さあ、幸福の歌を歌おう。
「アーンジュー、支度出来たー?」
「ああ」
「わ、かっこいー」
今日はアンジュとアストルの結婚式だ。
アンジュを国に連れて帰り、結婚すると宣言したら誰も反対しなかった。
元々が魔王の国だ。多少外見が違う程度で差別なんかない。
色々手続きやらがあり…いや、むしろ城の皆が
「やるなら派手に!」
「折角の姫様の結婚式なのだから!」
「一緒にソレイユ様とフォンテ様の結婚式もしたらいんじゃない?」
などと、あれよあれよと言う間に話が大きくなり、半年も時間がかかってしまったのだ。
そんなこんなで待ちに待った結婚式なのだ。
「いいねー。白の礼服。髪が真っ赤だから合うよ」
「お前はウェンディングドレスか。似合うぞ」
「だろー!でも、無駄に豪華で動きにくいんだよね」
さっき三回転びそうになった。と笑うアストル。
「晴れ舞台ですからね。バルコニーから落ちないで下さいね」
「あたしそこまで馬鹿じゃないぞ!?」
「いや、お前ならやりかねんな」
「スィエルまで!」
「着つけ終わったかー?」
扉を開けて入ってきたのは、アストラの兄のソレイユとその妻フォンテーヌだった。
「おお、フォンテ綺麗!」
「そうかな?」
「月とスッポン…」
「こらぁ!スィエル今なんつったー!!」
ギャンギャンと騒ぐアストラを無視してティムが手を叩く。
「皆さん、広場へ行きますよ。式の時間です」
「「「「はーい」」」」
《はは…まるで、引率の先生みたいだな》
「ん?今誰か何か言いました?」
「何にも言ってないよ?」
あれ?と首をかしげているティム。
そんなティムも騒ぐ皆をスィエルと一緒に連れて行っている間に声の事は忘れてしまった。
誰も居なくなった部屋で、なぜか声が響いた。
《あーあー、あいつらは幸せになったみたいだなぁ。よかったよかった》
■ ■ ■
「健やかなる時も病める時も、愛し合うと誓いますか」
「「誓います」」
皆が集まれる広場での結婚式。
恋をした者たちが愛を誓う儀式。
不幸も呪いも乗り越えて、
二人は結ばれたんだ。
《祝ってあげようかな、あたしも》
広場を見下ろせる時計塔のてっぺんに彼女はちょこんと腰かけて。
嬉しそうに笑うのだ。
《あんた達は幸せになるべくして、生まれたんだよ。
前は、直前で終わってしまったけど……
今度は、長生きしてくれよ。二人とも。
リーシャ、結樹
…二人ともとも幸せにな。》
そして彼女は歌い始めた。
彼らの幸福を祈って。
黎い髪が舞いあがる。
灰色の瞳が広場を見据えた。
彼女は幸せを願った。
■ ■ ■
「え……?」
「どうかしたか?アストル」
「ん、いや何か聞こえた気がしただけ」
「ほら、ブーケ投げないと」
皆に急かされ、アストルが持っていたブーケを構える。
「分かってるよ。
そぉらぁ!!」
青いバラのブーケが高く空を舞った。
End.
Happy marriage!!
んで、HappyEnd!
いやはや、NLも楽しいな…
この子達また書きたいです。
あと、ソレイユさんとフォンテーヌさんのお話しも書きたいなー。
それから、ティムとスィエルも相手作って幸せにしたいです。