109話 処女じゃなくなるけどいいのか
少し眠気が来ていたのに、俺の脳は処理が追いつかない衝撃で一気に覚醒した
「なんか頼まれたんよね…のあちゃんと仲良くしたいんだけど、アンタが居たら仲良くなることなんてムリだって。だから暫く離れてくれないかー?って言われてさ。でもそんなんタダって訳にはいかんし?だから3万ならなんとかってね」
あまりに終わってる発言に目眩がして、俺は床に手をついてしゃがみ込んだ。
圧倒的なゴミがここにいる。近い将来"お金くれたから殺した"とか平気で言う奴になるんじゃないか?大丈夫なのか?
"大丈夫なのか?"ってなんだ?まるで俺がこんな奴を心配してるかのような思考だぞ
「…え?だ、大丈夫?体調わるいん?」
顔を上げると、ベッドの端から俺を見下ろす川島の表情は、本当に心から心配しているようだった
瞳も同様に不安と驚きが入り混じっているかのように揺れていて、嘘じゃないと思わせられる
「ふぅ……大丈夫だ。念の為聞くが、そのお金を何に使った?…」
「貢いだ」
「なぁ…金欲しさに友達売るとか恥ずかしくないのか?西城がどんな思いでおまえと一緒に居たか知ってんのか?」
「過去の話しても建設的じゃないんよねー」
「過去じゃねえよ。これからのおまえの話してんだよ。これが何度目か知らないけどさ、そんなことばかりしてるといつか痛い目見るぞ?」
「そんなの先輩くんに関係ないんよね〜」
「今はある。とりあえず彼氏はおまえの事なんとも思ってないから別れろ。いいな?」
「……う〜ん。今彼氏関係ないんよね」
全く話が通じないな。たぶん何を言っても関係ないで終わらすんだろうか。
いつか痛い目を見るじゃダメな気がした。川島はきっと今すぐに痛い目を見る必要がある
「まぁ……こーゆう分からせ方もあるよな」
俺は独り言を呟きながら、クローゼットを開けて箱と瓶を取り出す。この二つはルナが自尊心を取り戻す為に俺の童貞を奪おうと持ってきたものだ
ずっと使い道なんてないまま、ただクローゼットに眠っているだけだと思っていたのに残念だ
「何してるーん?」
疑問をぶつける声がして、すぐに箱をベッドに投げる
「……へ……ま、まじ?…」
数秒箱を見つめた後、川島は手に持っていたスマホを床に落としてパッケージを読み始めた
「う、薄すぎて止まらない…今宵も貴女と熱い夜を……う、うすぴた?」
「彼氏にRINEしとけ。明日お金持っていけるけど処女じゃなくなった。ごめんってな」
「ちょっ…ちょ!ま、待ってよ!ねぇ落ちつこ?こ、こんなのおかしいって!」
ようやく今から何が起きるか理解した川島は、狼狽えながらもベッドの端に後退りしていった
わざわざ壁際に行く時点で相当混乱しているのが分かる。きっとこんな事になるとは思ってなかったんだろう
ギシッ
俺がベッドに膝を突いてゆっくり近づいていくと、川島は壁に全身をピッタリとくっつけて固まっていた
「………」
「な、なんで無言なの?本気?冗談?」
「本気。てかおまえキスしたことある?」
「まだ…ない」
「じゃそれも貰うわ」
「な、なんでぇ…なんでそうなるぅん?…」
縋るような、そして涙ぐんだような声で俺の事を見つめて抗議してくる。どうせ演技なので無視して両腕を掴み、ベッドに押し倒した
「いつか痛い目を見ると言ったがそれが今になっただけだ。気にすんな」
「…い、妹ちゃん起きてるんじゃない?バレたらマズイと思うんよねー」
「……………ちょっと確認してくるから待っといてな。逃げたらどうなるか分かるな?」
額に汗を滲ませながらも、コクコクと頷いてくれた。たぶんだが逃げない。直感でそう感じた
「じゃ行ってくるわ」
愛梨が起きてるかどうか確認するついでに精力剤を手に取って部屋を後にする
♢♢♢
愛梨は寝る時ASMRを聴く子だ。もちろん男の……
だから今の時間帯はASMRを聴きながら寝落ちタイムというのは間違いない。でも確認は必要だろう
コンコンッ
「………」
愛梨の部屋をノックしても全く返事がない。いつものことなので音を立てずにゆっくりとドアを開けると、案の定ベッドの中でASMRを聴いていた
「えへへ…♪うん愛梨も〜」
「愛梨はスーパーウンコマン」
「えへへ…♪えぇ〜?愛梨もそう思〜う」
「やっぱりスーパーウンコマンだったか」
大丈夫そうだしさっさっと精力剤飲むか
♢♢♢
精力剤を飲んで部屋に戻ると、俺はただただ絶句するしかなかった
「はぁ…はぁ…遅かったね!男の子ってコン◯ームないと何も出来ないってよく聞くし、全部破っといたんよ〜」
俺のベッドの上には、無惨にも破り散らかされたコン◯ームが大量に干上がっていた
まさしくこれは生き残る為の最善手だろう。本当に凄い対応力だ。川島の勝ちと言ってもいい
正直悔しいが、油断が過ぎた。こんな失敗もあるのか
「………」
「あと迷惑料で追加で一万貰っとく!それじゃソファで寝るからー。おやすみ先輩くーん」
俺が居ない間に財布から更に一万を取り出して、合計ニ枚の諭吉を手に持って俺の横を通り過ぎて行った
こればっかりはしょうがない。男はゴムないと何もできんしな……
きっと他の誰かが川島に痛い目を見せてくれる。何処かでこんなやり方を改めさせてくれる誰かに出会える事だろう
どうして金で売った西城にそこまで嫌われたくないのか最後まで分からなかったが、なんかもう考えるのも疲れたな。寝よ
「…情け無い…」
「ッ…」
しかしすれ違いざまにそんな言葉が聞こえ、俺は本能的に諭吉を奪い取って頭上に掲げた
「へっ…?な、なにをしてんの?」
今の俺はどうやら情けなく映っているらしいからな。流石にこんな事をされた上に、こんな事を言われたんじゃ俺もやるコトやるしかない。分からせる為に覚悟を決めよう
「このニ万でおまえ買うわ。情け無い男のまま終われないっておまえが気付かせてくれたからな」
「ちょっ!何言ってるん!?そのニ万は迷惑料と話の代金なんよ。すぐに返して!」
「でも今は俺の手にあるんだから俺の金だ。今からおまえでも届くよう、ちゃんと降ろしてやるけど受け取ったら取引成立な」
「仮に取引が成立してもゴムもないしで詰みなんよねー。先輩くんは何も出来ません。ざんね~ん」
「そう思うなら受け取れよ。ほら」
高く掲げていた腕を降ろし、川島の目線の高さまで持ってくる。
「………」
すぐに受け取るのかと思ったが、川島は暫く硬直してしまい、それから10秒程経ってようやく考えがまとまったのか諭吉にゆっくりと手を伸ばした
後少し、あと少しで掴むところだが最後通告だけは言わなきゃならない
「処女じゃなくなるぞ……いいのか?」
「き、気付いたんよね。"コレ"ただの脅しだって」
「………」
アホすぎて言葉がでない
「はい図星のだんまり!それじゃソファで寝るね。おやすみー」
パシッ
勢いよく諭吉を奪い取り、川島は俺から背を向ける。でも脅しでもなんでもないので、川島をお姫様抱っこで抱き上げてベッドまで運んだ
「あれ…あれー……」
「寝かせねーよ。寝る前にやる事あるだろ」
「えっ……う、うそ…脅しでしょ?…」
呟くだけのお姫様を無視してベッドに横たわらせると、すぐに俺の顔面にビンタが飛んでくる
パシンッ!と乾いた音が部屋に鳴り響くが、このくらいの可愛い抵抗じゃ俺は止まらない。無視してすぐに川島の上に覆い被さる
「…ど、どう?ちょっとは改める気になったんかなっ〜て思うんだけど…」
「……そうだな。じゃまずはキスからだな。こーゆうのは愛が……ってなんだそのうるうるした瞳は」
川島を見下ろしながら俺の希望を伝えると、瞳をうるうるさせて懇願するかのように俺を見つめていた
「みのがしてよぉ…えっちやだぁ…ね?…おねがい」
この後めちゃくちゃセッ◯スした。
で、ノクターンの短編が生まれたって訳
【彼氏持ちの後輩の処女を奪った話】
をノクターンノベルズにて短編で公開しました。
興味のある方は活動報告をご覧ください




