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予定

98


「ビアンカ、デイジー、店は頼んだぞ」


「はい。お任せください」


「任せてー」


 俺達は花ちゃんの屋敷へ出発するのでビアンカとデイジーに申し送りをした。

特に店で注意する事もないが、二か月は店を開ける事になるだろう。

俺の言葉に対してビアンカは落ち着いて、デイジーは力強く答えてくれた。


「行ってくる」


「いってきまーす」


わう

わふ


ぶるるるっ


「行ってきます」


「行ってらっしゃいませ、ゴンタ様と皆様」


「いってらっしゃーい」


 行ってくるか。ここと花ちゃんの屋敷はどっちが本宅になるのだろう。

自力で手に入れたこの店と、縁のあった花ちゃんの屋敷だ。どちらも思い入れはある。

俺達だけで生きるなら花ちゃんの屋敷を本宅にするべきだろうな。

お金を稼ぎつつ人とのかかわりを持つならバッキンの店だね。

まぁどっちでもいいか。旅に出る事もあるしな。


 俺達はバッキンの門を出て騎乗に移った。

ゴンタとミナモ、馬達の爆走の始まりだ。

町では出来ない走りをここぞとばかりにする。

俺となっちゃんは、慣れてきているがアリーナが馬の上で顔を引き攣らせている。

なっちゃんと二人乗りでなっちゃんのほうが10cmほど背が高いので後ろに座ってアリーナを支えている。


 何度か通った道だし魔物も少ないので楽な旅だった。

危険があったといえば海上に船で出た時でしたね。

海では大型の魔物がいないと聞いていた。

確かに大型の魔物はいなかったが、額から槍のような角を生やして船に突進してきた1mくらいの大きさの魚型魔物に襲われた。

俺達ならともかく海上で船を狙われて焦った。

木の船体を簡単に傷つけてくるのには参った。

俺は必死に『錬成』で穴を塞いでいた。

ゴンタが海へ飛び込み応戦してくれた。こっちに落ちて来た時には、まともに泳げなかったが今はちゃんと泳げている。犬かきですね。

ゴンタは陸地のようには戦えていなかったが、魚型魔物の突進を躱しては一匹づつ噛み倒していた。

なっちゃんも水魔法で突進を防いだり、船を進めて船ごと躱したりしてくれた。

水流操作でゴンタが倒しやすいように魔物を誘導したりもしていたね。

魔法っていいなぁ……。

ミナモも俺と同じく海戦では悔しい思いをしたようだ。船の上で、わふわふ吠えていた。

アリーナの前で『錬成』を使ってしまったのは痛かったね。

できればアリーナには隠しておきたかった。

詳細は話していないが、俺が船の修復をしていたのを、アリーナが横で驚きながら見ていたからある程度ばれたろう。

ちっ魚め!


 魚自体は中々美味しかったので許す。

マグロっぽかった。なっちゃんに凍らせてもらってから解凍し寄生虫の恐れをなくし、醤油で刺身を食べた。

ワサビや生姜があれば臭みを消せてもっと美味しくなるだろう。

なっちゃん達はオリーブ油でカルパッチョ風にした物の方が気に入っていたのが悔しい。

醤油の改造を急がねば!そして薬味を探すぜ。

かっちゃんへのお土産に二匹の魚を丸ごと凍らせた。魚の表面が氷で覆われている。体内の水分を凍らせるだけじゃないのか、大したもんだ。

魚の氷漬けを船の上に置いて涼しくなったのも良かった。


 陸地へ上がってからは、ミナモが海上の鬱憤を晴らすかのように暴れていた。

ゴブリンを手始めとして、ウッドエイプ、ホーンボアときて、最後にはブラッドベアも単独で倒していた。

怒っていたとはいえ、ブラッドベアまで倒せるとは思っていなかった。

アリーナも船の上で役立たずだったのを気にしていたのか、ミナモのフォローをしつつ率先して魔物に立ち向かっていた。

ゴブリン辺りなら安心して見ていられるがホーンボア辺りは攻撃を喰らわないものの手打ちの攻撃しか出来ず苦戦していた。

結局止めはミナモが刺していたね。

俺も船の修理ばかりだったのでストレス発散として、八つ当たり気味に魔物を退治していった。

ここらで楽に倒せないのはオーガくらいだな。

そのオーガでも攻撃を喰らいそうもなかった。

やつの体が固いので楽ではないというだけだ。

なっちゃんの魔法攻撃は途切れないので周囲の索敵を怠らなければ、この辺りでは、まったく敵がいなかった。

特に複数の魔物相手で力を発揮していた。

遠隔攻撃の範囲攻撃魔法を連発……俺でも対応できるかどうか怪しい。

更にその上を行くのがゴンタだ。

牙も爪も刃物のような使い方もしだした。

高速移動で魔物とすれ違うと敵が切り倒されるのです。

血しぶきを上げて倒れていく魔物達……。

そのうち、またつまらぬモノを切ったと言い出しそうな勢いだ。

単独でも乱戦でも一番強いゴンタです。


 バッキンから花ちゃんの屋敷へ向かう方が地理の把握がしやすい。何故だろうか。

前回見つけた金属の葉っぱを持つ木の位置も記憶した。

花ちゃんの屋敷からバッキンへ行くときには見つけられなかったんだよね、同じ道を通ったつもりだったのに不思議だ。

海岸から花ちゃんの屋敷の真ん中辺りだと思う。

そのうちグロッシュラーに報告出来るな。

俺達はギルスア王国へ向かうので、しばらくドワーフ領へ行くことはないけども。


「ただいまー!」


「帰ったよ」


わう

わふ


「帰りました」


 花ちゃんの屋敷まで全員無事にたどり着けた。

過剰戦力なので魔物に対しては大丈夫だろうとは思っていたが、かっちゃんがいないので問題が起こった時に対処しきれる自信はなかったのです。まだまだ俺にはこの世界の知識が足りません。

俺は、かっちゃんに依存していたんだなぁ。反省。


「お帰りー」


「お帰りなさい」


 良かった。かっちゃんも、花ちゃんも元気そうだ。


「かっちゃーん、花ちゃん!お土産ー」


 なっちゃんが船を襲ってきた角魚の氷漬けをお土産として渡している。


「おぉ!なんや魚の氷漬けやん。山で生の魚が食べられるなんてなぁ!嬉しいでー」


「久しぶりの海の魚です」


 二人とも嬉しそうだ。

特にかっちゃんの目がキラキラ輝いている。

本当に魚が好きだね。

花ちゃんの久しぶりは百年単位な気がする……。


わふ


「ふむふむ」


わふー


「そうやで海は嫌やろ?うちもそう思うねん」


わふ


 珍しくミナモがかっちゃんに何か訴えている。

かっちゃんの反応を聞く限り船旅は嫌だと言ったところか。

自分が戦えない場所と相手ってのはストレスが溜まるもんな。


 花ちゃんに促されて旅装を解き、荷物を置いて囲炉裏端でお茶を出してもらった。


「なっちゃんは毎日、孤児院へ行って子供達と勇者ごっこをしていたね」


「楽しかったのー」


 なっちゃんが身振り手振りで勇者の戦いを表現しながら楽しそうに話している。

かっちゃんと、花ちゃんは微笑ましそうになっちゃんを見ている。

孤児院の出来事も報告しているね。


 なっちゃんの報告が終わったのを見計らって、かっちゃんを屋敷の外へ誘った。

かっちゃんに真偽官のレナートさんとの会話について話すためだ。

花ちゃんには聞かせてもいいがアリーナにはまだ聞かせられない。


「レナートさんに一級真偽官の魔眼について聞いたよ。精神汚染が見抜けるんだってね」


「そうらしいなぁ」


「結果から言うとアリーナは精神汚染を受けているってさ」


「ホンマか」


「俺には判らないけど、レナートさんが言うんだから間違いないだろう」


「そら厄介やなぁ。うちの知り合いには光の魔法も闇の魔法も使い手はおるけど、直ぐに連絡が着くのは……」


 かっちゃんは精神汚染と聞いて直ぐに理解を示した。

光と闇の魔法についても言及したしね。


「おぉ、さすがかっちゃん。伝手があるのか」


 長生きしている魔法使いともなればネットワークも相当広いのだな。

頼もしい。


「サムんとこの、おっちゃんやな。光の魔法の使い手としても水準が高いで」


「サムさんのお父さんか。それなら丁度いいね」


「そうやなギルスア王国の遺跡へいけば会えるはずや」


「予定が決まったね」


「アリーナに魔法を掛けた者がどれほどの闇魔法の使い手か知らんけど、おっちゃんなら大丈夫やろ」


 かっちゃんが太鼓判を押すくらいだから相当な光魔法の使い手の様だ。


 アリーナの件について話し終わったので囲炉裏端へ戻ってバッキンの店や、レナートから聞いたイチルア王国の騒動の顛末に着いても話した。

かっちゃんにしても真偽官による冒険者ギルドの大掃除は意外だったようで驚いていた。


 報告が終わった後で畳の部屋で寝っ転がった。

これは癖になるなぁ。

俺がゴロゴロしていると、みんなも囲炉裏端から畳へ移って来た。

みんなでゴロゴロしたね。


誤字修正。

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