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・・・み・・見ちゃった。

再開しました。

一応、このエピソードで完結します。

相変わらず伏線だけ張って回収しないのは恐縮なのですけど、他にも色々ありまして。

 もしかしたら、まだ続くかもしれませんけど、とりあえずはこのエピソードで完結します。

ではでは、楽しんでいただけると幸いです。

     作者より

「まずは全員の無事を祝してェーェエ! カンパーイ!!」

「カンパーイ!!!」

 ガチャンとグラスが重なる音がして、皆がジョッキを傾けた。

今日はシスの街で最も大きな酒場で、3つのパーティーの合同慰労会である。言わば打ち上げなのです。

 スパカブ村の事件から3週間。

紅の翼(エールルージュ)>の3人の回復を待って始めた慰労会だが、大酒呑みのシュミットが一番浮かれまくっていた。

「リーダー、7回目っス、乾杯。」

「そう言うなって、目出てえじゃねえか、なあ。シャール!」

「はい・・っ! ス。」

 シャールもリズもヘベレケである。

「ほー言えばさー、リ~~~サァ。」

「飲み過ぎだって、リズ。」

「あのさあのさ。あの魔・・法って、何なのさ。凄いでしょでしょ。」

「ちょっとねぇ~。修業したからねえ~~。ムフフフゥ・・」

 真っ赤な顔で笑うサブリナも酔っている・・・。

「あーれさ、ハウンロウロフにゃ、ベトベトのスライムみたいになるって何なの、ねえねえ、教えなさい。パーティのにゃかで、秘密はナシンコだじょぉ。」

「秘密だモーン。」

「ずーるうーいよーー。」

「S級試験も受けられるかもな。」

 アレンがぽつりと言う。少しばかりの嫉妬も交じっている。

「まーだまーだ無理だってー。」

「S級だとさあ・・なんか通り名とかつくじゃん。」

「そーだよー。、<何とかの魔女>とか呼ばれるようになったりしてー。」

「えー。無いってばー。」

 まんざらでもない様子。

「何がいいかにゃあーやっぱ、<ベトベトの魔女>とか言うううのは!」

「えーーー! ヤダーー、絶対拒否! 」

「じゃーあ、<スライムの魔女>。」

「おっ、いいんじゃねー、それ!」

「ヤダっ! もっとカッコいいのがいい! ぜったーい、キョヒぃ!!」

 アレンがグラスを持って静かに立ち上がった。

彼も酔ってはいるが、まだ理性は保っていられる程度だ。

 アレンは喧騒を離れてゆっくりと酒場の片隅に向かう。そこには一人で食事をしている男の小さなテーブルがあった。


「ここ、いいかな?」

 ゆっくりと酒を飲みながら食事をしている男は、笑みを浮かべながら顔を上げた。

「ああ。いいとも。」

 アレンは開いた席に腰を下ろすと、ウエイトレスのアンナを呼んだ。

「こちらに、もう一杯同じものを持ってきてくれ。それと僕にも。」

「あいよっ! 大至急だねッ!。」

 アンナは笑いながらカウンターへと向かっていった。

「ありがとう。遠慮なくごちそうになるよ。」

 男はにこやかに言った。

「君、<藍の影(アイスキア)>のカイルだろう。」

「・・よく分かったな。素顔を見るのは初めてだろうに。」

 男は目を丸くしてアレンを見た。

「まあね。」

 そう言うとアレンは飲みかけのグラスを置き、立ち上がると深々とお辞儀をした。

「おいおい、よせよ。何のつもりだよ。」

「君たちには感謝している。あの時、僕たちを助けてくれたのは君たちだろう? 意識は失いかけてたが、何が起こっていたかは分かっていたつもりだ。本当にありがとう。」

 カイルは「ふーっ」とため息をついた。

「分かった。とにかく座れよ。」

「ああ。」

 タイミングよくアンナがグラスを二つ持ってきた。

「とにかく、無事に生還できたことに乾杯だ。」

 カイルは悪ぶれる様子もなく、にこやかにアレンと杯を交わす。

「今も俺たちを警護してくれているんだろ。」

 突然の問いにも、カイルは慌てる様子はない。

「いいや、私的な晩飯だよ。あのミッションはもう終わっている。君がどう思ってるかは分からないが、俺たちは仕事をこなしただけだ。もっとも、俺たちは失敗したがね。」

「僕たちのせいだろう?」

「NO。君たちではなく、相手が一枚上手だった。だが、これ以上は聞くなよ。恥ずかしいからな。」

 アレンは無言で頷いた。



「もしかしたら、あの時・・・俺が奴らに関わってると知れたら、あいつらは強引にでも消しにかかるかもしれない。しばらくは様子を見てやってくれ。」

 あの後、サスケを前にしてメギドがサスケに頼んだ事はカイルも承知している。今も3人が表で待機してアレン達の帰りを警護する手はずになっているが、カイルはおくびにも出さない。



「僕がもっと強かったら・・・」

 アレンがふと愚痴を呟いた。

「そうか? 十分強いさ、君は。」

「いや、あの時、僕に振り返る勇気があったなら、こんな事にはならなかった。自分の力を過信していたんだ。」

「・・アレン。」

 カイルは笑顔でアレンをまっすぐに見ている。

「・・・」

「俺は思うんだがな。駄目な奴なら、あの時もう死んでいた。お前らは命を拾ったんだ。言い換えればお前たちはチャンスをつかんだんだ。これからいくらでも強くなれると・・俺は思うがね。それに・・・・」

 カイルの口が淀んだ。

「おっと、言いすぎるとこだったな。」

「国家機密か。」

「そうだ。」

 二人とも低く笑った。

「あーーーいたいた。帰るよーアレン。」

 おぼつかない足取りでリズとサブリナが肩を寄せ合って近づいてきた。

「もう終わりなのか?」

「シュミットがつぶれちゃってさー、みんな帰るって。」

「シャールは?」

 リズが指さす先には、椅子で眠りこけてるシュミットとシャールがいた。

 店はまだ騒がしいようだったし、シャールたちもいずれ家族が迎えに来るだろう。

アレンはリズたちと店の前で別れると、一人で家へと向かった。



 アレンの家は繁華街から離れた小高い丘の上の閑静な住宅街にある。

こじんまりとした平屋の一軒家だが、庭も広く、鍛錬するにも十分な広さがある。

 同じ場所にはシスの街のギルド長の家などもある高級住宅街。A級冒険者ともなればその収入も大きいので、当然と言えば当然でもある。今は一人暮らしで、通いの家政婦をお願いしているので生活に支障もない。

 そもそも、シスの街に領主はいない。

城塞都市の体をなしてはいるが、街の行政は5人のギルド長の合議制で成り立ち、筆頭は2年間の持ち回りで運営される。今年は冒険者ギルドの持ち回りでブルーノが筆頭になっている。だから何か月も街を開けておくわけにもいかないのだが、そこは有能なザルツのお陰で何とかなっているのが実情だ。


 星の灯りに照らされてはいるものの、深夜ともなれば人っ子一人通らない道を、アレンはトボトボと歩いていた。丘の中腹は開けた場所になっていて、ちょっとした公園のようになっている。

 アレンは魔石街灯に照らされた場所で立ち止まる。

街の灯りと夜空の星々の灯りが一つになって。、まるで宇宙空間にいるような感覚を覚える。

 酔った体に夜風が気持ちいい。

「・・・僕たちは、まだ生きてる・・・・か。」

 歩きながらアレンはふと口から出た言葉に泣きそうになった。思えば、今までガムシャラに働いてきた。いつの間にかA級パーティーになって、今は力不足ではあるがギルド専属パーティーにまで上り詰めた自分がいる。

 運がいい。

 ただそれだけなのかもしれない。

そしてそれに甘え、満足している自分がどこかにいた。

 (やはり・・教えを乞うべきか・・・)

 ふと、そんな考えが頭をよぎった瞬間。

 背中に冷水を浴びせられたように冷たい何かが背筋に走った。

 驚いたアレンは思わず後ろを振り向く。

街灯の無い道の闇の中から、ずるり・・・ずるり・・・と何かが引きずられるような音だけがする。

 アレンは思わず腰に手を当てるが、そこに剣は無い。

 アレンは丸腰だった。



「なあア~り~なあ・・。あんたさあ、なんでそんなに強くなったのぉ? オッサンのお陰ぇ・・・?」

 言葉は酔っているが、リズは正気だな。・・とサブリナは直感した。

「うん。そうだよ。」

 サブリナがポツンと言う。

 リズが下から覗き込んだサブリナの目は自信に満ちていた。

「今度さ。あたしも連れてってくんないかな?」

「うん。一緒に強くなろ。」

 えへへ・・とリズが照れ笑いをした。

 ふとサブリナが立ち止まる。

「どうしたの、リサ?」

「どうしたんだろ? ギルドの灯りが点いてる。」

 リスもリサに促されて見ると、確かに閉まっているはずの冒険者ギルドの窓から明かりが漏れていた。

 二人は窓に近寄ると、そっと窓から中を伺った。

 中にいたのはザルツとセリーヌの二人だった。

冒険者ギルドの建物は堅牢で少々の話し声が外に漏れる事は無いのだが、どうやら何か激しく口論している様子である。しかもセリーヌは泣いているらしい。

 やがて、ザルツは激しく抵抗するセリーヌを抱きしめて、口づけを交わした・・・。


「・・・・・・・み・みみ・見た?」

「・・・み・・見ちゃった。」

 二人の目は、満月のように見開かれていた。














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