82話 真なる男
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「ふっふっふ。着いたね」
外川駅から少し歩いた先にある自動ドアに脚を踏み入れると、カップルや子連れの家族が居るエントランスに出た
「案外近かったね。ここはショッピングモール?」
「ふっふっふ。正解だよ愛梨ちゃん。ここはリーフタウンって言う名前のモールなんだよね」
「へぇ〜愛梨初めてきたー」
さっきからずっとこんな話し方で違和感が拭えない。いつもの可愛らしくて憎めないのが俺は好きなんだが……
「なぁルナ。今日はその話し方でいくのか?」
「よく聞いてくれたねれんれん君。今日のルナ…コホン。僕は男の子と言っても過言じゃないんだよ」
「スカート履いてるのにか?」
パンツを履いている事を自覚させる為に、後ろからルナのスカートを捲りあげた
これはいつぞやのヒラヒラが付いたピンクのパンツじゃないか
「ざこにぃ…な、なにしてんの…」
「あっ…すまんつい…」
「……そ、そんな事をされてもル…僕は動じない」
「…そうっすか…」
今日一日中こんな感じなのか…なんとかして男じゃない事を分からせたい気分に駆られるな
「コホン…まずはお昼ご飯だねぇ」
「おー!」
「…うっす…」
まぁ二人が楽しそうだしいいか
それから雑貨屋や店舗の間を歩きながら、ルナと愛梨は並んでフードコートの看板を探していた
「何食べよっかな〜」
「そうだね愛梨君。ラーメンもいいし、手頃な定食も捨てがたい……ル…僕は男の子だしココはラーメンかな」
「なら愛梨もラーメンにしよ〜」
「………」
俺は無言で二人の後ろを歩く。今の気分は妹に彼氏が出来たのを後ろで見守る兄のようだ
「ざこにぃもラーメンでいいよね?」
「ん?ああ」
「れんれん君。寂しそうな顔は似合わないよ。フッ」
「うっせ。余計なお世話だ…」
いずれ愛梨に彼氏が出来る日が来るんだよな。そんなのは当たり前だけど……なんだかなー
♢♢♢
暫くしてフードコートに着くと、各店の香ばしい匂いが入り混じり、俺のお腹も限界だった
でも多分それは二人も同じだろう。既に注文を済ませて席に座っているが、なにも話さないからだ
「へいおまち!」
俺たち3人が頼んだラーメンは同じで、困った事にこーゆう時って大体一つずつしか来ないんだよな
だが俺は紳士。こんなん愛梨に渡す一択に決まっている
無言でテーブルの上のラーメンを愛梨の方に滑らせるが、愛梨もまた無言で隣のルナにラーメンを滑らせて行った
「くっ……愛梨ちゃん。遠慮しないで」
一瞬迷った様に見えたルナだが、ラーメンを愛梨に滑らせていく
「…る、ルナちゃん待たせちゃったし。だから…」
「気にしてないよ!ル…僕は気にしてない」
「で、でも悪いし!」
こんなやり取りが3分近く続いて、俺はテーブルを往復するラーメンを無心で見続けていた
♢♢♢
「美味しかったな」
「「うん、美味しかった」」
「ん?…」
ルナの奴、全くスープ飲んでないな。まぁ女の子に脂っこいものは…………ん?待てよ?
そーいえば今は男の子とか言ってたよな
「ルナ。スープ飲まないのか?」
「飲まな〜い。油ギッシュなんだも〜ん」
食後で気が抜けたのか、いつもの口調に戻っている
「俺は飲んだぞ。男たるものスープを飲むのは基本なんだが?」
「………ざこにぃ…魂胆が見え見えなんだけど…」
流石にバレるか。だがバレても実行するのはルナだしな
「くっ…ルナ…じゃなかった僕は男の中の男。スープくらい…よ、余裕だし…」
「だよな。俺もそう思うわ」
「も〜…」
呆れ顔の愛梨をよそに、ルナはどんぶりを持ち上げてスープを一気飲みした
「おまえそれは真なる男だわ…」
俺が課した試練をこうも容易く突破するとは…
「ふぅー……余裕〜」
飲み切ったルナは息を吐きながら愛梨にもたれ掛かり、力が抜けたみたいに脱力した
「食後の余韻って奴だな。ちょっとゆっくりするか」
「ゆっくりするー」
二人はのろのろとスマホをいじるが俺はやる事がないので椅子にもたれるくらいだ
いやこの時間を使ってトイレに行った方がまだ有意義ではあるか。距離が近い訳でもないしな
「ちとトイレ行ってくるわ」
「僕も行く〜」
一瞬誰かと思ったがルナか。やっぱり慣れないな
「すまん愛梨。ちょっと待っててくれ」
「はーい」
椅子から立ち上がりフードコートを抜けると、ルナがトコトコと俺の真後ろにぴったりとひっついてきた
「…鬱陶しい。普通に隣歩いてくれ」
「えぇ〜どうしよっかな〜。今はれんれんで遊びたい気分なんだけど〜?」
そう言いながらも、心なしか弾んだ足取りで俺の隣にちゃんと移動してくる
「少なくともおまえが俺に遊ばれる側だけどな」
「ルナはそうは思わないんだけどなぁ…」
「口調戻ってるぞ。今日は男の子じゃなかったのかよ」
「あっ!…そうそう……僕は真なる男の子だよ」
「じゃ一緒に男子トイレ入ろうな」
「……は?…」
なに言ってんだコイツと言いたげな顔で俺を見上げるが、もちろん俺は動じない
「男が女子トイレに入ったらいかんだろ?そんな事も分からないのか?」
「ムリに決まってんじゃん!ホース付いてないんだもん!」
「なら座ってしたらどうだ?真なる男のルナ君」
「ねぇ…今そーゆうのいいから。本気で言ってるのれんれん?」
「当たり前だろ。真なる男はホースが無くてもなんとかするんだよ」
「………ルナ女の子だも〜ん。男子トイレなんて恐れ多いも〜ん」
「服買うのは愛梨の分だけでいいかー」
「くっそ……ぼ、僕は真なる男の子。ホースが無くても余裕。そう…余裕…」
ルナの足取りは徐々に遅くなり、やがて俺の視界からフェードアウトしていく
「逃げようとしてるのバレてるぞ」
俺は振り向かずにルナの肩を掴んで、抱き寄せる様に寄り添いながら歩いた
「…むぅ…」
「ほら。おまえが遊ばれる側だったろ?」
「…むむぅ…」
ほっぺをパンパンに膨らませて抗議してくるが、肩を抱き寄せられたルナは全く抵抗しなかった
そんなに服買ってほしいのか……




