65話 甘くて優しくて最高って訳
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ゴールデンウィークから暫く経って、今日は金曜日。来週には中間テストが始まる
そんな日の昼休み。俺は九条のお弁当を食べる為、生徒会室に来ていた
「遅かったわね。それじゃ隣に座って」
「あぁ…すまん」
何故だかは分からないが、九条は俺に寛容な気がする。ちなみに20分の遅刻だ
遅れた理由は鎌田くん達に普段の九条がどんな奴か聞いて来たからだ……
そしてたどり着いた結論だがーー
九条は俺に甘くて優しくて最高って訳。もう好き
理由は全く分からないけどな…
「蓮くん。そう思うなら早くこっちに…」
穏やかな表情でそんなことを言う九条は、椅子を手のひらでトントンして俺を誘ってくる
指の動きも落ち着いていて、待たされた事に不満はないように見える。もう女神だな…
「あぁ…すぐ行く」
隣に座ると、九条は机の上の書類を端に寄せて、二段のお弁当を俺の目の前に置いてくれた
そしてフタを開けると、ふっくらとした卵焼きを箸で摘む
「はい蓮くん。あーん」
机の上に弁当を広げる度にコレやってくるのどうなんだ?…俺を幼児退行させたいのか?…
「だからそれはいいって」
「そんな…….朝早く起きて、蓮くんの為に作って来たのに……しくしく…」
しくしくって言う人初めて見たわ……
「弁当は要るって。箸だけ貸してくれないか?」
「また照れてるのね。はい、じゃあ口を開けて」
何がなんでもあーんさせたがるウチの生徒会長どうなんだホントに……
九条はゴールデンウィークあけからこんな甘々な感じで、ガツガツ距離を詰めてくる
「…いいから箸くれよ。頼むから」
俺がこんな落ち着いた言い方なのは、食材費は要らないと言われているからだ……
つまり粗暴な態度は取れないし取りたくない
弁当を見ても気合いが入ってるのが分かるしな…
卵焼きに鶏の照り焼きと、ピーマン炒め。それから鮭おにぎりだ。端にはイチゴも少しあるゾ
「仕方ないわね…手を出して…」
「はい」
言われてそっと手を出すと、俺の手のひらをガッチリ絡めて恋人繋ぎをしてくる
もちろん箸はない。なんか消えてる
「「…………」」
そしてこんな事をされるとお互い当然沈黙する…
「近すぎ。あと手を離してくれ…」
距離は肩がぶつかるくらいだ。いやぶつけて来てる
「…つまり大好き。付き合いたいってこと?」
流石にそれは飛躍しすぎだろう。ルナと一緒にブラジルまで飛んで行ってるレベルだ
「………大好きなので箸を下さい……」
「ふふ。しょうがないわね。どうぞ召し上がれ」
笑顔が天使なのでなんでもいっか
でも毎回食べる前に俺で遊ぶの飽きないのか?…俺の事をなんとも思ってない事くらいは分かるぞ
♢♢♢
「……どう?美味しい?」
「うまい。この甘めがいい感じだな」
「少し砂糖を多めに入れちゃったけれど。そう言ってくれると思っていたの」
綺麗すぎる九条の微笑みに、少しだけドッキリンコしたがホームランちゃん程ではなかった
やっぱりホームランちゃんは最強だったんだな…
「………あら。他の女の事を考えながら食べるお弁当は美味しいかしら?」
ギクゥ
「ゔっ…いや考えてないけどな…」
危ない。むせるとこだった…
「ホントかしらね?ゴールデンウィークのお誘いは全部断られて既読無視なんだもの…しくしく…」
「…だからごめんって。ずっとバイトしてたんだって。頼むから信じてくれよ…」
もう何度目の釈明だよこれ……それにしても信用ないな俺…
「冗談よ。そろそろ信じてあげる。…それより今日は金曜日ね?チラッ」
自分でチラッって言う人も初めて見たぞ俺は…
「金曜日がなんだ?…」
美味しずる鶏の照り焼きをもしゃもしゃしながら、九条の方を見る
「もーう。蓮君ってば忘れたの?お弁当のお返しは放課後デートでも良いって言ったじゃない……」
そーいえばそんな事RINEで言ってたな。忘れてたわ
分からせる必要がない九条の事はあんまり頭に入ってないんだよな。この人欠点なさそうだし……
「あー……だな。じゃあデートするか」
あくまでお弁当のお礼だ。なにも起きないだろ
「ありがとう蓮くん。放課後に3組にお邪魔するわね」
いや俺の仇名がレイパーなの忘れてないかこの人…
「3組に来たらここで一緒に弁当食べてる意味ないだろ。やめとけって」
「心配してくれてるの?優しいのね……でも最近はそんな仇名なんて些細な事だと思うのよ」
レイパーが些細な事なんて俺ないちゃうよ…ぴえーん
「お、おう。…なんでそう思うんだ?…」
「仇名程度で一生が潰されるなんて事…ないからよ」
「……お、おう?」
仇名も結構心に響くモノもある。バカにできないぞ?と言いたかったが…
窓の外を眺める九条の瞳からは、憂いのようなモノが見え隠れしていた
だから俺は黙って弁当とイチャイチャしていた




