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第十四章 通信会社への潜入



翌日の深夜、遼と澪は次の行動のため、都心の巨大通信会社本社ビルへ向かっていた。高層ガラスの外壁に反射する街灯の光が、まるで都市全体を監視しているかのように二人を包む。昨夜の港湾作戦で得た情報と札の暗号から、永光会の情報ルートの核心はこのビルにあることが明らかになっていた。


「警備はどうする?」澪が低く尋ねる。遼は周囲の死角を確認しながら答えた。「正面突破は無理だ。非常階段と旧メンテナンス用の搬入口を使う。セキュリティの死角は限られているが、監視カメラは多い。タイミングが命だ」


二人はビル裏の地下通路に身を潜め、静かに非常口から侵入する。通路は廃棄された搬入設備の名残で、現行の警備システムとは接続されていない。澪は手首に仕込んだ小型カメラで周囲の様子を記録し、暗号化通信で海斗に送信する。彼女の指先はわずかに震えていたが、目は鋭く光っている。


内部にはすでに数名の職員と黒服の警備員が巡回していた。遼と澪は影に紛れ、地下倉庫に続く扉を慎重に開ける。中には、昼間に観察した木箱が整然と並び、慈善団体名と海外送金口座のラベルが貼られている。さらに奥には、大岩や郷誠会の幹部、そして通信会社の上層部の姿もあった。


遼は息を潜め、カメラのレンズ越しに光景を捉える。情報、資金、法改正案、そしてメディア操作の全てが、この小さな地下倉庫に集約されている。澪は録音機で会話を記録しながら、小さく囁く。「ここが永光会の心臓…全てがここから動いている」


突然、背後で金属音が響く。影の中から、港湾で見かけたホームレス風の情報提供者「先生」が現れ、低い声で警告した。「ここから先は本当に危険だ。しかし、動かなければ全てを奪われる」


二人は木箱の中の書類と機器を慎重に撮影し、データを暗号化して持ち出す。もしこの瞬間に発覚すれば、全ての証拠が永光会の手に落ち、国家の中枢を揺るがす真実は闇に埋もれるだろう。


やがて黒服たちが巡回を終え、地下倉庫から退出する。遼と澪は息を潜め、非常階段から地上へと脱出する。外は冷たい夜風が吹き、都市の明かりが二人の影を長く伸ばしていた。


「次は、この情報を確実に公知化する段階だ」遼は澪に言う。澪は頷き、二人は都市の闇に紛れ、次の行動の準備を整えた。永光会、政界、司法、裏社会を巻き込む戦いは、ついに核心へと迫りつつあった。



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