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87話 れんれん号!前進!



「なんでもないって言ってもさ。明らかに痛そうに見えるんだけど?…」


「だから大丈夫だって。気にすんな」


「ホントだぁ〜。れんれんだいじょうぶ?ナデナデいるぅ?」


自分で俺の脚踏んどいてよくそんなこと言えるな…


「いやおまえ何言ってん「きゃ〜!」


突然悲鳴を上げたと思ったら、ルナは後ろに居る俺に激突してくる


「ちょ…大丈夫かよおまえ」


脚を踏んだ奴の心配をしてしまうのはちょっと俺らしくない気がするが、急だから仕方ない


「ルナちゃん大丈夫!?」


「脚が疲れちゃった〜…れんれんおんぶして〜」


「はぁ…そんだけかよ。今まで平気で歩いてたろ」


「歩き疲れちゃったよ〜。プニクロまで案内するから脚だけ代わりに動かしてよ〜」


「断る」


酸っぱいモノでも食べた後みたいな顔して甘えてきやがってルナの奴…


「ざこにぃおんぶしてあげて?愛梨のせいで沢山歩かせちゃったんだし…」


いや俺は走り回って探したんだが……まぁルナもそんな俺について回って疲れたのか


「しょうがねえな…分かったよ」


「ありがと。ざこにぃ」


「れんれんはやくぅ〜!脚がおんぶしてってうるさいよー」


「いやうるさいのはおまえな」


突然脚が疲れるとか訳分からんが、しゃがんでルナが背中にしがみつくのを待つ


暫くしないうちに、背後から俺の首に腕が巻き付いて、それと同時にドッシリと体重が掛けられて来た


「んじゃ上に参ります」


「はーい」


腕をルナの太ももに挟み込んで腰を上げる。背中に当たる胸の感触が柔らかいと思ったが…


そんなに柔らかくないな。なんかちょっとブラジャーの芯?が張ってて非常に残念だ


「なんか残念そうな顔してない?ルナちゃんのことおんぶ出来るんだから嬉しそうにしなよ」


「そーだそーだ!あほれんれん!」


「へいへい…」


しょうがないだろ。こんな深く首に腕が巻き付いて密着して来たら柔らかい感触が伝わってくると思っちゃうだろ


「ではれんれん号!前進!」


「おー!ざこにぃ進めー!」


本当に高校一年かよコイツ。クソガキ過ぎる。耳元で大声出すのはダメって教わらなかったのか?


「おい。音量下げてくれ…」


「…ふぅ〜…このくらい?…」


耳元で息を吹きかけて来たと思ったら、追い討ちを掛けるように囁いて来る


「極端すぎる」


「…愛梨ちゃんには聞こえてないね〜…」


「…分かったから囁くな…」


前を歩く愛梨には聞こえない声量で囁いてくる。もしかしておんぶは愛梨に聞かれたくない事を話す為か?


いやそんな訳な「で、誰に童貞くれてやるって?」


そんな訳あったか…


「…おいルナ。おまえこんなギリギリな事してたらいずれ愛梨に黒い一面がバレるぞ」


「……質問に答えて〜…」


「うぐっ…」


首に巻きついた腕が徐々に締まって来ている。そんなにもルナにとってあの発言はNGワードだったか


「あっ!ルナちゃんココ右〜?」


「そうそう〜」


愛梨が後ろを振り返った瞬間、両腕はすぐに緩まって、ルナの顔も俺の耳元から遠ざかった


もしかしたらこの状況を切り抜けるには愛梨に話しかけるのが一番かもしれない…


「なぁ愛梨。おまえはどんな服が欲しいんだ?」


「チッ」


耳元で舌打ちが聞こえたと同時に愛梨が俺の方を振り返って質問に答えてくれる


「そんな事より愛梨お手洗い行きたい……もうずっと行けてなくて我慢できないんだよね」


マジっすか愛梨さん


「うおぉい!なんでだ愛梨!お兄ちゃんが尋問受けてもいいのか!」


「何言ってんの?ほらちょうど目の前にあるからちょっと行ってくるね」


「いってらっちゃ〜い!待ってるねーん」


「ありがとー」


歩くのが辛いくらい我慢したのだろうか。ゆっくりとした足取りで愛梨はトイレに歩いて行った


「「…………」」


取り残された俺達はこのまま無言がいい。いやホントに無言でいい。喋るなよルナ


「で?」


俺の後ろを取ったのはやっぱりこの尋問の為だったか…脚が疲れたとかはウソだろうな


「ん?その言葉だけで会話が成立するほど日本語は簡単じゃないぞ?」


「じゃあ言うけどさ。れんれん前に言ってたよね。愛のないえっちはしないんだって。そう言ってたもんね?」


トイレの前でおんぶしたままこんな会話をする日が来るなんて思いもしなかった


「あぁ…言ったな…」


「ならお礼で童貞あげるとか言っちゃダメだよね?確実に拒否されると思うけどダメだもんね?」


「あぁ…男でも女でも言っちゃダメだな…」


相手がお礼で要求してきた場合はその限りではないと言いたいが、そんな可能性なんてないし余計な事は言わない方がいい



「うんうん。自分で言ったもんねぇ?今れんれんが童貞なのもその発言のお陰だもんね?」


「?…お陰とは?…」


「愛のないえっちがダメって言うから寝てる間に何もされずに済んでるんだよ?…」


「お、おう。そうだったのか…ありがとな?」


まさかあの言葉がそんなに響いていたのか…なんかちょっと嬉しいわ


「…………」


「なんだよ?」


お礼を言ったら急に無言になってしまったが、数秒してから首に巻き付いた腕に力が込められていくのを感じた

 


「ほんっっとに感謝してよ?こっちはれんれんのワガママで好きにさせようって奮闘してるんだから冗談でも他の女に童貞くれてやるとか言わないでくんない?」


かなり怒ってるな。また首が締まって来てるんですが…


「ぐっ…」


くっそ…このまま正論パンチで終われるか。こうなったら一目見た時から思ってた事言ってやる。愛梨は褒めろって言ってたが俺にはムリだ


「…似合ってない……」


「なにぃ〜?聞こえなーい」


「おまえのその服装、似合ってない。普段の可愛いおまえが好きなんだが。もしかして俺の今日の様子を見てそんな事も分からなかったのか?」


「…………」


暫くの沈黙の後、首に回された腕はゆっくりと力を失ってだらんと垂れ下がっていった


「……なんだ?おまえ何も言い返せないのか?…」


「…………」


「ごめーん!遅くなっちゃった!ちょっと鏡の前から離れられなくて…」


愛梨がトイレから帰って来ても無言を貫くルナに違和感を感じながらも、俺は脚を前に進めた


「気にすんなよ。ほらいくぞ」


「うん!…ってあれ?ルナちゃんどうしたの?」


「…………」


「いや、ちょっと前からこんな感じだ。大丈夫そうか?」


「えっと…どうだろう…」


愛梨が返事をしてすぐに、ルナは無言のまま俺の首に腕を巻き付けてきた


似合わないと言われて怒っているかと思ったが、さっきとは違い優しく包み込むような抱きしめ方だった

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