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91話 変なおにいちゃん

♢♢♢



ガチャッ


何度かノックをしたけど返事がなかったので、ざこにぃの部屋に勝手に入ることにした


「ゔっ…」


ちょうど開けたタイミングで苦しそうな呻き声が聞こえて少しだけ心配になる


「え?なに?どうしたの?」


「ん?…あぁ。なんでもないが」


ざこにぃはベッドの端に腰掛けて、布団を膝掛けのようにしながら小刻みに震えていた


「えっ…もしかして寒気がするとか?風邪?…」


「ん?いやそんな事は全然ないから心配すんな」


「でもなんか汗掻いてない?…」


「そりゃ冷や汗くらいかくわ。こんな状況ならな」


こんな状況?何も起きてないけど


「あっそ。大丈夫ならいいけどさ。それよりルナちゃん見なかった?」


「ん?あぁ。あのアホな。知らなッ…ぐぅ!…」


「え!なに?大丈夫?」


突然苦しそうに顔を歪めた後、自分で掛けた布団を遠ざけるように両手で押し退けていた


「ん?あぁ、大丈夫だ。余裕過ぎてこんなもんかよって思うレベルだ…ッ!ぐぅ…ちょま…」


ほんの一瞬、膝掛け代わりの布団が激しく揺れた気がするけど、もともと震えてるから気のせい?


「えっと……布団邪魔ならどかしたら?…」


「いや邪魔じゃないって。ある方がちょうどいい」


ん?また少しだけ布団が動いた気がする。見間違い?


「ふーん。でも晩御飯出来たし、そろそろ降りてきてくれない?」


「あー…すまん。後で食べるから先食べててくれ」


「後って……みんなで食べた方が美味しいのに…」


「ん?あ〜…だよな。今のうちにルナのアホでも探して来たらどうッ……ぐぅっ…」


また布団が少し動いてざこにぃの体が跳ねた。てゆーかさっきから小刻みに動き続けてる気がする


「…………ねぇ、さっきからお布団動いてない?」


「ん?あぁ。ちょっと貧乏ゆすりが止まらんくってな」


「はぁ…体調悪くなくて貧乏ゆすりするくらいお腹空いてるなら早く降りてきてよ〜」


降りてこない理由が全く分からなくて、呆れた様に目を瞑って上を向く


「分かってんよ。ちょっと待っ…ぐッ!ーー


ジュルルルルルゥーー


「?……なんの音?…」


ざこにぃの方から何かを吸い上げる音がして、驚いて目を開けた


「…な……なにしてんの?…」


視線を向けると、そこには自分の指を口に咥えてチューチュー吸っているざこにぃが居た


「くっ…あぁ…これか?緊張をほぐしてるんだ。テスト前によくやる奴な」


「いやそんな効果ないと思うけど…」


「何言ってんだよおまえ。赤ちゃんの時自分の指咥えて落ち着いてたろ?それと同じーー


ジュルルルルルゥーー


「…くっ…」


「……最後まで喋ってから吸ったら?…あとなんでそんな苦しそうなの?」


緊張をほぐすとか言っておきながら、ざこにぃは前のめりになったり、時折布団を力一杯に手のひらで押し退けていた


貧乏ゆすりを制御できないのも大変だと思う…


「はぁ…はぁ…苦しいに決まってんだろ。喉奥まで出たり入ったりしてんだぞ…」


「そんなトコまで指入れる必要ある?…」


「…んなことよりそろそろ下行っててくれ」


「…えー…ルナちゃんも居ないしで暇なんだけどー」


そんな追い出すみたいな言い方しなくてもいいじゃんと思ってしまった。今日はお礼も兼ねてご馳走だから三人で食べたいって言ってるだけなのに……


「……やべ…もうでる……」


気付いたらしんどそうに目を瞑って、ベッドの端から逃げ出すみたいにざこにぃはお尻をベッドの中央に動かしていた


でもどーゆう原理なのか、腰がスルスルと引き摺られるようにベッドの端に吸い寄せられていく


「…え…出るって?…」


「ぐっ…はぁ…き、決まってんだろオナラだ」


「えっ…ずっと我慢してたの?…」


「我慢してるし耐えてるけど……もうムリそうだ」


「えぇ……それじゃ愛梨はそろそろ出るね。ルナちゃん探してくるから〜…」


臭いのはイヤなので背を向けてドアに手を掛けるけど、ざこにぃの返事は全くない


気になって振り返ると、ざこにぃは体をビクビクと痙攣させながら背中を丸めて下を向いていて、両手はさっきと違って押し退けるんじゃなくて、力一杯お布団を股間に押さえ付けていた


「……へ、変態?…」


今のざこにぃは完全にヤバい人だし、放置してルナちゃん探そ


ヤバい人が居る部屋のドアをそっと閉めると、部屋の中から少しだけ微かな音が聞こえた


ゴクン ゴクン


「はぁ…喉鳴らすくらいお腹空いてるなら早く降りて来てよねぇ〜」


背中を丸めながら前のめりになって、オナラしつつ股間を布団で押さえ付ける変なおにいちゃんをこの日初めて見た


♢♢♢

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