26. サレド飽キ足ラズシテ
2版XXVI、3版XXVII
SED NON SATIATA
ソネット形式 脚韻ABBA CDDC EEF GFG
奇妙な神、夜のように褐色の、
入り混じる香りは葉巻と麝香、
サバンナのファウスト、オビの仕業だろう、
黒檀の魔女、黒い真夜中の子、
Bizarre déité, brune comme les nuits,
Au parfum mélangé de musc et de havane,
Œuvre de quelque obi, le Faust de la savane,
Sorcière au flanc d’ébène, enfant des noirs minuits,
コンスタンスのワインよりも、アヘンよりも、夜よりも、私は好きだ、
愛が駆け巡る貴女の口からの万能薬が。
わが欲望が貴女のもとへ辿り着いたら、
貴女の目は、わが悩みを飲み込む貯水池だ。
Je préfère au constance, à l’opium, au nuits,
L’élixir de ta bouche où l’amour se pavane ;
Quand vers toi mes désirs partent en caravane,
Tes yeux sont la citerne où boivent mes ennuis.
心のため息が聞こえる、大きな黒い両眼を通して、
容赦ない小悪魔よ、浴びせる火焔は手加減してくれ
私は貴女を9度も浸す地獄の川ではない、
Par ces deux grands yeux noirs, soupiraux de ton âme,
Ô démon sans pitié ! verse-moi moins de flamme ;
Je ne suis pas le Styx pour t’embrasser neuf fois,
それは私にはできかねる、この奔放な地鼠めが、
せめてはその勇気をくじき、寄せ付けない、
貴女のベッドの地獄では、プロセルピネになるのだ!
Hélas ! et je ne puis, Mégère libertine,
Pour briser ton courage et te mettre aux abois,
Dans l’enfer de ton lit devenir Proserpine !
SED NON SATIATA: クラウディウス帝の妻メッサリナが男漁りを止められず、 "Lassata, sed non satiata"「疲れているが満たされていない」 と揚言したラテン語の故事による
obi : アフリカの魔法使い
constance: 南アフリカ産の極甘口ワイン Vin de Constance。セントヘレナ島に流されたナポレオンが好んで呑んだ
nuits: これも Nuits-Saint-Georges というワインがある。特に明確な個性はなく、本邦では知られていない。但し詩人は酒より「アンニュイ」に通じるその名の響きを好んだのかもしれない
Styx: 地獄の川。ギリシャ神話では、地獄を7度取り巻いて流れるという。ダンテ『神曲』地獄篇では、第5層にその名を「スティージェの泥沼」とするが、地獄手前のアケローンも第9層コキュートス(嘆きの川)も同一の川であって、此方では地獄を9度も廻る事になる。
Proserpine: プロセルピナ(ギリシャ神話のペルセポネー)は冥王プルートー(ギリシャ神話のハーデース)の妻。略奪婚され、地母神ケレース(ギリシャ神話のデーメーテール)の嘆きを呼んだため、1年の半分だけ地獄に居ることになった。つまり詩人は「半分だけなら付き合ってやる」と言っている。……鍛えろ。




