第47話:敵基地制圧、大統領府への王手
サジール軍事政権による大爆撃と砲撃の嵐を防ぎ切り、嵐のような攻防戦から丸一日。前線基地と古代石膏要塞シェルターで不眠不休の疲労を癒やし、機体整備と充電を完了させたカレンとシオン、そして連合軍の士気は最高潮に達していた。
「全軍、これより反撃作戦を開始する! 目標は敵のメイン前線基地! 弾薬と燃料を使い果たして疲弊した敵に立ち直る隙を与えるな! 一気に畳みかけ、サジール首都への補給路を完全遮断するぞ!」
ラーマン大佐の力強い号令が作戦幕舎に響き渡ると、連合軍が一斉に大反撃へ打って出た。
「行くわよ、シオン! 私たちの手で、この不条理な戦争を終わらせ、!」
完治した右肩で小銃を強く構えたカレンが、先陣を切って荒野へ駆け出す。
『了解デス、カレン。敵メイン基地へノ進撃、直チニ開始シマス!』
視界が開けると、地平線の彼方にサジール国軍のメイン前線基地が巨大な要塞の影を現した。しかし、前日までの凄まじい大爆撃で弾薬庫と燃料庫を全滅させられた敵基地は、かつての威圧感を失い、重苦しい沈黙に包まれていた。
「敵防衛陣地より機関砲の発射を確認! 迎撃体制!」
焦り狂った敵の警備兵たちが、手動操作の固定機関砲でやけくその猛射を浴びせてくる。赤熱した弾幕が荒野を切り裂き、連合軍の先頭へ襲いかかった。
『前方敵防衛陣地ヲ検知。重電導シールドデ全砲火ヲ無効化シマス!』
シオンが前に躍り出ると、左腕に懸架された厚さ200ミリの重電導チタンシールドを地表へ突き立てた。高圧のプラズマ電磁バリアが青青と展開され、敵の弾丸をことごとく火花とともに跳ね返していく。
「そこね……!」
シオンのシールドの陰から身を乗り出したカレンが、寸分違わぬ精密射撃を叩き込む。小銃から放たれた徹甲弾が機関砲のバイザーと動力ケーブルを正確に撃ち抜き、敵の防御火力を一瞬で完全沈黙させたのだった。
「今だ! 全軍、突入せよ!」
ラーマン大佐の叫びとともに、人民軍が雪崩のように敵基地へなだれ込む。弾薬を失い、逃げ場を失った軍事政権の兵士たちは次々と投降し、敵メイン前線基地はわずか一時間で完全奪還・制圧されたのだった。
『敵メイン前線基地ノ完全制圧ヲ確認。損害ゼロ、全ユニット正常駆動中デス!』
シオンの朗報に、人民軍の兵士たちから地鳴りのような歓声が巻き起こった。この基地の制圧により、サジール首都への途上に立ちはだかる障壁はすべて消滅し、前線は一気に軍事政権の心臓部「サジール首都大統領府」の目前まで押し上げられたのだった。
破竹の勢いで進撃を続けた連合軍は、ついにサジール国の首都中心部へ到達した。
かつて美しく活気に満ちていた首都の街並みは、独裁政権による圧政と軍事圧迫で静まり返っていた。しかし、連合軍の到着と軍事政権の敗退を知った市民たちが、次々と窓を開け、街頭へ姿を現し始めていた。
「連合軍だ……! 本当に僕たちを助けに来てくれたんだ!」
民衆の歓声と期待の眼差しを背に受けながら、カレンとシオン、そして人民軍は大統領府を取り囲む広大な外郭広場へと集結した。全周360度を完全に包囲されたサジール首都大統領府は、もはや孤立無援の要塞と化していた。
「大統領府内の軍事政権首領、ならびに残存幹部に告ぐ! お前たちの重火器と補給路はすべて絶たれた! 直ちに武器を捨てて投降し、サジールの人々に罪を償え!」
ラーマンが拡声器を手に、大統領府の重厚な正面扉へ向かって力強く告げた。
シオンが威厳に満ちた足取りで正面扉の真前に立ち、遠距離重砲を構える。
その時——大統領府の最上階バルコニーの防弾ガラス越しに、狂乱した軍事政権首領の姿が現れた。
「黙れ! 黙れ黙れ黙れえええっ! 泥棒猫どもの分せいで、この私が築き上げた完璧な王国を滅ぼされてたまるかああっ!」
首領の顔は怒りと恐怖で醜く歪み、目は血走り、髪は乱れ切っていた。
「反乱分子どもめ……民衆どもめ! 私に従わぬ豚どもなど、この首都ごと全員焼き尽くしてやる! 降伏など絶対にするものかああっ!」
首領は大統領府の司令コンソールへ駆け寄ると、非常用赤色カバーを力任せに叩き割り、内部に隠されていた不気味な黒い起動キーを差し込んだ。
「目覚めよ、我が最高傑作……! 全リミッターを解除し、虫ケラどもを根絶やしにせよ!!」
「な……何が起きるの!?」
カレンが息をのんだ瞬間、大統領府前庭の広大な石畳が、不気味な地鳴りとともに割れ開き始めた。
地底から噴き出す凄まじい黒煙と熱気。地表が激しく陥没し、古代要塞の地下深くに封印されていた巨大な地下格納庫のリフトがゆっくりと上昇してくる。
『警告! 地下格納庫ヨリ未知ノ超高熱反応。超大型ユニットガ起動シマス!』
シオンの警告音が激しく鳴り響く。黒煙を切り裂いて出現したのは、全高30メートルを超える、山のように巨大な四脚歩行型の要塞ロボットだった。
「くっ……なんて大きさなの……! これが軍事政権の隠し兵器……!?」
カレンの額に緊張の汗が伝う。その巨大ロボットの剛性装甲表面には、安全ガードレールが完全に消去された証である不気味な赤熱エネルギーラインが血管のように脈打ち、四本の太い脚部が地表を踏みしめるたびに、首都全体が地震のように激しく揺れた。
さらに、巨大ロボットの背部には二門の巨砲——都市一つを容易に焦土に変える超高出力プラズマ粒子砲が不気味な赤光を明滅させていた。
「ハーッハッハッハ! 見よ、この圧倒的破滅の力を! この要塞ロボットに、お前たちごときが勝てるわけがない! 全員灰となれええっ!」
首領の狂乱した高笑いが、大統領府のスピーカーから響き渡る。
超大型四脚要塞ロボットの四眼センサーがギラリと赤く発光し、二門のプラズマ粒子砲がカレンとシオン、そして背後の民衆と人民軍へ向けてゆっくりと持ち上げられた。
圧倒的な巨大感と破滅の気配が包囲網全体を支配する。しかし、絶体絶命の危機を前にしても、カレンの瞳に宿る不屈の炎が消えることはなかった。
「……逃げないわ。この街の人々を、アミーラたちの未来を……私たちが絶対に守り抜く!」
カレンが小銃を強く握り直し、シオンの装甲へ背中を預けた。
シオンの胸の奥深く——剛性チタンに護られたユウキの魂も、激しく熱く燃え上がっていた。
(どんな巨大な悪が立ち塞がろうと関係ない……! カレン、君と僕の不屈の絆で、あの巨大要塞を叩き潰そう!)
『了解デス、カレン。私タチノ不屈ノ絆デ、アノ巨大要塞ヲ撃破シマショウ!』
重電導シールドを前面に押し立て、シオンの青いセンサーアイが果敢な覚悟の光を放つ。
万全の身心と不屈の絆を掲げるカレンとシオン。サジール国の運命を懸けた最終決戦の火蓋が、いま切られようとしていた。




