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83話 ナンパ

♢♢♢



賑わうフードコートの中、テーブルに肘をついてスマホの画面を夢中になって見つめていた


「ざこにぃとルナちゃん遅いなー」


集中力が切れて、一息ついた時に改めて周りを見渡すと、近くの席の人と目が合う


サッと勢いよく目を逸らすけど、椅子から立ち上がってこっちに向かってくるのが分かった


「あれ、君ひとりー?」


軽いノリでそんな事を言ってくるけど、この人さっきから居たような?……


「あ…いえ、全然一人じゃないです」


ちゃんと一人じゃない事を伝えても、ざこにぃが座っていた対面席に気付けば平気で座っている事に驚きを隠せない


「えー……」


「そんな驚いてどうしたん?俺がイケメンすぎるって?いやそりゃ照れるな〜」


「あはは。…そうですねー」


大学生さんかな?私服だから分かりずらいけど高校生ではなさそう


「めっちゃ集中してたじゃん。ゲーム?」


「…そんな感じです…」


「カフェとかじゃなくてここでやるの珍しいよね」


「えっと……暇だったので…」


この人……胸元が開いてる上に香水の匂いも凄いし遊び慣れてる感が凄い…


もしかして二人が来るまでこんなの相手しながら待たなきゃいけないの?


「そっかそっか〜。俺もめっちゃ暇なんだよねー。良かったら遊ばない?」


「大丈夫です」


「お!おっけーってこと?いいね!いこいこ〜」


「あの、結構ですっていう意味なので…」


まだ高校生にもなってないのにナンパとかあるんだ。愛梨もルナちゃんみたいな男の子みたいな服装で来ればよかった


「いやいやそんな〜。そんな事ないっしょ〜!照れてるっしょ〜」


「照れてはないです…はい」


「そーいやさっきラーメン食べてたよね?水持ってるんだけど良かったら飲む?」


え!いい人!


「はい!欲しいです!」


本当に喉が渇いてて困ってたところだった。大体のフードコートはセルフの給水機があるのにココにはないから



「お!可愛い笑顔だね〜。はいコレ」


「あ、ありがとうございます」


すぐ手渡されたペットボトルを見ると、水は減ってなくて新品なのが見て分かる

   

こんな善意しかない人を遊び人とか思っちゃうとか愛梨の目は節穴かもしんない…


飲みたい気持ちを抑えられなくて、ペットボトルのキャップを捻って自分の口に運ぼうとした時だった


…あれ?新品のペットボトルって捻ったらピキピキって音しなかったけ?


まぁそんな事どうでもいいよね


『ペットボトルのキャップが開封済みだったコトかなー…』


「ッ…」


唐突にルナちゃんの言葉が頭をよぎって、ペットボトルをゆっくりとテーブルに置いた


え、ちょっと待って。…コレ飲んだら寝る?…いやそんな事ある訳…


「どうしたの?ん〜?早く飲みなよー」


「えっと…やっぱり悪いかな〜って」


強張った笑顔で言葉を返すけど、この人もまたニッコリとしていて不気味だった


「ラーメン食べた後はどうしても喉渇くじゃん?ほらグッといこうよ!」


さっきは疑問に思わなかったけど、この人は愛梨がラーメンを食べる前から居て、食べた後も居る


しかもこの人…何も注文してなかった気がする。ならなんの為にフードコートに居るの?


「……えっと……」


ダメだ。目的が分かってくると恐怖で言葉が詰まる。愛梨もう確信した。コレ飲んだら寝る。絶対に


一呼吸置いて、頭を掻きながら一瞬だけ視線を動かしてざこにぃを探す


「そんな遠慮しないでさー。全部飲んじゃっていいからさ!」


ダメだ……居ない。超人のざこにぃが居れば一瞬で解決するのに


「あ、あの!お手洗い行ってきますね!お水ありがとうございました。ここに置いておきます!」


できる限りの笑顔を浮かべながら、早口にお礼を済ませて席を立つ


こうなったらもう自分から合流するしかない!


「ココはトイレまで結構距離があるからね。場所も少し分かりずらいし俺が案内するよー」


「一人で大丈夫ですよ。ありがとうございます」


必死に笑顔を張り付けるけど、じんわりと手汗が出てきて自分が緊張と不安に駆られてるのが分かる


「いやいや〜心配だからさ〜。ついてくって〜」


気付けば愛梨の隣を歩いてて、香水のむせかえる様な匂いに拒絶反応が起きそうになる


「いえいえそんな……ケホケホッ…大丈夫です…」


「おやおや大丈夫?水飲むかい?」


「結構です。あとしつこいです」


フードコートを出てすぐに、通路の両側にトイレの案内板が目に入った

 

えっ?右も左もトイレ?……スマホに集中してたから二人がどっち行ったか分かんない


「右じゃないかな〜?」


「ならあい…私は左に行きますので。失礼しました」


危ない。自分の名前を言っちゃうトコだった


「じゃあ俺も左いこっかな〜」


「ついて来ない方がいいと思います…」


ざこにぃとすれ違ったらこの人の顔めちゃくちゃになるんだろうなぁ

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