて、私も黒魔法の実践的練習のチャンスだから、見逃さないから・・・・・・"
ブルブル、これだったのね、おかんが震えていた理由。
"・・・・・・ところで何か用なの。わざわざ風の大精霊様を繋ぎに使って、私に連絡して来るなんて・・・・・"
"そうなの、大変なことが起こっているの。死神さんは近くにいる居るかな。"
"・・・・・・となりで黒魔法の指導をしてもらっているよ・・・・・・"
"死神さんと話をしたいから、シュリちゃんマンタ爺さんを握ってくれる。これで念話が通じると思うから。"
"・・・・・・わかった、えい・・・・・・・"
「ぎゃぁ、突然どうしたんじゃ、シュリちゃん。」
「元祖、重篤甲斐性なしだわ。」
「んっ、その声はゴセンちゃん。どうしたんじゃ。」
"死神さん聞こえますか。"
"その声はエリナさんですわね。
シュリちゃん、いえ、アーティファクトの念話ですわね。"
"はい。突然すみません。至急ご相談したいことがありまして。"
"どうしたの、困ったことがあったら何でも相談して頂戴な。"
私は今日起こったことをすべて死神さんとシュリちゃんに話した。
その上で、アマデオさんの人類領行きと第1081基地の滞在許可を願い出た。
"どうぞ、エリナさんの思うようにしてください。"
"彼をエルフ側に断りもなく人類領に連れて行くのは何かもめるよう気がしないでもないですが、このまま魔の森に置いて行くわけにも行かなくて。"
"別にいいじゃないのもめたって。今回の件でぐちぐち言われても無視すればいいのよ。それ以上もめてもかまわないわ。
彼をここまで蔑んでおいて、さらに、彼の望む通りに人類領に連れて行ったことを揉め事にしたいなら、受けて立つわよ。
そんなことを言い出すエルフ族との友好なんていずれ破綻するに決まっているわ。
だから、後の事は私に任せないさい。
エリナさんは彼を、志の半ばで倒れてしまいそうな彼の望むように人類領に連れて行って、そこで落ち着いて暮らせるようにするのが義務よ。
それ以上のことは私に任せなさい。"
"わかりました、ありがとうございます。"
"今日からじいさんが第1081基地を整備というか、不幸な人たちの癒しと再出発の地とすることの活動を開始していると思うの。
その救済対象の第1号が彼なのかもね。
人類でなくて、いきなりハーフの者を救済するとは想定外だったけど、何か旅団らしくていいじゃない。"
"旅団らしいですか。そうですね。"
"彼を送って行った後は一応彼のことを理解してくれそうなエルフ族に事の顛末だけは話しておいて。
彼の理解者が誰も居ないようなら、その正座説教大好きおかんメイドさんに話して置けばいいわ。"
"はい、そうします。"
"エリナさん、もう少しだから頑張ってね。
そう言う甲斐性がなさそうな男と不幸な者の面倒を見るのは私の趣味だけど、今回はあなたに譲るわ。
光の公女の修行として、ひとりの不幸な者を救ってみて。もうちょっとよ。
思ったことは遠慮なくやっちゃいなさい。"
"ありがとうございます。中隊長。私、がん張りますね。"
ここで念話は切れた。
何を遠慮なくやるのかは釈然としなかったが、死神さんの言うことなので、きっと私のような平凡な人類の女の子には理解できないことだと自分を納得させた。
次はアマデオさんを人類領に連れて行くことね。
早くしないと第1081基地のじいさんにも迷惑をかけてしまうわ、急がなきゃ。
辺りはすっかり日が暮れて、空は深藍の闇に覆われたが、私たちの周りは緑の蛍光で明るく、そして、おかんの春風で暖かかった。
「お待たせ、私たちの責任者と連絡をしていたの。
あなたを人類の我々の基地に連れて行くことを了承してもらったわ。
とにかく急いで行きましょう。深夜になる前にたどり着きたいので。
そこにいる基地の責任者と、じっくり、これからどうしたらいいのかを相談して。
私も相談に乗りたいけど、私のここでの役目が終わっていないので基地にはいられないのよ。」
「それは気にしなくていいよ。
自分自身の今後のことだもの、相談できる方がいるだけでありがたいよ。」
「これから行ってもらう我が旅団の基地は癒しと再生の町になる予定なの。」
「癒しと再生の町。」
「そう、あなたのような世の中から捨てられたような者を、その世の中から一旦離れてもらい、受けた傷を癒して、そして、また世の中に戻れるように力をつけることを目的にさっき連絡を取っていた旅団の責任者が運営を始めようとしているところだったの。
思いもかげず、その街の住人の第一号がハーフのあなたになりそうということみたい。」
「そんなところを君たちが作っていこうとしていたのか。
僕もそれの運営に関われるかなぁ。」
「それはあなた次第。
あなたが何がしたいのかを、受けた心の傷を癒しながら、基地の皆と考えて頂戴。
私はどうしろこうしろとは言えない。
あなたがまずこうしたいというのを示してくれれば、できるだけ手伝うわ。
まずは人類領に行ってみたいということをかなえるわ。
その後の事はゆっくりでいいのよ。」
「わかったよ、エリナさん、僕を人類領に連れてって。」
「承りました。
あっ、えっと一応あなたが人類領に行くことと、行くことになったきっかけを、あなたを理解してくれていそうな方に話した置きたいの。
これがあなたを人類領に連れて行く条件だとして、私たちの責任者から指示されたの。
そう言う方に心当たりはある? 」
「それだったら、リリアナさん、僕の継母に。」
「リリアナさんはあなたのこの状況を、この思いを知っているの。」
「知っていてくれていると思う。
父さんに僕が仕事を手伝いたがっていることを伝えてくれているし。
今回のホストの件だって、最初は僕をメインホストにするように進言してくれていたんだ。
初めは僕の教育係として後妻に臨まれたんだけど、僕の教育が母さんによって既に十分に行き届いていることを知ると、学校には行かなくてもいい、自分で勉強して大人になったら父さんの役に立ってねといつも励ましてもくれていたんだ。
ただ、元うちのメイドで後妻という引け目からかもしれないけど、あまり強くは父さんに意見はできなかったようなんだ。」
「そうなんだ。
わかったわ、あとで私がリリアナさんに事の顛末を伝えて置くわ。
そう言うことなら、なおさら早くここを去った方が良いわ。
言っちゃ悪いけど、あなたのお父様は目が開いていないわ。開くつもりもないようだし。
見えていない隙に一旦逃げ出しましょう、私たちの町に。
こうして一旦は逃げ込むけど、きっといつか再出発して、その時はお父様にも目を開いたもらいましょうか。」
「そうする。戦術的撤退をして、再度挑むよ、父さんに。」
活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。
お話に興味がある方はお読みくださいね。
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この物語「優しさの陽だまり」は「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」の別伝になります。
第108旅団の面々は3つのパーティに分かれて行動することになりました。
「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」
の本編はシュウを中心として、月の女王に会いに。
「優しさの陽だまり」はエリナを中心としたエルフ王族の寿命の調査にエルフの王都へ。
もう一つは駄女神さんを中心とした風の聖地の運営に。
この物語ではエリナの王都での活躍をお楽しみください。
また、この物語は本編の終盤に大きな影響を与える物語となる予定です。
10/5より「死神さんが死を迎えるとき」という別伝を公開しています。
この物語も「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」の別伝になります。
「優しさの陽だまり」の前提ともなっていますので、お読みいただけたらより一層この物語が美味しくいただけるものと確信しております。




