39話 出発
この章では主にフィリアとシュノンバート視点で進みます。今回はフィリア視点です
翌日の朝、私達はジェクト隊長の指示通り、企業の本館の入り口に集まっていた。
ちゃんとバイス君も遅れて来なかったし、関心関心♪(まあギリギリだったけどね……)
「よっ集まったな」
企業の中から、シュノ君の先輩が時間通りに出てきた。今日もニコニコしてて爽やかだね。
「さて諸君! 今回はこの過酷なミッションにようこそ!」
「先輩……そんなよくわからないB級の司会みたいなことはいいですから、本題に入ってくれませんか?」
「……ショボーン」
なんだか半泣き状態でしゃがんじゃった……もうシュノ君ったら。イジメはいけないんだよ!
「ま、まあとにかくだ! 全員準備出来てるよな!」
「じゃなきゃここにいませんよ」
「シュノは俺になにか恨みでもあんですかね!?」
「こんな機会なかなかないですからね」
「しどい! まあ冗談はこの辺にしといて……」
「冗談だったんかい!」
この漫才みたいな会話に、即座にバイス君がツッコミをいれる。ああ……ダメだよバイス君……そんなことしたら……。
「バイス、君は僕が先輩をイジるような人間に見えるのかい?」
「全くだぜ……バイスには俺が後輩にイジられるような軟弱者に見えていたんだな……」
「うぉい! なんで俺様が責められとんじゃ!」
計算通り、と言わんばかりに、シュノ君と先輩がグッと親指をたてていた。うう……わたしも少し騙されてたよ……。
まあ……なんだか賑やかで楽しいけど、そろそろ出発の時間じゃないかな?
「あ、あの……時間が……」
「おっと、そろそろ出発だな!」
右手につけた腕時計を確認しながら、今思い出したかのような口振りで言う。
ほんとに大丈夫なのかな……? ちょっと……不安かも。
「とりあえず最初の目的地として、辺境にある村へと向かうぞー準備はできてる……よなバイス?」
「準備は大丈夫かいバイス?」
「バイス君なら大丈夫だよね?」
「えっ、えと……ですよね?」
「なんで全員して俺様だけ心配してんだ!?」
「だって……ねえ」
「なあ?」
意味深な雰囲気を醸し出しながら、シュノ君と先輩は顔を合わせると、同時にため息をついていた。
「おいこらなんだそのため息?」
「まあ知らないほうが美徳だよ」
「そーそー。強いて言うなら、バイスが準備してないと、俺たちこまっちまうからなぁ……なにしろ最高の戦力だしな!」
「ほほう、わかってるではないか! そう! この俺様こそスーパー無敵のナイスガーイ!! な、バイス様だっ!!」
先輩に誉め? られてバイス君は凄く元気になっていた。そうそう、バイス君はこうじゃなくちゃね!
……ほんとにこれで良かったのかな?
「よっし、じゃあ駐車場にジープがあるからそれに乗るぞー」
「はっ!! しまったあああああああ!!」
「どっどうしたバイス!」
「先輩に聞かなきゃいけないことがあったんだ……」
「なにかあったのかバイスよ?」
あまり見ないような真面目な表情に、先輩も真剣な表情になっていた。
「先輩……バナナは……おやつに含まれますか……?」
「………」
「ん? どうしたんだ先輩?」
先輩はとっっっっっても良い笑顔を浮かべると――
無言で拳を降り下ろしました――
なんだかんだで出発してから数時間後、わたし達はビル群から遠く離れた山の中を走っていた。最初の方は木々が生い茂げていて、鳥のさえずりも聞こえる綺麗な所だった。
けれど今は、所々木が枯れ、鳥どころか動物の姿をまるで見かけなくなっていた。
「この辺……なんか寂しいね」
「そうだね。さっきの森を通った後だと余計にそう感じる……」
寂しそうに外を眺めるレムちゃんに相槌をうつ。でも……なんか枯れかたが少しおかしい気がする。なんていうか、枯れてるというより、少し腐っているかのような……そんな印象をうけていた。
「まあそれも研究所の影響だな」
「どういうことですか?」
「あ、悪いシュノ。話してなかったな……」
ばつが悪そうに、頬をかきながら話を続けてくれた。
「この辺りの自然はよ、研究所の事故の影響でこんなになっちまったんだよ」
「どういう……ことですか?」
「薬品でも流出したってところか……」
「んにゃ、薬品じゃねーんだが……これはちょっと難しいし、おいおい話していくぜ」
なんだかはぐらかせられちゃったな……ちょっとモヤモヤする。みんなもそんな感じなのか、ちょっと表情が暗かった。
「いやーでもよ! これから行く村ってのはどんなんだろうな?」
バイス君を除いて……って言うの忘れてたね……でっでも、バイス君はいつもこうじゃなきゃ逆に変なんだよ! ほんとだよ!
「まあ期待はしないほうがいいよ。こんな辺境なんだ、裕福とは言えないと思うよ」
「まあそういうこと……っと!?」
「「キャア!?」」
「くっ!」
「うぉあ!?」
突然バランスを崩しながら、ジープはその場に停止した。いっ一体なにがあったの!?
「どうかしたのか!?」
「わかりません! 突然身動きが出来なくなりました!」
さすがの先輩も驚いたのか、運転手さんへの状況確認が少し乱暴になっていた。
「おい! あれ見ろ!」
バイス君の指差す先、そこには短剣や様々な鈍器、そして銃をもった人達がいた。その数は、約十人ってところだった。
うぅ……本当に治安悪いんだね……。
「あるもの全て置いてきなぁ!! 言うこと聞かねぇと……わかってるよな?」
「けっ……三流だな」
「ですね」
「シュノンバート、お前は援護。バイス、お前は俺と暴れろ」
「お? やるんだな? 指がなるぜ!」
バイス君……なるのは指じゃなくて腕だよ……
「レムとフィリアは残ってな」
「わ、私も……」
「サナがいないなかで戦うのは流石に危ないからな……今は言うこと聞いてくれ」
「……はい」
ぎゅっと握りこぶしを作りながら、レムちゃんは悔しそうに呟いた。わたしだって……ほんとは戦って皆を守りたい……でも足手まといなのは目に見えていた。
「まあいざとなったら二人とも頼りにしてっからよ!」
わたし達の気持ちを察したのか、先輩は明るく振る舞ってくれた。……前から思ってたけど、先輩って、少しレグ君に似ていると思うんだ。
そう言うと、先輩は右肩に銃を担ぎ、賊達を見ながら左手で手招きをした。
「さってと……盗みなんてする悪いドロボーさんに、正義の鉄槌をかましてやりますかねぇ……来な」
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