表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/19

6. 狂気の宴

すみません・・・また文章、長くなっちゃいました・・・

読み辛い部分あれば、お許しくださいませ・・・。

 「......はぁ、はっ......はあっ......はぁ、ふぅ......」


 日差しの強い、昼下がりのヴェール山中に響く複数の足音と......

息切れの喘ぎ声。


......全身、黒のフードローブに身を纏い、顔までおおった

男女3名に、これまた黒ずくめのフルプレートアーマーを装着する

騎士姿の男。


そう、黒騎士あつし達、一行である。


 ローグ・ギルド ―Nest of a scorpion― (蠍の巣)の連中が

主催している、奴隷市場「見本市フェア」の所在地を突き止め、

ギルドの殲滅と風シルフ娘・ベルフルールの妹ミアの救出の為、

山中を探索中である。


......が、聞こえてくる喘ぎ声のほとんどは、あつしが発している。


 「......ちょっ、ちょぃと、ココらで......

休憩でも入れねぇ、か? ......お、オジさんっ、

チョット、疲れちゃったなぁ......」


 汗だくで、ゼーゼーと肩で息をしながら弱音全開の

あつしに対して・・・・・・・


「......休憩は、先程も入れたばかりです。(ジロッ)」


......右隣のファルナが睨む。


 「あつし殿ともあろう御方が......この程度の山道で、

弱音を吐かれるとは・・・実に情けない。(溜息)このままでは、

とてもとてもシアンの砦に、夜までには到着致しませんよ......! 」


ダメな生徒を叱責する、厳しい女教師のような冷たい言葉と眼差し。

 

 「......そもそも、ギルド連中に見つからぬよう、

山中は歩いていこうと、御提案されたのは貴方様です。

このような事では、他のわたくし達、

全体の士気も下がってしまいます。ですから......ブツブツ」


お小言モード全開。


 「で、でもよぉ......! この鎧、スンゲェ、重てぇんだぜ?

コレ着りゃ、ワカるって!ホレ、着てみ? ホレ、ホレ」


 「と、殿方の、鎧など......! 着ないですよ......っ! って、

脱ぐフリ、しないで頂けますか......! 」


 「ヘーイ、金髪ゥ! ......さっきから全然、喋らねぇけど、

生きてっかぁ?元気ィ!? 」


「......」


返事も無く、うつむいたまま、夢遊病者の如くフラフラ歩き続ける金髪。


 コーホ、コーホ......と、ダースベ○ダーのような、呼吸音のみ。

明らかに、ヘバっている。


 「......よし! 休憩しよう! ......うん、これは、

休憩だな! ......な? ベルちゃんも、疲れただろ? 」


左隣のベルフルールに声をかけると、困った表情の苦笑いで返された。


「......一体、何なのですか、急に、そのベルちゃんとは......」


呆れた表情のファルナ。


 「......え? ......あ、いや、ベルフルールって、

いつも呼ぶのなげぇし、嬢ちゃん、ってぇのも、

アレだしさぁ......ダメだったか? 」


 「......わっ、わたくしに聞かれましてもっ......

困りますっ......! 」


 「あ......わたしなら、ベルでいいです。

あつし様の呼びやすい呼び方で結構です......」


ベルフルールは、にっこりと微笑む。


 「おぉ! そっか! ......じゃぁ、ベルちゃんに決定! うん!

それと、ファルナもなぁ......ファルちゃん、とか......

どうだ? なんか、良くねぇか? んん?」


 「......!! ファ、 ファル、ちゃん......!?って......

バっ、バッカじゃ......! ないんですか......!! 」


顔を真っ赤にして、シドロモドロの口調になるファルナ。


 「......んー。あれじゃ、嬉しいのか、怒ってんのか、

どーもハッキリわかんねぇなー。なぁ?ありゃぁな、

オレの世界くにじゃぁ、「ツンデレ」とかって、ゆーんだぜ。

......っと」


どっかり、地面に腰を下ろし、回復薬エクリシルを回し飲む。


 「......縛り方とか、キツクねぇか? ......痛かったら、言えよ」


 ベルフルールは両手を後ろに、手枷をはめている。そして、

しっかり縛った腰縄は、あつしの腰に繋がっている。


 ギルド連中と遭遇した際の、カムフラージュの為。

逃げた妖精を捕縛した黒騎士一行。そんな設定だ。


 「バザーの中に入るまでの辛抱だからよ。もぅ、ちょっと......

頑張れよ。ホレ、少し飲んどけ」


手が使えないベルフルールに、回復薬を飲ませてやる。


 「ミアの年が20歳ってぇと......人間なら、4~5歳位か?

そりゃぁ、確かに心配だけどよ......まぁ、何とかすっから、

気にすんな」


 「すみません......わたしの為に、何から何まで......

本当に、すみません......」


ひたすら、恐縮するベルフルール。


 「......いちいち、謝んな。......まだ、なーんにも

やってねぇ。......ただ、山道歩いてるだけだ。

......礼を言うのはオメェの妹、助けた後でイイ」


空の方を見上げながら、無愛想に話すあつし。


 その光景を見つめるファルナにも薄々、分かっている。こまめな休憩は、

拘束しながらの移動で、ベルフルールの肉体的な負担が大きいから。

それと、無駄口が多いのも、妹の件でのベルフルールと、

上官サンレゾが関わる可能性がある、

ファルナの心労を少しでも軽くさせようとしている事。


......そう。この御方は、そういうお人柄なのだ......


だからこそ、それ以上、何も言わない。


あつしが空を見つめているのは、訳がある。


 「今週の、びっくりどっきり獣神」、今回は、シアンの砦の

場所確認と偵察を兼ねて「SS獣神・グリフォンLV30・未凸」が3匹、

優雅に空を飛んでいるのを眺めているのだ。


 上半身は鷹、下半身はライオンという異質な外見のグリフォンも、

遥か上空からでは、とんびか何かか? 位にしか見えない。

警戒はされない筈だし、しかも、地上に降りてからの戦闘力もそこそこ強く、

雑魚退治には、まさにもってこいだ。


 嗚呼......! ボクの......ゴミSS獣神たちが......

あんなに自由に空を飛んでいるヨ! ......よかったなァ......


 初めてのお遊戯会で、一生懸命、演技を頑張る娘を見るパパのような瞳で

空を見つめるあつし。


グリフォン達は、ある一定の位置でグルグルと旋回を続けている。


......あの辺りが、おそらく、外道が集まる巣窟か......


少し気を引き締め直す。立ち上がり、皆を見渡しながら、


 「よっこいせ......っと。悪かったな。

......よし、少し元気も戻ったし、そろそろ行っか」


そしてまた、歩き出していく。


 ――― ヴェールの山頂付近、切り立った崖の上にそびえ立つ

小さな古城。「シアンの砦」


日も落ちて、暗闇が支配するこの地の古城に、真昼のような明りが灯る。


 通常は、ひっそりとした人の気配も感じないような場所には、

考えられない程の人の出入りが遠目からでも容易に確認できる。

衛兵の数も多く、動きも活発。まるで祭典カーニヴァルでも

催されているようだ。


 身なりも身分も様々だ。貴族や騎士の姿をしているもの、聖職者、

豪商、そして盗賊姿の者なども。


 「......このような場所で......こ、これだけの人が......! 」


 圧倒されるファルナ達。

人混みの中に紛れながら、城砦入口へと繋がる吊り橋を渡る。


 眼前に、大きな城門が迫ると、両側に仁王立ちする

ガタイの良い鎧姿の衛兵が2人、城内に入る者への入場チェックを一人一人に、行っている。


 衛兵が近づくにつれ、皆に高まる緊張感。ベルフルールの、

恐怖で身震いする姿に気付いたあつしは、小声で囁く。


 「......大丈夫だって......じゃぁ、ちょいと元気が出る、

オマジナイな......」


 Calm spirit ― 平穏なる精神 ― のアビリティを、

素早く全員に向け詠唱する。


......恐怖心、緊張感が瞬時に消し去り、皆に安心感が広がっていく。


「......失礼ですが、御招待状はお持ちでいらっしゃいますか? 」


右側の衛兵が、あつしに話しかける。


 「......いやぁ、生憎あいにく、招待状は持ち合わせては

おりません。実は私達、諸国を漫遊しておる流浪の身の者で御座いまして、

今宵の見本市フェアーについて是非、主催者であられるギルド長様に

お目通りを願いたいのですが.....」


「.....? 」衛兵が訝しげにあつし達を睨みつける。


 ......胡散臭い黒騎士姿の男に、背後には黒のフードコート姿の

性別も判別できぬ者が3名。一目、見ただけでも怪し過ぎる連中だ。

何故か、見本市の情報を掴んでいるのが非常に気になる。


左側の衛兵は、いつでも黒騎士達に向かって斬りかかれるよう、既に身構えている。


 「......何方どなた様から、此処のお話を? 

......いずれに致しましても、今宵の催事は御招待状無しの

御方へは......」


話す途中の衛兵に、ベルフルールが持ち出した書類を一枚、握らせる。


― 奴隷売買の納品書 ―


「......!! 貴様ッ、これを一体、何処から......!? 」


 驚く衛兵に追い討ちをかけるように、ベルフルールを覆うフードコートを

まくり上げ、手枷をはめて縄で縛り上げた姿を見せ付ける。


「! 」

昨晩、山中を皆で血眼になって探し回った妖精と、ギルド名の記載された書類。


コイツら......!


 「......昨晩、旅の途中でたまたま見つけて

捕まえたんですがね。......いやぁ、相当、

お探しになられているのではないかと思いましてねぇ。

......非常に大事なモノなんでしょ? 

......あっ、後ろの2人は、私の忠実なる従者でしてね。念の為に。」


 「......チッ、城門ここで、暫く待っていろ。

......だが、娘と書類は先に寄越せ。」


 謝礼金カネ目当てかと、舌打ちした後にベルフルールに手を伸ばす

衛兵から、さっと身をかわすと黒騎士は呆れたように衛兵に言い放つ。


 「おぃおぃオイ......見りゃぁ、分かるでしょうがよ。

あの、死にかけの酷い具合をここまで治すのも大変だったんですよねぇ。

幾らかかったと思ってるんです? ......その辺含めて、

御本人様と直接、具体的に「イロイロ」お話したい訳ですよ。

......それともアレかい?「オメェら2人如き」で、

ココで本気でこの俺様と殺りあおう、って思ってるのかい......!? 」


 物怖じしない余裕の態度に、時折見せる、猛獣のような殺気。

衛兵達は怖気づく。


 城内から、騒ぎを察した数名の盗賊風の男達も現れる。

こちらを見ながら、状況を耳打ちする衛兵達。黒騎士を品定めするような、

盗賊達の視線。


一人が奥に去り、少し待つと......一人の男を連れて来た。


 品の良さそうな、モデルのような長身、丸眼鏡で壮年の優男。

......とはいえ、こいつも盗賊姿だが。


状況を確認すると、穏やかな口調と柔らかい微笑みを浮かべて

黒騎士達に語りかける。


 「......この度は手下の者共が、大変、失礼致しました。

ワタクシ、ハキムと申しまして、ギルド長のアブドゥル様より

この見本市フェアーの責任者の命を受けております。

以後、宜しくお願い申し上げます。」


 ハキムは深々と、頭を下げた後に即、ジロジロとベルフルールを眺め回し、

感嘆の声を上げる。


 「これはこれは・・・・・・何と素晴らしい......! 

たった一晩で、ここまで綺麗に回復するとは......!!

一体、何をされたら、ここまで出来るのですかな......? 」


黒騎士に顔を近づけるハキム。


 ・・・・・・満面の笑顔だが、目は笑っていない。こーゆータイプは、

生理的に大嫌いだ。反射的に即、叩き斬ってしまいたい衝動に駆られるが、

ここはグっ、と我慢で堪えるあつし。


 「......如何いかがでしょうか? 我が従者の治癒能力は?

私が言うのもなんですが、なかなか、デキル奴でしてねぇ......」


金髪の方を指しながら、答える。


 「......うェ?  わ、私がですか? いや、だって、

ソレは黒騎士殿が......ぁぁァ゛!!!? 」


「......? 」金髪の、素っ頓狂な悲鳴に不思議そうな顔をするハキム。


要らぬ口を開きそうになる金髪の足をファルナが思い切り、

踏みつけているからだ。


 「ハァ......ハァ......し、失敬。

な、なんでもござらん......! そ、そうだとも......

デキルっ、ワタシハ、デキルヤツゥゥゥ......!(ブツブツ)」


 「.....まぁ、長々と、これ以上の立ち話もお疲れになるだけでしょう。

生憎あいにくながら、アブドゥル様は御多忙の為、

今宵は面会ができませぬが、ここはワタクシが、

ささやかではございますが、城内なかで御礼をさせて頂きたいと、

思っております。

ささ、どうぞ、城内なかへ......! 」


 城内を案内され、中へと入る黒騎士一行。

この段階で、ハキムもあつしも互いに

「......第一段階、クリア」と、考えている。


もっとも、それぞれの考えている事は全く違うのだが。


 ......後ろの二人はかなり高位デキるレベルの、

ソーサラーかビショップを従えているかもしれんな。

......黒騎士コイツの身なりも態度も相当なモンだ。

......注意せねば......

とはいえ、所詮はタダの報酬目当ての流浪者。

ほどほどの歓待と謝礼で充分で、後はどうとでもできるだろう、

と考えているハキム。


 あつしは、全く違う事を考えている。

目的は「ギルド長アブドゥルに会う事」のみ。

ただ、今は金を欲しがるやから程度と思われる方が都合が良い。

後は、案内されながら、城内の構造を確認していく。


 どこを向いても、人・人・人。溢れんばかりの、人の多さ。

さながら、縁日のようだ。


 「いやぁ......実に賑やかな催事でございますなぁ......! 」

わざとらしく、大げさな仕草と驚いた声を出してみる。


 ハキムは、得意そうに話す。

「ハハッ、そうでしょう、そうでしょう......! 

今宵の見本市バザーの為に、この大公国のみならず、

大陸全土より、実に多数の方が御参集ごさんしゅう頂いておりますから」


「......ほぉ、他国からも......? 」


 「ええ。司教国ヴィエンヌ帝国ザイード共和国ヴァッソ

王国アーノエル。......各国の要人の方も見えておりますし、

軍人、神職、貴族に商人......実に、様々です。」


 「......実に興味深いお話ですな。敵国の者までもが国を越え、

このような場所にまで......」


 ハキムは言う。

「ハハハッ......! 「需要と供給」や「飽くなき欲求 」には、

身分や国の違いは、無いのでしょうな......! 特に「希少な亜人」は、

地位も名誉も金も手に入れた御方には、最高の装飾品コレクションでございますから。......まぁ、我々の能力ちからを以ってすれば、

安全に、此処で存分にお楽しみ頂いた上で、「商品の納品」も、通常いつもは万全を期しております。......とはいえ、今回「コイツ」には、思いもよらず、手を焼かされましたがねェ......! 」


鋭い目付きで、ベルフルールを睨みつける。怯えるベルフルール。


......外道共にゃ、国も身分もカンケー、無ぇってか......



 バザーのりの真っ最中の、大広間を横切っていく。

立食パーティーの様な形式で、飲み食いを楽しみながら、

中央に並べられた奴隷たちに目をギラつかせた男たちが大きな声で、

値を張り合う声が響き渡っている。


 どの奴隷たちも、裸で首輪にリール・手枷姿。全てを諦めた、

死人のような表情。


 競り落とされたのだろうか。四つん這いでリールで引きずられるように

連れていかれる者がいる。


苦痛による悲鳴をかき消すかの如く、大きな笑い声が起きる。


 給士のような扱いで、裸であちこち動き回る奴隷たちもいる。

常にオドオドしており、些細な事で怒鳴られ、殴られている。


 隅のほうでは、男たちが奴隷の女を連れ出して、

奥の部屋へ消えていくのが見える。


 部屋越しから漏れ聞こえてくる、微かな喘ぎ声や女の咽び泣く声。

おそらく、売春まがいの事をさせられているのだろう。


 昨日は......あの場所に自分がいた。生き地獄のような光景を

直視できず、ベルフルールは俯き、ただ静かに涙を流す。


 下劣な欲望と鬼畜なオーラが充満する大広間。弱者の恐怖や苦痛、

絶望による泣き声や悲鳴、呻き声の他に、興奮する男達の罵声や怒声、

笑い声に喘ぐ声。それらは混ざり合い、聞くに堪えれぬ雑音となって、

大広間中に広がっている。


 正視に堪えず、理性を保つのが厳しい。気を許すと、

たちまち自分も気が狂ってしまいそうだ。


......まさに、畜生共の、狂気の宴。


「......糞っ! ......下衆共がッ......!! 」


吐き捨てる様に呟き、顔を背けるファルナ。激しい怒りに身を震わせる。


 ......あつしも同感だ。同感だが......今はまだ、我慢だ。

......我慢しろ、俺。必死に自分自身に、言い聞かせる。


 来賓室に案内され、ソファーに座ると、目の前には豪勢な酒や料理が

ずらり、と並ぶ。金貨を詰めていると思われる小さな麻袋も1つ、置いてある。


 「ささ、どうぞどうぞ......! ほんの、感謝の気持ち程度です。

どうぞ、御遠慮なさらずに......! 」


盛んに、飲み食いを勧めるギルド連中。


 「......あ、いや......食事は此処に到着する前に皆、

がっつり満腹になるまで済ましてしまいましてね。

残念ながら全く食欲が湧かないのですよ。......申し訳無い。

それよりも何卒、アブドゥル様への御拝謁を賜りたいのですがね。」


金貨には目もくれず、料理にも全く手を付けずに平然と言い放つ黒騎士。


「いや、先程お話した通り、アブドゥル様は御多忙で......」


「ならば......待ちましょう。お話は、それからと、いうコトで。」


......メンドクセェ奴だな。......謝礼が足りない、って事か?


 黒騎士の言葉に、苛つきを感じるハキム。いっそ、この場で一気に

殺してしまえば楽なのだが......

......だが、躊躇する。長年、裏家業で様々な修羅場をくぐり抜けてきた

実績と経験、そして勘が、この黒騎士オトコの得体の知れない何か

不気味さを、敏感に察知している。


......来賓室へやには俺を入れて8人。

......せめて、倍以上は必要か......?

 だが、できる事ならば、穏便に追い払いたい......


 ハキムはアブドゥルの様子を確認すると言うと、手下を残して

来賓室を去っていった。


 「......」気付かれぬように、こっそりとベルフルールに

手枷の鍵と腰縄を切る為のミニナイフを手に握らせる。


残された黒騎士達に、手下共が話しかける。


「黒騎士の旦那。......食欲が無ければ、性欲アチラのほうは、

如何ですか......? お望みでしたら、より極上の奴隷オンナ

即、連れて参りますぜ......! 」


 「上玉」は、競りで高値で売り捌くが、売れない者には、「処分」を逃れる為に強制される、過酷な労務が待つ。


「......ちなみに、ナニを、ドコまでさせてんだ? 」


 「......オヤ、意外と旦那もお好きですねェ! 

......そりゃあ、「お望みとあれば、何でも」ですよ......!

勿論、内容次第で、値は張りますがねぇ......」


手下が見せる下劣なプレイ内容と金額を記載したコース一覧を見る。


 「......オイ、このコースだけ金貨50枚って、

何なんだ? ......後は、どれも3枚とか5枚とかばっかじゃ、

ねぇか......」


 「それはねぇ、旦那......」

一段と、目をギラつかせた下衆な笑顔を近づけて、耳元で囁く。


 「この場で、好きにバラしちゃって、構わない、

って奴ですよ。......バ・ラ・し。」


「!!!!!!!!! 」


あまりの内容に、言葉が詰まる。全身から噴出する、激しい憤怒の念。

気付かず、得意そうに手下はペラペラ喋り続ける。


 「中にはどーしても、そーゆー行為ヤツじゃないと、興奮できない

御方もいらっしゃるんですよ。......外でヤっちまったら、

即、捕まって縛り首ですけど、此処じゃぁ、安全に、

好きなヤり方でバラせますからねぇ。......如何です? 」


一瞬で、理性が消し飛ぶ。同時に、激しく憎悪と殺意が一気に湧き上がる。


コノ畜生共! 殺ス!! ブッ殺ス!!! コロスコロスコロスコロス!!!!


 大剣を握る左手に力を入れた時......気付いた。黒騎士の手を

懸命に握る、震えるファルナの右手の存在に。黒騎士の暴走を抑える為、

ファルナ自身の感情も抑える為。......一生懸命、握り締めている。


 ......そうだった。この場でこの雑魚、数匹狩ったところで

ミアが救える訳じゃない。......本命は、あくまでアブドゥルだ。


 ......皆、必死に耐えている。......俺の短気せいで、

台無しにするトコだった。だから、もうチョットじゃ、ねぇか。

......我慢しろって、なぁ。


 気を持ち直す。無言だが、優しく手を握り返す事で「ダイジョウブだ」と、

思いを伝える。


 ― その頃、ギルド長アブドゥルは一番、奥の執務室の中に篭り、

金勘定に忙しかった。―


見た目は、浅黒の蛸入道。てかてかに光る禿げ頭が、汗だくで更に妖しい光を発している。


 今回の見本市は、大盛況だが、実に危なかった。逃げた妖精ムスメは、

司教国への祭事での生贄用の商品モノだった。モノがモノだけに、

違約金が莫大で、支払う羽目になれば大赤字になる可能性が非常に高かった。

多少の「納品の遅れ」による、お詫びと、連れ戻してきた黒騎士とかいう

連中への謝礼は必要になったが、可愛いものだ。

なんとか今回も、大成功で終われそうだ。



 持ち出した伝票なども、まぁ、取り戻せれば、一安心だ。

この安全なばしょで商売と生活を続ける為に、これまた凄まじい額の

賄賂を貢ぎ込んでいる。ダラムに逃げ込む分には、心配は無い。

上手に揉み消してくれるだろう。

トリアムなどに行かれると、流石にヤバいが、距離的に不可能だろうと、

それほど心配はしていなかった。あくまで一安心、と、いった所だ。


 今、最重要なのは、「最低、幾らの利益が確定するか」だ。

妖精モノさえ無事、戻れば後はどうでもイイ。だからハキムが面会の件を

伝えに来ても、会う気も無いし、とっとと、帰してしまいたいと考えている。

忠実な番頭ハキムだけの対応で十分だ。


「......追加で金貨100迄ならイイぞ。......後は、

グダグダ言うなら、一気に殺っちまえ。その辺の手下ヤツら

いっぺんにいきゃぁ、一発だろう? 」


机の伝票に目を通したまま、顔も上げずに話すアブドゥル。


 まず、一緒には来てはくれないだろうと思っていたが、

金貨の追加と応援の人員を増やせるのは有難い。念には念の為だ。

ハキムは軽く安堵の息を吐くと、

この辺りに居る手下共の全てを来賓室に集結させた。


......続々と、ハキムと共に来賓室に入室する、大勢の武装した手下共。


 「......俺が動いたら、後ろ下がってな。......ベルちゃん頼むな」


あつしはファルナに小声で耳打ち。小さく、頷くファルナ。


 「......金貨は妖精オンナで100、書類で50の

全部で150。......出せるのは、ココまでだ。

アブドゥル様は忙しくて、会えねえ。

......話は以上だ。命が惜しけりゃ、貰うモン貰って......

とっとと、消えろ。」


 追加の金貨の袋を投げつけるように机の上に置くと、

ぞんざいな態度で黒騎士に接するハキム。数の力で、

一気に話を終わらせる腹積もりだ。


 「......」

無言の黒騎士。脅える素振りは全く無い。


「何とか、言えやッ! ビビってんじゃ、ぁぁぁあ」


 怒鳴りかけた男の首は、瞬時に胴体から斬り離されて、

部屋の奥に吹き飛んでいった。血を噴き出しながら、

もんどり打って地面に叩きつけられる胴体。


 即座にファルナはベルフルールを抱きかかえ、

金髪と共に黒騎士の背後に回りこむ。


「ぅ、ぅおっ!!!? 」


 予想を遥かに超える、黒騎士の動きに硬直するハキム達。

黒騎士は無言のままで、返す刀を力強く振り切ると、

途端に数人、真っ二つのまま、吹き飛ばされていく。


 剣の速さ、斬れ味、威力がまるで違う。それに対して、紙切れかと思う程、

ペラペラのハキム達の防具に貧祖な武器。敵うはずが無い。

狭い室内で狼狽うろたえる雑魚共は、まさに黒騎士の格好の餌食だ。

試し斬り用の青竹の如く、何もできずにただ、切り捨てられていく。


 ......たった、数振り。たった数振りするだけで、もう、

戦闘にもならない状況と化した。


 半分程の手下共は、あっ、という間にただの肉の塊と変わり、

床も天井も壁も血塗れの部屋の中では、戦闘意欲など、あるワケがない。

何匹生き残ろうと、同じだ。役にも立たぬ、子犬の群れだ。隅に集まり、

ブルブル震えてキャンキャン鳴くだけ。


 出入り口さえ、おさえてしまえば後はもう、袋の鼠だ。黒騎士がようやく、

呆れたように口を開く。


 「......本気でりあうつもりならよぉ......

こんなせめ来賓室ばしょに、

ただ大勢並べてどーすんだ?......バカじゃねーか? 」


 ......正論だ。だが、あり得ないのだ。通常いつもなら、

既に終わっていたハズなのだ。脅えるのも、嬲り殺しにされるのも、

黒騎士アイツのハズだった。全くの想定外で、

何もかもが、あり得ないのだ。


「......ニンゲンじゃ、ねえ。」


手下の一人が放心状態で、呟く。


 ......そうだ、人間じゃない。猛獣より凶暴な別の次元の......

そう、「破壊神」や、「殺戮神」のような存在に

遭遇してしまった。......皆が絶望と同時に、

この部屋に来たこと自体を、後悔する。


 来賓室全体が、大きなフードプロセッサーに変貌する。

人間が大根や人参などのように簡単に、スライスされ、

千切りやみじん切りにされ、ミンチに変わる。

......まさに、阿鼻叫喚の地獄絵図。


 ......見渡しても、ハキムの周囲にはもう、誰も味方はいない。

あるのは一面の血の海と、「ついさっきまで、人であった残骸」だけ。

恐怖心から、人目もはばからず涙し、嘔吐する。


 「......えーっとぉ、おい、オメェ、そこの

オ・メ・エだよ! ......よい、しょ、っと。.......コレ持てや。」


 黒騎士は、失禁して床にへたり込むハキムに、周囲に転がる血塗れの生首を数個、投げつける。


「ヒイィッ......!! な、な゛にぃ゛、を......? 」


「コレ持って......アブドゥルの部屋まで、案内しろ。」


 最早、逆らう気など、これっぽっちも無い。四つほどの生首を胸に抱えて

力無く立ち上がり、そのままヨタヨタと、ゾンビのように

アブドゥルの部屋に向かい歩き出す。


 ついうつむくと、白目をむいた断末魔の形相の

手下の顔が目に入り、必死に前を向いて歩き続ける。

頭の中はただ一つ、「こんな惨めな死に方だけは、

したくねぇ......!! 」ただ、それだけだ。


 ・・・突然、執務室の扉が勢い良く蹴り開き、中に血塗れのハキムと

幾つもの生首が転がりこんできた事で、アブドゥルは驚いて飛び跳ねた。


 「......!!? うッ、うわァァ、ナニっ......!!? 

......ガッ、グガぁァァ!!! 」


 右足に激痛が走り、床に転がりのたうち回る。見ると、アブドゥルの右足首は姿が見えず、ビュービューと、鮮血を噴出している。

......眼前に、大剣を構えた黒騎士姿の男がアブドゥルを見下ろしていた。


「足からったのは、逃げられねぇようにする為なんだわ。

......オメェが、アブドゥルさんか。

ちょいと、聞きてぇ事があるんだけどなぁ......? 」


しゃがみ込み、アブドゥルの顔を覗き込みながら、穏やかな口調で話す黒騎士。


「ちょいと、妖精このコのよぉ、妹でミアってぇのを、

探してるんだけどよ......年ぁ、人間で4、5歳ってぇ、

とこかなぁ?......ドコ、やった?教えろや」


背後のベルフルールを、後ろ指で指差しながら尋ねる。


 「......ミ、ア......? 何、の、事だ......

知ら、ん゛ァ゛ぁぁぁ!!!! 」


 即時に、大剣は左足首を叩き斬る。あまりの痛さに、

アブドゥルは血だらけで芋虫のように這いずりまわる。


 「......忘れちゃったか? ......まぁ、

時間も切る部位トコも、タップリあるからよ。

......思い出すまで、気長に待つさ。」


話し終わるやいなや、左手も叩き斬り、振り返り、ハキムを見据える。


 「......部屋案内、御苦労! ......もうオマエ、用無し」

サラッとした口調の後、剣を構える黒騎士。


 圧倒的な絶望感が、ハキムを襲う。待つのは、虫けらのような死のみ。

......咄嗟に声が出る。叫ぶ。


 「し、知ってますッッ......!! その、小娘ガキの事ぁ、

私、が......知っておりマスぅぅッ!!! 」


 「ほぉ......? オメェが、知ってんの......? 

ホントかぁ......? 」


 動きを止め、わざとらしく訝しげな態度と口調で接する黒騎士にハキムは

僅かながらの「生」の可能性を感じ取り、そこにすがりつく。


 裏切者と罵り、たしなめるアブドゥルの声など、耳には入らない。

恐怖に支配された、虚ろで濁った瞳。震える唇から、言葉が続く。


 「ホ、ホントです......! 「上得意様用」の小娘ガキなら、

け、今朝方......「納品先」に「出荷」しましたんで......

間違い無い、信じてください......!!! 」 


ガタガタ身震いしながら、必死の形相。


 ファルナは悟る。これまでのいきさつは全て「アブドゥルではなく、

ハキムに吐かせる為の布石」だったのだと。来賓室での一戦から、

徹底して恐怖心を植え付けられたハキムのあの態度と表情を見ると

もう、中途半端な事は言わないだろう。

改めて、黒騎士あつしという男に感服する。


 「のっ、「納品先」は......

サ、サ、サンレゾ様ですぅ......!! 

ダラムの、サンレゾ様の邸宅にぃ、「出荷」致しましたァァァ!!

 しょ、証拠も、その、つ、机の上に、伝票がぁ......!!! 」


「......!!! 」


ハキムの絶叫に、ファルナは絶句する。......薄々は、覚悟をしていたが、

まさか、いや、やはり、しかも、自ら売買まで......! 

悔しくて、情けなくて、憎くて......声にならず、ただ涙のみが頬から流れ出る。


 「......別に、オメェのせいじゃねぇよ。......気にしすぎだ。」


黒騎士あつしがファルナの肩を優しく抱いて、慰める。


 「ただな......ミアは助けて、外道な上官クソは、

根こそぎ叩っ斬る。......オメェにゃ、悪いがな」


 「と、とんでも......ございません! ......わたくしの事など気になさらず、貴方様の信じる道を・・・・・・! 

わたくしは、ただ、そのご決断に、付いて参ります......!! 」


 真摯な表情で迫るファルナに、黒騎士あつしは無言で

軽く肩をポン、ポンと叩いて返す。


 「さて、と......時間がぇな、急ごうか。

......ハキムったっけか?アレぁ、証人だ。手枷付けて連れていく。

あたぁ、書類探して......他の部屋に捕まった奴隷がいねぇか、

だよな。......まぁ、チョット執務室ココで待っててくれ。」


 悲鳴を上げるアブドゥルの服を鷲掴みにして引きずりながら、

部屋を出ようとする黒騎士あつし


「お待ちください......! 是非、私も、御一緒」


 「・・・さっさと外道の宴会をお開きにしてさぁ......

奴隷あのコ達、自由にしてやりてぇんだよ。

......スグ戻るからさ、待っててくれや。な? 」


少し、困ったような口ぶりの後、皆を残して出て行った。


......「宴会のお開き」が何を意味するかは、

ファルナも理解している。......黒騎士カレはおそらく、

外道は誰一人として許さずに「根こそぎ」終わらせるハズだ。


 だが......皆に見せたくないのだろう。阿修羅の如き苛烈な怒りと力で、これ以上の殺戮を行う黒騎士カレ自身の姿を。

......考えると、胸が痛くなった。何も役に立てていない、

自分ファルナ自身の不甲斐なさに腹を立て、悲しくなった。


もっと、黒騎士カレの為に、少しでも役に立ちたいと、切実に願った。


......ベルフルールと金髪に、ファルナは努めて穏やかに、話しかける。


 「黒騎士あつし殿が戻られるまで......少し待ちましょう。

私達が執務室ここで出来る事を......済ませてしまいしょう。」


 ― 大広間の中央に、手足が無い、達磨ダルマで血塗れのアブドゥルが

突然、投げ込まれる ―


 狼狽する群集の中を突き進み、競売人オークショニア

いきなり斬り捨てた後、手をパンパン叩きながら、

軽い口調で黒騎士は言い放つ。


 「ハイハイ、皆さん、注目!チューモク! ......つってんだ、

聞けコラ!! (怒)......さて、お楽しみの真っ最中のトコロ、

ワリぃんだけどさぁ......いきなり、予定を変更しての

今晩のスペシャル・イベントぉ! 「今度はオメェら自体の命」を、

り合おうじゃ、ねぇか!なぁ!? 」


 戸惑い、ざわつく招待客の中から、恰幅のよい白い騎士姿の男に黒騎士は

悪戯っぽく尋ねる。


 「ハィ! まず、そこのオメェ。......まずは、オメエの命に

即金で金貨1万出そう! ......ハイ、スタート! 

......1万出たぞ! それ以上ないかぁ? さぁ! さぁ!! 」


突然の事で混乱し、狼狽うろたえる白騎士。


 「......な、何を......(焦)お前、そ、そんな大金、

払えるワケ......!!! 」


「......ハイ!時間終了ぉぉぉ―― ! 」


 白騎士は、悲鳴を上げる間も無く、実にあっさりと鎧ごと真っ二つに

叩き斬られた。


 血塗れの死体の上に、ドサドサと金貨1万枚分を、召還して無造作に

積み上げる。


 ......呆気に取られる招待客達。

まだ、状況が完全に把握しきれていない。


 「......とまぁ、こんな感じだ。......カンタンだろ? 

即金で、俺を超える金額を払えりゃぁ、命は助かるし、

金貨もオメェらのモンだ。頑張れよ......! 

さぁ、現在いま、1万だぞー。じゃぁ、次、行くか! 」


 ......テンポ良く、実にあっけなく屍の山が積みあがっていく。

先程までとは完全に、「狩る者と狩られる者」は立場が変わった。

死ぬ者はあっさりと肉片と変わり、大広間内に響き渡る悲鳴や絶叫は......

全て、まだ生きている招待者ものたちが発する恐怖と錯乱、絶望の声。


黒騎士の発する、憤怒と狂気のオーラがこの砦全体を支配する。


国も身分も関係無い。


 「わ、ワシを誰だと......! 大公国評議会の.....

ォガ ァ゛!!! 」


 という断末魔の声や、王国アーノエルの子爵に帝国ザイード

外交官などを名乗る声も聞こえてくるが、情け容赦無く、斬り捨てられていく。


「......2万! 2万出すぞォ!! 」


「おおっ......! 2万か 。じゃぁ......5万。」


 「今は手元に無いが......! 家に戻れば、10万以は......! 」


 「......ダメだ。この場で、即金。もぅ、いねぇかー? 

今、5万だぜー(棒)。」


 「......ま、待てッ!! この、手元の宝石なども合わせれば......

じゅ、10万にはなるハズだっ!!! 」


目を血走らせ、絶叫する富豪達。


 「なんか、もぉ、飽きちゃったなー。

......よし、ワカッタ! 30万!30万でどうだ!! んん!? 」


......群衆に見せつけられる、桁の違う金貨の山。誰もが、言葉を失う。


......もう、払えない。払えるワケがない。だが、

この黒騎士オトコは、まだ出せるはずだ、いや、まだ出すはずだ。

りなんか、成立しないし、命乞いなど通用しない。

殺す気だ。誰一人として、生かさず、根絶やしにする積もりだ。


 ......絶望からくる無言の間。そこから......

群衆はそれぞれの「選択」や「行動」を迫られる。


なにもせず、出来ず、ただ泣き叫び、斬り捨てられていく者。


手に武器を持ち、抵抗を試みる者たちもいる。


 「......イイネ! そーゆーのって、キライじゃ、ないぜ......! 」


 何人いようが、相手にならない。実に楽しそうに、

踊るようにまとめて薙ぎ倒していく。


 必死の形相で、出口へと避難する者たちもいる。城砦入口の唯一の脱出口、

吊り橋前に陣取るのは......今朝、配属したグリフォン3匹が、

逃げる者たちを待ち構える。茫然とする招待者。


敵うはずもなく、ただ、捕食されていくだけの者たち。


外は切り立った断崖。錯乱し、窓から崖下へ飛び降りていく者たちもいる。


 前にはグリフォン達。後ろには、黒騎士。侵入者を防ぐ鉄壁の防御を誇る砦は

今や、逃げ場の無い、「巨大な棺桶」へと変貌する。


 まるでオーケストラのコンサートの様に、阿鼻叫喚の調べが、

大きく、大きく砦の中に響き渡っていく。


 「死の夜想曲」は、最後の一人が死に絶えるまで、

徐々に、徐々に音を小さくさせていきながら、いつまでも奏で続けていく。























評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ